第53話 お誕生日会04。

ジェードが倒れたロゼを見て「ちっ、一個下のくせに」と悪態をつく中、サンクタが「勝者!アルマ、ジェードチーム」と言って訓練場に上がってきた。


歓声の中ジェードは手をあげて「でも俺達の負けだよサンクタさん」と言った。

サンクタは嬉しそうにしないジェードに「ほう?何故かな?」と聞く。


「マアルの事も散々狙ったのに当たったのはあのアースボールが足を掠っただけだ。全部ロゼが守ってやがった。こっちはアルマも俺もボロボロだ」

「そうだな。だが勝利に貪欲になる姿は間違いではない。君も勝者だ。そうだな?我が盟友サルバンよ!」


「そうだ!よく戦いよく勝った!」

「ロゼ!良くやった!良くマアルを守ったぞ!見事だった!」


マアルはこの時に初めて自分が傷を受けてない事に気付いて慌ててロゼに駆け寄って「ロゼくん!私を庇ったから負け…」と言ったところで仰向けのロゼは「違うよ。俺が弱かった。やっぱジェードは強い兄貴だよ。アルマも強かったよね」と言って笑う。


「それにそんなにボロボロで私を守って…くださったのですね?」

「それはそうだよ。この後ドレス着るだろ?アザとか術で消すけど嫌だからさ…」


「ありがとうございます」

「いいよ。指輪のお礼だからね……とりあえず疲れたー」


未だに訓練場に仰向けのロゼに向かってジェードが「ほら、手を貸してやるから立てって」と声をかける。

ロゼはジェードの手を取りながら「うん。ジェードは強いね」と言う。


「お前こそ、よくやるのな」

「俺たちパパの子供だからね」


「ロゼくん」

「アルマも凄く強くなったよね。やっぱり前もってジェードに会わせなくて良かったよ会わせてたらもっと早くにボロ負けだよ」


「ありがとう。勝てて良かった」

「じゃあジェードとハイタッチしなよ」


「うん。ジェードいいかな?」

「おう!」


4人で並ぶと拍手と歓声が沸き上がる。

その中で訓練場から降りていくとメロが優しい笑顔で4人を待っていた。


「メロ、負けちゃった。疲れたー」

「私のせいです」


「俺達だって勝てたって言えないよな」

「本当だよね。勝てたって言えないよ」


「もう、4人とも大きくなったね。お腹空いたでしょ?パーティーまでご飯ないからこれ」

そう言って出てきたのはマドレーヌだった。


「やった!」

ジェードが手に取ってアルマと食べてマアルが取ろうとした時にマドレーヌが3つだった事に気づいたロゼが「足りない」と言った所で「はい。マアルちゃん」と渡すとマアルが小さなマドレーヌが何個も入った袋を取って「ロゼくん、好きだって教えて貰ったから昨日メロお姉ちゃんと作ったんだ」と渡す。


「え?作ったの?くれるの?」

「うん。生地だけ作って焼くのはメロお姉ちゃんにお願いしたから大丈夫だと思うんだけど…。訓練のお礼」


「お礼?お礼ばっかり貰ってるからどうすれば良いんだろう?」

「それはこれから頑張れば良いんだよ。パーティーでしょ?はい、マアルちゃんはメロのマドレーヌだよ」


ロゼはマアルのマドレーヌを食べて「美味しいよ!メロのマドレーヌにも似てるし、この大きさが食べ易くていいや」と喜ぶとマアルは負けて悔しかった筈なのに笑顔になる。

それは遠くから見てたナイワやサンクタ、ミチト達にも微笑ましくうつる。


横で見ているジェードは「なあアルマ、マアルってもしかして?」と聞くとアルマは「うん」と言って頷く。


「でもアイツ、気付いてないと思うぜ?話し方とか接し方がフユィやベリルに対する感じに似てるし」

「うん」


「…いいのか?」

「僕もメロお姉ちゃんに聞いたら良いんだってさ」


「へえ、まあいいや。じゃあ俺とアルマも上手く行けば兄弟だな。よろしくな」

「うん!よろしく!」


「あとはその盾量産してさ、少しでも丸みが取れたら直そうぜ、多分弾く位置とか覚えれば怪我も減るよ」

「うん。ありがとうそうするよ」



ここまでは微笑ましかった。

だがここにリルバ・ルクッドを含めた数人の貴族がメロの元を訪れて「美しいお嬢さん。良かったら我々にもそのスイーツをご馳走してくれないかな?」「それとお名前を頂けますか?私はリルバ・ルクッドです」と言い出した。


「ルクッド様には叔父がお世話になっております。私は闘神の娘、メロ・スティエットと申します」

メロは丁寧に挨拶をすると「おお、叔父とはサルバン殿ですね。わがルクッドからも鶏卵を取り寄せてくださっていますね」と返す。


「はい。サルバンだけでマ・イード全てのスイーツは賄えませんのでどうしても皆様のお力をお借りしております」

「それでは私とは深い仲になれそうですね。私にもそのスイーツをいただけますかな?」


「すみません、これはこの子達の為に用意したモノですし、スイーツは叔父達が用意してありますし、サンクタ様達もご用意をしてくださっています」

「わかってないのかな?それともわざとかなメロ?」


リルバ・ルクッドがメロの名を呼んだ瞬間、訓練場を恐ろしいまでの殺気が包み込み、サンクタは1人青ざめる。


ミチト、アクィ、スカロ、ヒノ、パテラ。

そして子供達は言うまでもなく殺気を放ち、ローサやイブ…イブは最早アイリスの顔で「ふふふふふ。覚えたわ」「ええ、覚えました」と言って怒っている。


リナとライブは「ミチトだけは止めよう」「うん。絶対やり過ぎちゃってパーティーどころじゃないよ」と言ってミチトの左右で待機している。


そしてモバテは「くだらんなリミール派」と苦言を呈し、アプラクサスも「まったくです。これが戦争から逃げたいからとシックの傘下に入った連中の程度です」と続ける。

シックは「おのれ…愚かな!」と青筋を立ててマブツ・ルクッドを睨みつけている。


ロゼは横のジェードを見て「ジェード、これだね」と言うとジェードも「ああ、だからタシア達じゃなくて俺たちが呼ばれたんだな」と返す。


「マアル、マドレーヌ後で食べるから持っててよ、食べても良いけどまた作ってくれる?」

「そんなに待たせねえだろ?」


メロはこの状況の正しい落とし所をただ一人一生懸命思案していた。

「あの…」

「子供達だけで誕生日会をしてもらって我々は未来のリミール派として親睦を深めようじゃないか?」


そう言ってメロの腕を掴もうとした瞬間「おいオッサン」「後一ミリでも腕を前に出したら許さないよ」とジェードとロゼが言う。


「メロは俺たちの家族だ」

「俺たちが守る。それにメロの彼氏は俺たちが認めた奴じゃなきゃダメだ」


「そうだよね!パパ!ママ達!タシア!シア!コード!ラミィ!トゥモ!フユィ!ベリル!」


この言葉でタシア達は前に出てきて「メロは守るよ」とタシアが言ってリナのように優しく微笑む。


リルバ・ルクッドはバカにするような目でタシア達を見て「子供は引っ込んでいてくれないかな?これは貴族の付き合い方、大人の話なんだ」と言うがジェードは「バカかお前?さっきその子供の剣術大会に乗り込もうとしてたろ?」と言ってトゥモが「な、みっともないよな」と合わせる。


「貴族?バカを言いなさい!貴方のような男が貴い者?貴い者と言うのはこの場でも羽目を外さずにキチッとなさる方のことを言います!」

「おお、ラミィいいぞ!言ってやれ!」


「いえ、これ以上言ってもきっと愚かなので通じませんわ」

「本当、ダメそうだよね。真っ赤だもん」


怒りのままにリルバ・ルクッドを煽るタシア達にメロが「ダメだよ皆、この人のお家からニワトリの卵を買ってるから揉め事になるとスカロお兄さんやヒノお姉さんが困るんだよぉ〜」と言った時、「知った事じゃない!メロ間違ってる!」とシアが言った。

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