第52話 お誕生日会03。
剣術大会の申し込みはロゼを含めて9名。
これはサンクタが前に出て唯一20歳のリルバ・ルクッドを諦めさせた。
リルバは愚かにも「別に10くらい離れてたって問題ないのに」「カッコいい所見せてお嬢様に惚れさせたかったな」と言うがどうにも自分が子供の中で浮いている事に気付いていない。
サンクタは頭を抱えながら「子供達に花道を譲ってくれたまえ」と言って席に戻すと「最後にはカラーガとしてアルマとマアルの模擬戦をご覧いただきたい。アルマはパートナーに闘神の御子息ジェード・スティエット殿、マアルも同じく闘神の御子息ロゼ・スティエット殿を迎え2対2の訓練を行う」と言った。
ジェードはさっそくアルマの素振りを見て作戦を決めていく。
作戦を決めながらもロゼに「ロゼ、さっさと優勝しろよー」と声をかける。
「うん。待っててねアルマ、ジェード。マアルもよろしくね」
「はい!ご武運を!」
ロゼ以外の参加者は11〜15歳までの子供達で、先程ミチトが会ったハーケイの息子のソッデノやジャックスとジャンの孫のフィップとマイトブも参加をしていた。
ご武運をと言われてもロゼにはなんの問題もない。
初戦でソッデノを秒殺する。
その後もロゼには何が苦痛だったかと言えば待ち時間。
待っている間にジェードを見ると熱心にアルマに動きを仕込む。
「アルマは盾も使うのか?ならもっと位置取りを気にしないとな、ロゼの攻撃を左に向かわせる位置取りだ。後は盾ももっとこう…パパ!アルマの盾作ってよ」
「えぇ?俺ロゼの試合…」
「まだだから、パパならすぐだよね?こうさ…平べったいピザの皿みたいなのじゃなくてボウルの底みたいのがいいんだよ!」
「あー…受け流したいのか…」
「それ!持たせたら試合まで訓練するんだよ!ベリル!試合前にアルマをヒールしてよ!」
「いいよー」
こんな会話が聞こえては気が気ではない。
マアルは大人しく座っていてこっちに来る気配もない。
暇すぎてたまらない。
ロゼは待つふりをしながらマアルに伝心術で「暇すぎる。しかもジェードがアルマとガッツリ訓練してるから不安」と伝える。
マアルは驚いた顔をしてロゼを見て笑うと、どうにか考えを伝えようとしているので伝心術で「心を読むから思ってよ」と言う。
読心術をつかうと「大丈夫です!私も訓練しました!ロゼくんの指輪は初めの指輪よりすごく上手くなりました!」と返ってくる。
「ありがとう。後2回勝ってくるね」
「はい!ご武運を!」
ミチト達はそれを勝手に読んでいて微笑ましい気持ちで見守る。
カラーガでの出会いは確実にロゼの為になっていた。
ロゼは決勝でフィップ・ジャックスと対戦をした。
フィップは槍使いで野生動物から家畜達を守れるようにと鍛えられていて14歳にしては強いと思える。
だがあくまで一般の貴族の子供としてはだった。
「その槍、うちのパパに直してもらうから壊させてください」
「何?」
フィップも自分の半分の歳の子供に言われて面白くない。
「やれるならやるが良い!」
そう言って振り下ろしてきた槍をロゼは「ありがとうございます。ファイヤーインパクト!」と言って斬り飛ばすと空中にいる間に「二刀剣術…八連斬!」と言いながら細切れにする。
想定外の攻撃に腰を抜かすフィップに「ありがとうございました。槍との戦いは普段しないから懐に入る大変さを知りました」と礼を言いながら手を伸ばして立たせるともう一度キチンと礼を言う。
武力、魔術、礼儀。
その全てをキチンと見せてロゼは優勝をした。
「闘神の息子としての実力は見事だった!」
「ありがとうございます」
サンクタはキチンと当主の顔で言い、ロゼもキチンと膝をついて礼を返す。
「それではアルマとマアルの試合を始める!」
この言葉にロゼは立ち上がると「マアル、頼める?」と言い、マアルは「はい!」と言いながら弓を構えて前に出る。
「アルマ!ジェード!勝負だ!」
ロゼの言葉にジェードが「はっ!勝つのは兄貴の俺とアルマだよ!」とノリノリで出てきて「アルマ!盾の実力を見せてやろうぜ!」と言い、アルマも「うん。ありがとうジェード」と返す。
訓練場に入ってきたジェードは「最近術使いになって調子乗ってるよなロゼ?」と挑発し、ロゼも「ジェードこそ皆に頼られて随分と楽しそうだよね」と返す。
「あ?言ったな」
「言うよ。俺はパパの子供、ロゼ・スティエットだからね!」
「それなら俺だってパパの息子のジェード・スティエットだ!アルマ!勝つぞ!」
「うん!父上!」
サンクタは「わかった!始め!」と声をかけて訓練場から降りる。
「一丁見てやるよロゼ!二刀剣術…!」
「マアル!アルマの牽制をお願い!まずはジェードを止める!二刀剣術!!」
お互いに剣を構えて前に出ると同時に「八連斬!!」と言い、同じタイミングで放った八連斬が火花を散らす。
「ちっ、一歩も引かねえ。アルマ!タイミング見てロゼに斬り込め!」
「うん!」
「ジェードはまた強くなった…負けるか!マアル!ジェードを狙って!」
「はい!」
もう一度八連斬を放った所で「マアル!今日はマアルが主役だ!俺が合わせる!」とロゼが言うと「よぉーし!アルマはロゼだ!俺がマアルの相手をする!」とジェードも言う。
観客席ではタシアが「まったく…わざと悪役やってるよジェード?」と言い、シアが「本当、これの為にセルースおじさんの所に通ってたよね」と言って笑う。
知らなかったミチトは「え!?何それ?」と聞くとメロが「俺がロゼを引き立たせてやるんだーって燃えてたんだから」と教える。
「ジェード…。仕方ないなぁ」
「ミチトが褒めてあげればいいのよ」
「あの子、寝る前に「おら…違うな、ウォラ!…でもない」って練習してたのよ」
「面白いよね」
「可愛いですね」
マアルはライブとの訓練が活きていて位置取りも撃つまでの速さも段違いになっていた。
想定よりできる事にジェードが「へぇ、やるな!ならこうだ!ウォーターボール!」と言いながら前に出る。
「ファイヤーボール!マアル!術は俺が相殺するからジェードを近づかせちゃダメだ!」
「はい!」
ロゼはアルマの剣をかわしながらウォーターボールを相殺しながらマアルに指示を出す。
「ちっ、よくやる!」
「よくやるのはジェードだ!なんでたった数時間でアルマがこんなにやれるんだ!」
「よく見てるからだろ!コイツに必要なのは守りでもやりたい事は守りじゃない!攻めなんだよ!アルマ!もっと効率よく盾でロゼの剣を流せ!そのまま盾で殴ってやれ!」
「うん!了解!」
「くそっ…!マアル!アルマを狙って!ジェードは俺が抑え込む!」
もはや子供同士の模擬戦なんかではない戦いがあった。
観客席からはアプラクサスの「ジェード君!アルマ君!」と応援の声が上がればエーライやモバテは「ロゼ君!マアル嬢!」と応援が飛び交う。
「行けぇアルマ!これは真剣勝負!負けたら死ぬと思えぇっ!マアル!敵を殺すつもりでやれぇぇっ!!」
「アルマ!カラーガなら前に出なさい!」
「マアル!あなたなら出来ます!やりなさい!」
これにはミチトが「うわぁ、皆ノリノリ」と呆れ、横でトゥモが「くっそ!俺なら術で沈められるのに!」と不満げに言う。
「トゥモ、だから呼べないんだよ。とは言え流れは変わるよね」
「パパ?」
ジェードが攻め込み切れない事に苛立って「ちっ、後でヒールすれば許される!アースボール!」と言ってマアルを狙い始め、ロゼは器用に「やらせるか!アイスボール!」と言って術攻撃からマアルを守る。
ここでアルマが「ロゼくん!僕に二刀剣術を撃ってこないかい?」と言うとロゼは一瞬苛立った後で「…言ったなアルマ」と言い八連斬を放つ。
アルマは剣と盾で六まで防いで2発貰いながらもロゼに一撃を入れる。
そのアルマに援護で放ったマアルの矢は入る。
そしてジェードのアースボールはマアルを捉えるが直撃したのは一つもなく掠っただけで残りは全てロゼが受け止めて「マアル!ジェードを撃て!」と言った。
「ロゼくん!?はい!!」
風の術で加速した矢だったが「当たるかよ!」と言ってジェードは回避しようとした。
だがロゼは「隠し球!超重術!」と言ってジェードを押さえつけた所に矢を当てる事に成功した。
大歓声。
一瞬の攻防に皆が歓声を送る中、ロゼは「マアル、上手かったよ。でも…ごめんね」と言うと倒れ込み勝敗は決した。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます