第48話 ライブの訓練。

別荘は1ヶ月で出来上がった。

今度の別荘は3階建てで横の敷地も使っていて更に大きくなったし、それに合わせてロキから「ミチト君、地盤の強化と家の骨組みに白明石を加工してください」と言われていて白明石の柱を基礎に家を建てたので3階建てででも何の問題もない。

ミチトに言わせれば「地下深くまで地盤を強化したから王都が大地震で城が消えてもウチだけは無事です!」でロキは「…それを言うと王都中の地盤強化を頼まれますよ?」と返しながら内緒にする話になった。


そんな新しい別荘は一階は6割が玩具置き場で4割が子供達が遊ぶ場所になっていた。

2階はリビングダイニング兼、トイレと浴室、後はベッドが15個、そして3階は倉庫と全員分の部屋になっている。


親の部屋と子供部屋の間には倉庫を置いて申し訳程度に距離を取っている。

これでイブの機嫌は良くなった。


カラーガの方は地獄の様相で、ある程度は覚悟をしておいたがミチト達を巻き込んだ事でアプラクサスにモバテにエーライとシック以外の重鎮に国王までくる事になるし、何処から聞き出したのかエーライはバレていないがモバテの来訪を聞きつけていい格好をしたりカラーガとのつながりを求める貴族達がアルマとマアルのダンスパートナーに立候補を名乗り出てきていて辟易としていた。



「マアルはまだ10だ!リルバ・ルクッド!?確か20だぞ!ふざけるな!マブツ・ルクッドめ!黙って鶏でも育てていろ!」

「もう、いちいち読んでめくじらをお立てにならないでください。全部にノルアたっての希望でサルバン繋がりでラミィ嬢とフユィ嬢、マアルは訓練仲間のロゼ君がパートナーと書いて送り返しますからご安心ください」


「だがなナイワ?がぁっ!!マジストラ・マプソン!?放蕩者で有名ではないか!マルブルグ・マプソンめ!野菜を育てる前に子供を育てろ!」

カラーガの執務室からは一日中サンクタの怒号が響き渡る。



「何あれ?」

「父上がダンスパートナーの申し込みに届いた書簡を見て怒って居るんです」


「ウチのパパみたい。パパもラミィとフユィはアクィママに似ててキチンと出来るから安心だけどシアは心配になるしアルマがシアとイチャイチャしたら訓練に誘って痛めつけるって言ってたよ」


ロゼの言葉にアルマは素振りの途中なのに青い顔で身体をビクつかせてロゼを見る。

ロゼはアルマと目が合うと「あはは、大丈夫だよ。シアが助けてくれるって」と笑う。


青い顔のアルマが「や…やられるのは決定なのかな?」と聞くと「うん。決定」と言うロゼは二つ目の指輪を取り出すと「訓練の邪魔してごめん。中々の出来だから見せに来たよ」とマアルに言うとマアルは使用人に命令して部屋から豪華な宝石箱を持って来させる。


豪華な箱の中にはロゼの作った指輪しか入っていない。

「これが満杯になるまで作ってくださいね」

「え!?いいの?こんな大きいの高かったんじゃないの?」


「母上が闘神様を追い詰めたご褒美で買ってくれました!」

「うわ、そんなにかな?」


「はい!さあ見せてください!」

ロゼが二つ目を見せると単体ではまだ不恰好に見えるが一つ目と並べるとそれは大分整った形になっていた。


「あ…、中々だけどまだまだだと思ったら並べると綺麗に見える」

「ふふ。やっぱり残しておいた方がいいのですよ?」


「本当だ。ありがとうマアル。じゃあこれも持っててよ」

「はい!」


マアルとの話が終わるとアルマが「闘神様に一撃入れかけた件だけど僕はダメかな?」と聞く。


「訓練次第だよ。それにあれはパパが水人間の訓練中で隙だらけだったのと、マアルを狙わないから出来た戦法だっただけ」

「僕もメロお姉ちゃんやロゼくんみたいに二刀剣術が使えれば違うのかな?」


「それもダメだと思う。二刀剣術って俺達はママが遊びながら仕込んでくれたから使うけどあんまり強くないんだよ」

「強くない?」


「うん。サルバン騎士団は皆防ぐし、ナハト叔父さんもここ最近立て続けに二刀剣術を防ぐ訓練してるからあまり意味ないよ。そもそも二刀剣術はそんなに強くない。相手に入るなら一瞬で何回も斬るから強いけど防がれると一気に弱くなるし、もしも盾に抵抗ないなら剣と盾の方が強いよ?」

「盾…」

盾と聞いてマアルが「騎士団だとサビーは盾も使いますね」と言う。


「サンクタさんは?」

「父上は持った所を見た事がありませんわ」

ロゼは何故盾を持たないか気になる。


「ねえ、サンクタさんって忙しい?」

「まあ…怒鳴ってるだけ…ですわね」

「うん。騎士団は自主訓練にしてたよね」


「じゃあ聞いてみようよ」

「では呼んできますわ」


マアルが執務室に行ってロゼが来ているから来てほしいと行って呼ぶとサンクタだけではなくナイワも来る。


「来てくれていたのかい?」

「はい。お邪魔していますサンクタ様、ナイワ様。指輪の出来を見てもらいました」


「あら、そうでしたのね?」

「はい。それでアルマと話した時に盾の話が出て、サンクタ様達は使わないと聞いたので理由が知りたいんです」


「成程、カラーガの教えは基本が長剣だからだな。イシホは自分でミドルソードにしていたが元来のノルアも亡くなったナイライも基本はロングソードを使っていた」

「じゃあ、アルマがロングソードも覚えれば盾を使っても良いですか?」


「構わないが…大変ではないか?」

「それはアルマ次第だから…できる人の話って聞きたいよな…。あ、ちょうど帰ってきてたから連れてきちゃおうかな」

ロゼは左目を金色にしながら言う。


「ロゼ君?」

「行きはアクィママ達に頼めば良いか、サンクタ様、1人連れてきて良いですか?」


「構わぬが…」

「じゃあちょっとトウテに帰って1人連れてきますね」


ロゼはまるでミチトのように話を飛ばしながらトウテに帰るとちょうどライブが暇をしていたので事情を話すと「いいよ。転移術が内緒なんだよね?連れてってあげる」と言ってくれる。


当人はようやくのオフにのんびりと温泉に入っていた所をロゼに「お願い!装備を早く着て!」と言われて慌てて身支度を整えるとカラーガに連れて行かれる。


「ロゼ君…とライブさんと…そちらの方は?」

「チーム、ニュースターのリーダーさんです。サルバン騎士団ならシールド使いのトミーさんだったんだけど、俺の話のせいでサルバンに寄れないからニュースターのリーダーさんです。リーダーさんは盾と槍の使い手です」


「おお、はじめまして。私はカラーガ領主のサンクタ・カラーガ」

「え!?領主様!?わ…私はカラーガの街…とはいえ外れですがカラーガに父母達が住んでいます。タニック・ゴモークと申します!」

直立不動で挨拶をするリーダー。


「え?リーダーってカラーガ出身なの?」

「しかもタニックって名前なんだ」


「あらあら、カラーガの方でしたのね。はじめまして。サンクタの妻ナイワです」

「はじめまして!」


「ねえ、リーダーさん。アルマに盾の使い方とか教えてくれない?」

「ぬぅ…お…俺…私でいいのか」


「うん。カラーガの戦い方に盾って無いんだって」

「成程」


「あ、でも別に習うんじゃなくて話を聞くだけなんだ。アルマさあ、リーダーさんも折角だから家族に会いたいかも知れないから散歩しながら聞いておいでよ」

「ぬっ!?そんな事が…」


「サンクタ様、ダメかな?」

「…いや、アルマは街にも走り込みに出ているから構わないが…」

「はい。よろしくお願いしますね。でも万一がありますからロゼくんとライブさんはお茶をしながら待っててくださいね」


ナイワの考えを察したライブは「あ、じゃあロゼは水人間だしてマアルに訓練付き合って貰いなよ」と提案をする。


「いいけどライブママは?」

「私が出たら訓練にならないよ」


「そっか、じゃあ見ててね。マアル頼める?」

「はい!」


ニュースターのリーダーは護衛騎士のようにアルマの後ろを歩こうとしてアルマから「すみません。それでは話せません」と言われてしまい横並びで盾の有用性とロゼが言っていた二刀剣術の話なんかを聞いていく。


マアルとロゼの方も訓練は悪くない。

前以上に狙えるようになったマアルと自在に水人間を操れるロゼは再び一進一退で最後にはロゼの勝利で終わる。


「ライブ様、なにかコメントを頂けますか?」

「んー…。まあ良いけど、でもマアルって訓練始めたばかりだよね?」


「それでは今後の育成に向けてのコメントを貰えれば助かります」

「ふむ。まあ良いかな。マアル、今のまま戦場に出ると死ぬよ」


突然の死ぬ話にマアルが固まるとライブが「だから訓練。まずは位置取りね。真正面とか背後に立ちたがるのはわかるんだよね。正面の方が面積でかいんだもん。でもそれは相手にも狙われるよね」と説明をするとマアルは「はい」と認める。


「それで二個目、撃つのと回避なら回避を優先しなさい。それで最後は動く、引く、狙う、放つをもっと早くやれるようになる事」

「はい」


「ふぅ…、とは言えイメージつかないよね。少しだけお母様が訓練してあげようか?」

「え?」


突然のライブのお母様発言にロゼが「ライブママ?お母様?」と聞くとライブは「にひひ、まあいいじゃん」と言って笑う。


「マアル?やる?」

「はい!」


「サンクタさん、ここで少しだけ暴れて平気かな?」

「はい。よろしくお願いします」


「さてマアル、見ててね」

ライブはそう言うと氷の板を生み出す。


「マアルは今から3分の間にこの氷に矢を当てられれば勝ち。ダメなら負け。どう?簡単かな?」

「はい。訓練で的には当ててるし風の魔術を教えてもらいました」


「ふふん。なので、ライブお母様は20秒間はマアルにウォーターボールで攻撃をするね。まあ直撃しても死なないし怪我もしないけどびしょ濡れになる奴ね。それで10秒はマアルへのチャンスタイムで何もしない。それでまた20秒はウォーターボールって感じ。準備ができたら言ってね」


ライブはかつてイシホを訓練した時同様に教え方のうまさを発揮する。

本来なら余裕で直撃できるのにあえて大ぶりに頭上や足元のギリギリを狙って攻撃してマアルに回避をさせながら狙った場所に誘導をする。


「ほらほら、当たっちゃうよ?ロゼの前でびしょ濡れは恥ずかしいよ」

マアルはなんとか20秒間逃げ続けてライブの攻撃が止んで弓を構えたが的から離れていて更に正面で見た時と違っていて横から見た板は細かった。


「撃たないのかな?撃てないのかな?」

ライブの挑発にムキになったがマアルが矢を放つ前に「時間切れ」という言葉とともにウォーターボールが再び飛んできた。


マアルは必死にかわしたがそれでも次の10秒では何もできずに逃げ続けるとライブの誘導に引っかかり水溜りに足を取られて転んでしまう。

そこにライブが容赦なくウォーターボールを打ち込むとロゼが「ライブママ意地悪すぎ」と言ってファイヤーボールで相殺をした。

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