第44話 イブとの野獣の日14。
サンクタは1番にマアルに気付くと嬉しそうな顔をした後で厳しい顔になり「よく戻った。カラーガとして粗相はなかったな?」と聞く。
メロはミチトのように感情をストレートに表現する父も好きだが、サンクタのように不器用な父にも憧れる部分はある。
「ふふ。サンクタ様、勿論です。ナイワ様はお時間ありますか?」
こうして呼ばれたナイワはロゼと並ぶドレス姿のマアルを見て「まぁ!綺麗!」と喜んでサンクタに「あなた。あなたの好きなデザインの指輪に映えますわ」と言うとサンクタは耳まで赤くして「そうだな。よく似合う。変な虫が寄り付かないか心配だ」と言う。
ここでロゼが「あ、それ。今度マアルの誕生日会のパートナーやらせてください」と立候補のように言うとナイワが目を輝かせて「まあ!お願いできます!?」と言った。
「うん。色々と助けて貰ってるし、うちの家族の中では俺が1番いいらしいし、マアルも俺ならまあいいっていってくれたよ」
話が勝手に進み、まるでロゼが立候補した風に見えてしまった時、マアルが申し訳なさそうに「ロゼくん、私が…」と言うがメロはマアルを制止して笑顔で首を横に振る。
そのメロを見てサンクタは意味を理解して「ふむ。ロゼくんになら任せられるな。よろしく頼む。キチンと練習はして来てほしい」と言うがメロが「みます?」と言って見せたのはキチンとしたロゼのエスコートでナイワとサンクタは感謝しか出なかった。
メロはサンクタを喜ばせてロゼの印象を良くする事に余念がない。
「しかも、サルバンでの訓練でロゼとマアルちゃんのコンビがパパを追い詰めて勝ちましたよ」
「何!?闘神を追い詰めた!?本当かマアル!?」
「はい。私の矢をロゼくんが術で隠して加速してくれて、ロゼくんが闘神様の気をひいてくれて不意を狙えました」
この事実に「…す…凄いぞ」と言って本気で震えて喜ぶサンクタに「まあ将来的にはアルマとやれるようにもならないと。アルマとマアルは誰かとやらないとリズムが取りにくい感じだよ」とロゼが説明する。
「そうだね。サンクタ様、マアルちゃんはサポートが得意なタイプで前に出るタイプではありませんからね」
「あ…そうだな。了解だメロ嬢、ロゼくん」
ここで止めないとサンクタはマアルに過度の期待をしてしまう。
それは悪い事の方が多いのでメロとロゼで止めるとナイワはホッとした顔をした。
「もう帰られますか?」
「はい。あ…まだ転移術のチャージタイム中で20分くらいは…」
「俺、2個目あるから帰られるよ?」
「え?ロゼは転移術2個持ちなの?」
「うん。やりたいなって思ったら出来たよ」
こうなると真式のロゼは摸式のメロには手に負えない。
だが、この時間が必要なメロは「…でも私の転移術で帰るから待っててね」と言う。
「良いけど、いつまでもドレスだとマアル疲れない?」
「ふふ。ありがとうございますロゼくん。マアルもカラーガの淑女ですから平気ですよ」
これで少しの間話したのはマアルの誕生日会で、スティエットに恣意的なリミール派をどう相手にするかとなる。
「シックおじさんにやめろって言って貰ってもダメなの?」
「うん。それでは無くならないよ。ウチは平気でもサンクタ様達は後から悪く言われちゃうよ」
「うえぇ…。ジェードは「面倒くさい」って暴れるよ」
「ふふ。だからロゼなんだよ。ジェードなんて第一騎士団のコルゴ・メイラン様を殺しかけておいてメロの足をジロジロ見たから殺そうとしたとか言うんだよ?」
「それは良くない?」
「ダメだよぉ」
メロの顔を見たロゼは「そっか…。じゃあマアルは変なのとパーティーはしたくない…」と確認をするとマアルは「はい!ロゼくんが良いです!」と言う。
続けて「でもスティエットだと親子共々煩いのが出てくる」と言うとナイワが「ええ、申し訳ないです」と答える。
「で、メロは俺なら術と剣で相手を倒せてマアルと訓練仲間だから何とかなると」
「うん。そうだよ」
「じゃあお誕生日会の前に剣術大会とかやれば?なんかアプラクサスおじさんがやりたがってるってアクィママが話してたよ」
「それは東南のガットゥーでだよ」
この意見に乗っかったのはサンクタで「…いや。それも良いな。参加者は7歳から15歳くらいの男児に限定して勝ち抜けば実力を見せつけるチャンスになる」と言い始めた。
メロはまさかの事に「サンクタ様?」と言ってしまう。
「ロゼくん。ラミィ嬢かフユィ嬢は来られないかな?」
「へ?」
「アルマくんのパートナーですか?」
「ああ…剣術大会は術無しで最後にはアルマとパートナー、マアルとロゼくんの親善試合を披露してもらいたい」
ラミィとフユィをイメージしたロゼは「えぇ…、フユィには勝っても後が怖いし、ラミィには勝てるかなぁ…」と困った声を出す。
ここでメロが「サンクタ様、回答は保留でも良いですか?」と聞いた。
「構わぬが…問題かな?」
「2人の意見を聞いてみます。あの子達は心根はスティエットでサルバンだからパートナーは喜んで受けますが親善試合はパパ達と話し合いたいです」
これは万一怪我をした時の事があるし、それをミチトの居ない所で話してしまうというのもマズい。
ロゼはその事も考えて「ねぇ、パートナーと親善試合の相手って変えられないかな?」と言った。
これにはマアルが「ロゼくん?」と聞く。
「俺は出来るならジェードと戦いたい。ジェードは帰ってきてから凄く吹っ切れてて強いからきっとアルマのいいパートナーしてくれると思うよ?」
「それは…構わないが…。いいのかなメロ嬢?」
「まあ出来ればそれがシンプルですけど…。ロゼ?ガチンコで喧嘩しちゃダメなんだよ?」
「うん。大丈夫。マアルと連携するし、それを見せつけてジェードにはアルマと連携してもらうよ」
「ではメロ嬢、手配を頼めますかな?」
「はい」
話がまとまった所でロゼはマアルに「あ、当日やっぱりジェードが良くなったら俺がアルマと組むから言って良いからね!」と言って笑いかける。
メロはその顔がミチトにそっくりだったので「…わぁ…パパそっくり」と言って呆れた。
「私はロゼくんにお願いします!」
「あ…そう?じゃあ頑張るよ」
転移術のチャージタイムが終わっていたのでメロの転移術で王都に帰ってロゼは2日連続船を漕ぎながら意地になって双六を4人でやっていた。
その姿はまだまだ子供でミチトもイブもメロも微笑ましい気持ちで見守っていた。
そしてミチトはメロに「パパ、いつもありがとう。大好き!ずっとメロのパパで居てね」と言ってもらえて過去最高に目尻が下がって泣きかけていた。
「俺だってそうだよ。メロもずっと俺達の姉ちゃんで居てよね」
「ありがとうロゼ」
「ジェードは間違ってないよ。メロの事をやらしい目で見る奴は俺達がボコボコにするからね!」
「えぇ!?」
「あらあら、メロちゃんはミチトさんにも守られてジェードとロゼにも守られちゃうの?」
「違うよママ。トゥモだってタシアだって、ママだってお母さんだって皆メロが大好きだから守るだろ?」
「そうだね。皆でメロちゃんを守ろうね」
「ええぇぇぇ?イブお姉ちゃん!?」
必死になって慌てるメロにミチトは「え?メロ?その反応はまさか言い寄ってる男とか居るの?」と言って恐ろしい圧を放つ。
その殺気にびっくりしたメロが「パパ?」と聞き返すとミチトは絶対に普段は自分の意思では言わない事を言った。
「ここから確認をしてロクデモナイ奴なら絶命術を仕掛けなきゃ。大丈夫、絶命術なら証拠も残らない不審死だよ!」
「居ない!居ないよ!大丈夫だよパパ!!メロはまだまだパパが1番だよ!お姉ちゃん達にまで迷惑かけたら悪いなって思ったんだよ!」
「なんだ、良かったよ。メロは大事な家族なんだから気にしないでいいんだからね?」
「もう。パパってば、いつもありがとう」
メロはわざとミチトにくっ付く形で双六をしてミチトの機嫌をとっていた。
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