第41話 イブとの野獣の日11。
ダンス後にメロが近づいて「ロゼって本当にやれる子なんだねぇ」と褒めるとロゼは自慢気に「へへ、メロは見直した?」と言う。
「見直したけどきっとママやお母さん達にチクリって言われるよ?」
「ええぇぇぇ…。助けてよ」
「ふふ。いいよ。今日はマアルちゃんのパートナーがキチンと出来たから助けてあげる。これからもマアルちゃんが困ったら助けてあげてよね」
「いいけど何に困るの?」
「マアルちゃん、マアルちゃんは今度どこかのパーティーにお呼ばれしたりしてないの?」
「私はまだだけど母上がもう少ししたら11歳のお誕生日会にはリミール派の人達をお招きしてアルマのお披露目会なんかも兼ねたいって…」
マアルは説明しながらどんどん暗い顔をして行く。
「ほら、困ってるよロゼ」
「困ってるの?近隣の貴族の奴らとかなんか言ってこないの?」
「…それはリミール派の人たちの子供とか孫の人達が色々来ると思うけど、うちはカラーガだから弱い人はダメだし、強いって言っても姉上達には及ばないし…。それなのに訓練ばかりでガサツな方だと困るし…」
「メロ?何が困るの?」
「変な人をダンスパートナーに連れ出して踊れないとダメ、エスコートも挨拶も失敗するとダメ。それでカラーガの令嬢と仲良くなるのに弱かったらダメ。まあアルマくんはアルマくんが強ければ相手の子は強さ以外がしっかりしてれば良いけどね」
「うわ、大変だな」
「うん。だから困ってるの。本当は闘神様を見て強くなりたいって思えたから訓練したいのにそっちの事とかあるの」
この会話をしながら視線の端に見えたウシローノと踊るイシホとパテラと踊るノルアを見て「ねえメロ、イシホさんとノルアさんの時はどうだったんだろうね?」とロゼが言った。
メロはすぐに「…聞いちゃダメ」と言う。
「は?」
「ロゼ、聞いちゃダメ」
「へ?」
「知ってはいけないこととかあるのよ?ロゼはお婆ちゃん達に囲まれてお説教されたい?」
「婆ちゃん?」
「ティナお婆ちゃん、ソリードお婆ちゃん、ローサお婆ちゃん」
どんどんと脳内で三婆に囲まれてお説教される自分の姿を想像して青くなるロゼにイブが近づいて「それに山のお婆ちゃんまでつけましょうか?」と言う。
「ママ!?」
「お説教が嫌なら聞いちゃダメですよー」
ロゼが「う…うん」と返事をするとイブはさっさと去っていく。
イシホのお披露目会はイシホ自体は可憐だったが武力のなさを故ナイライとノルアに揶揄されて、本人も引っ込み気味の卑屈さに満ちた悲しい会であったし、ノルアの会は男さながらの立ち振る舞いでエスコート役を困惑させて、止めるナイワに「母上はカラーガをわかっていません!カラーガは力こそ全て!」と吠えて会は寒々しい物になっていた。
中々「俺行くよ」と言わない事で言い出せずにシュンとするマアルを見兼ねてヒノが近づいて来て「どうしたのマアル?」と声をかける。
「義姉様…次の誕生日がお披露目会も兼ねる話でして…パートナーの事が…」
そう言って話し始めたマアルの話を聞いたヒノは「それは楽しみね。私も是非行かせてもらうわね。それでパートナーは誰が良い?スティエット家の子達なら誰でも派遣できるわよ」と優しい笑顔で言う。
「え?」
「だって武力ならタシアから1番年下のコードだってカラーガ騎士団も制圧可能よ?マナーは全員最低限は仕込まれてるわよ?」
「えっと…」
「何?ロゼと組んでみてダメだった?スティエット家はダメ?ロキの所のロードにでもする?」
「違います!ロゼくんはすごく頼もしくてエスコートも完璧でした!」
「あらそう?じゃあロゼ?アンタはなんで俺が助けるよとか言えないの?」
「俺?3つ年下だから背も少し低いし、ドレスの日はもっと背の高くなる靴を履くから見た目良くないし…マナーならやっぱりトゥモだろうし、選ばれないとジェードはヘソ曲げるし、ジェードは背が高いから良いかなって、それよりもタシアなら優しいし格好いいから良いかなって思ってたんだ。だからマアルがタシアって言わないかなとか考えてたし、そろそろメロに聞いてみようと思ってたんだ」
ロゼはロゼなりにマアルの為を考えていた。
そして自分の家族の事も考えていた。
だが今欲しいのは別なのでロゼの背後でローサが「うふふふふ。私の嫌な答えだわ」と言うと突然のローサにロゼは「えぇ!?ローサ婆ちゃん!?」と驚く。
「自信を持ちなさい。ロゼくんはなまじ隠せる事が問題よね。マナーで言えばトゥモくんはスマートだけどマアルさんには合わせられないわ。ジェードくんはそこら辺は完璧だけどきっとマアルさんに付き纏ってこようとする貴族の男の子達と喧嘩になるわね。タシア君は確かにバッチリだけど…一個問題があるのよね」
「タシアの問題?何それ?タシアにはトゥモとジェードとコードと組んでも勝てないよ?」
「ふふ。それにそうなるとミチトさんが黙ってないし、この国が滅びるわね。メロさんはわかるわね」
この問いにメロは困った顔で「…はい」と言った。
「メロ?」
「タシアは術が嫌いだから、本気になればサンダーデストラクションでも撃てるのにやらないの。それよりも剣でパパを超えるって言ってるから、万一パーティーで術の話が出て、術を使わないのは嫌いだからではなく出来ないからなんて悪く言う人が出てきたとして、タシアが我慢してくれてもそれを聞いたパパが怒って下手したらそれを言った子の領地がこの世から消えちゃうよ」
「そう言う事。ミチトさんの剣技を知らない連中はミチトさんは術のみで成り上がった人って誤認してるのよ。だからマアルさんのパートナーを任せられるのはロゼくんよ。まあコードくんも立派だけど、背もまだ低いし術の問題もあるし、何より四つ下になるとまたガタガタ言ってくるのとか出てくるから…」
「ここはマアルがロゼを指名してロゼが完璧にエスコートをしてあげて余興で文字通り雷を落とせばいいのよ」
ロゼは色々と納得をして「ふーん。マアルは俺でいいの?」と聞くとマアルは真っ赤な顔で「…はい!ロゼくんが良いです!」と返す。
「あ、そうなんだ。じゃあ訓練も助けてくれたからお礼に頑張るよ。ローサ婆ちゃん、まだまだだからマナー訓練よろしくね」
「ええ、任せなさい。ロゼくんは訓練を助けてもらったの?」
「うん。まだまだだけど隠れて本気になれる方法をパパに教えてもらって、下手くそなやつでもマアルが持っててくれるって言うんだ。マアルの人差し指の指輪は俺が作ったんだよ」
ローサは指輪を見て照れるマアルを見て嬉しそうに「良かったわねマアルさん。私達ももっと仲良くお友達になりましょうね」と声をかけた。
遠くで所々を聞いていたミチトだけは身体をビクつかせて青くなっていてロウアンから「風邪かい?」と聞かれていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます