第42話 イブとの野獣の日12。
宴の終わり際、この日の始まりを聞いてロゼが予定を無茶苦茶詰め込んでいて明日の最終日に向けて「明日はパパのパスタと…あ!ジェードがやったウシローノさんとの訓練もまだだし、全部の婆ちゃんに会うのもやりたいからティナ婆ちゃんとこにも行かなきゃいけないのに時間が足りない!」と言い出した。
「いやいや、ロゼ?昨日だってかなり無理したよね?天空島から海底都市の落下訓練して山に顔出して、ソリードさんから拳の振り方教わって第三騎士団相手に訓練して、それでアプラクサスさんのお家でご飯ご馳走になって、今日だってメロとパンケーキ食べてモンアードで指輪の事をして、カラーガ行ってアルマくんとマアルさんと訓練して、サルバン来て…」
「やだよ!最後は皆がやった事を全部やるんだよ!それで皆より何個もやって終わらせるの!」
「マジか…」
「ロゼは1番スティエットに似たな」
「ああ、やり切る器用貧乏を目指しているな」
ここで優しい微笑みのメロが「ふふ。ロゼ、少しだけメロが助けてあげるよ」と言う。
「メロ?」
「ティナお婆ちゃんは聞いたらまだ起きてるからマアルちゃんについて来てもらってそのお洋服を見せてあげて、ケーキのお土産を持って行けば良いんだよ」
「メロ?ティナさんに聞いてたの?」
「うん。だってロゼの気持ちもわかるもん」
そう言ったメロは「夜遅くにごめんね。マアルちゃんはまだ起きてられるかな?」と聞くとマアルは「はい!大丈夫です!」と答える。
「なら、メロがローサお婆ちゃんとロウアンお爺ちゃんを連れてからティナお婆ちゃんのお家に行くから転移術のチャージタイムまでお話ししててよ。それで今度は3人でカラーガまで転移してもう1人の転移術で別荘に帰るの。パパはイブママとウシローノお兄ちゃんとイシホお姉ちゃんを王都に送って貰おうよ」
「うん。そうする。メロもその綺麗な服で来るよね?」
「うん。綺麗なドレスを褒めて貰おうね」
こうして帰りの話がまとまった所でミチトは収納術から「じゃあ今日のお礼とか、治したけど暴れたせいで怪我した皆さんにこれで何か買ってくださいとかです」と言って魔物の素材を50とパークンの食費の金塊を渡す。
メロは最後に「ナハト、ちゃんと今日は甘ったれてなくて良かったよ」と声をかけるとナハトは少し青い顔で「うん。ありがとう。ヒノ奥様に教えてもらってるんだ」と言う。
メロがヒノを見るとヒノは優しく微笑んで「…メロ、任せなさい」と言うとメロは嬉しそうにニコニコして「うん!ヒノお姉さんがやってくれるならメロは安心だよぉ〜。もうバリバリやってあげてね!」と言う。
「え…メロ…」
「ぬぅ…、メロめ…恐ろしいな」
イブに背中を押されたミチトもため息混じりに「ナハト、今日は距離感も良かった。戦闘の訓練も悪くなかった。あの剣が使いやすければ使い続けると良い」とナハトに声をかける。
「お兄さん、ありがとうございます」
「あ、ロゼの要望で会うことになったから一応お前の甘ったれた部分はミトレさんと母さんに言った。ビシバシ鍛え直してもらえってさ」
ナハトは一瞬で真っ青になり「え!?」と言うがミチトは全無視をする。
「と、言うわけでヒノさん。すみませんが更に一段上のコースでお願いします」
「あら、任せなさい。私もまだまだ甘いと思っていたのよね」
「ぬぅ…スティエット…恐るべし」
「あ、そうだ。それでナハトの親がご迷惑をおかけしますとかすみませんとか代わりにサルバン家に謝っておいてくれって言ってたから、迷惑料で魔物の素材増やしますね」
「スティエット!?十分すぎるんだぞ!?」
「いやー、取っても最近だとエーライさんも城に置くなって嫌がるし、ヨシさんも今年の分は終わりだ来年までいらないって言うんですよ。持ってるのも嫌だからサルバン家にあげますって」
「バカを言うな!俺達も王都に行くと素材屋が睨んでくる!ヨシ・ディヴァント殿とロキ・ディヴァント殿ならなんとか!」
「ごめんなさいねパテラさん。ミチトさんがもたらしてくれた利益だけでディヴァントはもう孫の孫の代まで安泰になってしまったの。そこにロキの王都でのダンジョン管理の仕事も報酬が入るし、これでも孤児院に使って騎士団や治癒院に神殿に寄付までしてるの」
「すまないね。それでもミチト君が取ってきてくれてディヴァントは潤っているので謙遜ではなく今年はもう不要なのだよ」
パテラは必死に「え!?そこを何とか!」と食らいつく。
正直魔物の素材を売りに行けとヒノに睨まれて怖い思いをし、王都に行って素材屋に睨まれる。いくらパテラでもそんな経験は何度もしたくない。
それなのに皆そうそうに逃げ出して、ミチトはミチトでパテラを無視してヒノに話しかける。
「ヒノさん、この売り上げからサルバン孤児院とパークンのご飯とか出せますよね?」
「ええ、ノルアと熊男に売らせに行くから平気よ。ありがとうミチト」
「スティエット!?お前はパークンの食事代を何だと思っているのだ!?孤児院も孤児院のレベルではないぞ!?下手をすると各地の孤児達がサルバンを目指すんだぞ!?」
「おお、それ良いですね!じゃあアプラクサスさんに頼んでラージポットまでの空白地帯もサルバンになるように頼んで孤児院増やしましょうよ!」
「んが!?な…ななな…何を言う?」
「あそこ空白地帯だから一応気をつけて見守ってたけどサルバンにお願い出来るなら仕事減るし。あー、ウシローノさん達に任せても良いんだ。なんとかサルバンの領地にしてよ」
「はい、頑張りますねマスター」
「意義のある仕事ですね!任せてくださいミチトさん!」
次々ととんでもない事が決まりパテラは涙目で「スティエット!!?」と言うが通用しない。
「ヒノさん、すみませんが困ってる子供達を助けてくれますか?お金足りないなら紺色に行ってスカイタワーをオーバーフローさせて全部狩ってきますよ。まあ出来たらラージポットが楽だけど」
「スティエット!?お前は八千の魔物をサルバンに持ち込むと言うのか!?」
「…それ…いいわね。困った子供達をサルバンで守る。スカロ、私達の子供が産まれたら孤児院も学校も、それこそ広がる領地を守る騎士団も増やしたいわ!」
「本気か?伴侶のヒノ?」
「ええ、困っている子供達を救ってサルバンに子供の楽園を作るのよ!」
「ヒノさん、困った熊とかも保護してください」
「…いいわね。自然豊かにして熊や狼達を招くのも手だわ」
「はい!」
「お…おい!?」
「何?熊男、領地が拡大されても運営はやり切る。それとも逃げるのかしら?」
「…さ…サルバンに逃げることはない!」
「結構よ。イシホ、その旦那とやり切りなさい」
「はい!」
この日パテラはミチトに関わって初めて逃げる事も大事かもと悟った。
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