第40話 イブとの野獣の日10。

メロは王都からミチトの服を持って戻ってくる。

「パパ、パパの服をシック様に借りてきたよ!」

「え!?メロって王都まで飛んでたの?言ってくれれば取ってきたのに…」

「いいの。マアルちゃんの為だからお姉ちゃんをしたんだよ」


「それでイシホさんとウシローノさんを連れてきたと…」

「マスター、お呼ばれしました」

「お招きありがとうございます」


「…それはスカロさんに言ってよ」

ウシローノとイシホはスカロに挨拶後、マアルには内緒と言ってゴチャの街、懇意にしている宿屋に隠れることになる。


「メロ…シックさんは諦めさせたんだよね?」

「うん。マアルちゃんが万一失敗したら可哀想だから呼んでないよ」


「それなら良かったよ」

「じゃあパパ…それに着替えて正門で待ってて」


「は?」

「今日はパテラお兄さんに頼んで馬車も出して貰うんだよ」


「マジか…」

「ふふ。楽しいごっこ遊びだよ」


「ご飯代置いてかないと…」

「それはまたファットマウンテンで良くない?」


「じゃあこの前鉱石と一緒に取ってきたやつがあるから置いて帰ろうっと」

「…行ってたの?」


「うん。なんか手持ちの鉱石が減ってくると落ち着かなくてさ」

メロは病気だと思っても言えずに「ははは」とだけ笑ってドレスに着替えに行った。

ウシローノ達とは別の宿屋ではサルバンの使用人達が待っていてドレスアップを済ませていく。


ミチトはサルバン邸で正装に着替えると言われた通り正門で待つと馬車が停車する。

宿屋からサルバン邸までは馬車なら五分の距離で2台の馬車が交互に動いている。


「ミチトさん、お待たせ」

そう現れたアイリスは紺色までいかない濃い青のドレス姿でミチトの作った金の指輪が綺麗に映えていた。


改築時にミチトが「なんでこんなに大きなもんを作るんですか?」と文句を言った大きなパーティ会場には一応としてナハトとナノカも招かれていて、パテラとノルア、スカロとヒノが待つ中ミチトがアイリスと着くと「闘神、ミチト・スティエット様、イブ・スティエット様がいらっしゃいました!」と言われて同時に扉が開かれる。


「ここまでするのかよ…」

「ふふ。皆マアルちゃんやロゼの訓練の為にやってくれたんですよ」


ミチトはローサから嫌々教わった歩き方で中に入りスカロとヒノに「お招きありがとうございます」と挨拶をするとイブもアイリスの顔で「御当主、奥様、本日はありがとうございます」と言う。

聞かずともアイリスを知る2人は「よく来てくれた」「楽しんで行ってください」と返す。


「メロ・スティエット様がいらっしゃいました」

メロは1人で入ってくるとスカロとヒノに「叔父様、叔母様、お招きありがとうございます」と言って微笑む。

今日のメロは空色のドレス姿だった。


「メロっていつもパーティ行くとそんな感じなの?」

「そうだよ?今度はパパも行こうよ。ジャックス様が是非って言ってたよ?」


「アクィと行くの?」

「うん。サルバンの隣だからね」


「…やなんだけどなぁ。でもメロに変な輩が寄り付くのはなぁ…」

「一緒に行くとママが喜んでくれるよ?」


話しているとアイリスが「来ましたよ」と言う。


「ロゼ・スティエット様、マアル・カラーガ様、いらっしゃいました」

この言葉と共に入ってきたロゼとマアルは結婚式のドレスに見えないこともない格好でミチトは「悪ノリだ…」と漏らす。


ロゼはキチンとローサの教えを実践していて下手をするとトゥモよりもやれている。


「ロゼってば、本当にトゥモやジェードに気遣ってできないフリばかりだねパパ」

「本当だ。でもきっとアクィが見せてるからトウテは大慌てだな」

「ふふ。それを含めてのパーティですよミチトさん」


キチンとロゼはマアルをエスコートしてスカロとヒノの前に立つ。


ちなみにノルアはマアルの晴れ姿だけで号泣していてばあや達が化粧の用意を始めている。


「義兄様、義姉様、お招きありがとうございます」

「叔父様、叔母様、お招きありがとうございます」


「よく来てくれた。楽しんで行ってくれ」

「ふふ。本当によく似合ってるわ。2人で楽しんでね。ロゼ、エスコートをよろしくね」


こうしてサプライズのウシローノとイシホが入りパーティ開始かと思ったのだが「ロウアン・ディヴァント様、ローサ・ディヴァント様がいらっしゃいました!」と言われて堂々と入ってくるロウアンとローサにミチトが目を丸くする中、挨拶を済ませたローサが「ふふ。メロちゃん、イブさん、呼んでくれてありがとう」と言って手を振って近寄ってくる。

そして「メロちゃんに術で見させてもらいましたよ!マアル嬢もロゼくんもとてもお上手だったわ!」と言ってロゼ達を褒めちぎる。


「…うわ…呼んだの?」

「はい。これでロゼが会ってないお婆ちゃんはティナさんだけになりましたよ!」


「ふふ。ご機嫌のサルバン嬢がイブさんなら迎えにくるから用意をしてと言ってくれたのよ」

「ご機嫌?」


「やあね。パテラさんにサルバン嬢を返さないって言ってたじゃない。サルバン嬢が見せてくれたわよ」

「あー、あれでご機嫌なんですか?アクィは何やってんだか…」


サルバンはキチンとパーティを開催して急でも楽団を呼んで演奏をさせて、学校の成績上位の生徒達にキチンとスイーツを作らせる。

生徒達も貴族達の口にスイーツが入ればそこから進路が決まるケースもあって必死だ。


それをキチンとマナー良く食べるロゼとマアル。


メインは食後のダンスや歓談でローサは「無粋だけど」と言いながらここ最近のまとめなんかを話してモバテ達の部下にウシローノ達を据えてくれたことへの感謝、ザップと真式の事なんかの礼を言った。


ミチトは呆れ顔で「耳の早いことで」と言うとローサはイブやメロを見て「まあ…娘達が優秀ですからね」と言う。

確かにメロ達はキチンとローサに報告をするだろう。


「成る程。まあなるようにしておきます」

「ありがとうミチトさん」


ダンスに関してロゼはキチンと教わっていて、マアルはナイワがサンクタに「あなた…イシホは王都でやりきっていましたよ?ノルアはサルバンさんとの結婚の時にはディヴァント様のお力を借りて血の滲む思いをしたの?わかる?カラーガにマナー、ダンス、化粧は不要なんて言わせません!」と言っていてキチンとダンスも教わっていて様になる。


「ロゼくん!上手ですね!」

「うん。マアルも上手いね。この曲はローサ婆ちゃんが難しいって言ってた奴だよ?」


「ふふ。練習して良かったです!」

「俺も、…うわローサ婆ちゃんがチェックしてるよ…」

ロゼは視線に気付き見るとローサがニコニコと笑顔でロゼを見ている。


「あら、怖いのですか?」

「んー…、ローサ婆ちゃんって隠し事を見抜いてくるから困る」


「隠し事?」

「ジェードやトゥモは俺ができると嫌そうな顔をするし家の中がギスギスするから本気出さないようにしているんだけど、ローサ婆ちゃんはそれを見抜いてきて後でコッソリと「うふふ。お婆ちゃんは元気なうちにロゼちゃんの本気が見たいわ」って言うんだよ」


「あらら、それは大変ですね」

「あのさ…」


「なんでしょう?」

「婆ちゃん怖いから本気出すから付き合って」


ロゼは動きを鋭くしてマアルをそれに無理のない範囲で付き合わせる。


「ごめんね。少しだけ我慢して」

「はい。大丈夫ですよ」


これを見たローサは「ふふ。ロゼちゃんの本気を見ちゃった。今日は来られた価値があったわ」と言って喜んだ。

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