第39話 イブとの野獣の日09。

ミチトも気が済んで水人間を消すとメロがミチトの所に戻ってくる。

ちなみに立てないナハトの所にはナノカとレオが駆け寄って「これ…酷い…」「訓練の傷じゃない」と言っている。


メロはニコニコと「もう。パパってば、訓練は終わりだよね?メロが訓練場の土を直しておくからパテラお兄さん達を治してあげてよ」言い、ミチトもニコニコと「うん。やるよ」と返事をする。


そこに来たパテラは物凄い形相で「スティエット!」と言う。


「あれ?なんか根に持ってません?」

「当たり前だ!何だあの攻撃は!」


「ダメでした?」

「またやってくれ!」


「そっちか…。まあ疲れるんで15体でも良いですか?」

「是非も無い!この屈辱!晴らしてみせるわ!」

そんなパテラを治してミチトはスカロに「どうでした!?」と聞くと「…あれは人間相手の指示ではない。あれは悪魔の群勢にしか見えない。後でモバテ様達のご意見をもらうと良い」と軽くダメ出しをされて「…無理だ…コレで無理だと俺にはもう無理だ」とミチトは肩を落とす。


それを見ていたヒノが「ミチト?」と声をかける。

ミチトは一瞬ヒノの顔を見たがまた俯いて「なんですかヒノさん」と返事をした。


「天使ちゃん達を危険な目に遭わせたくないのよね?」

「それはそうですよ。ヒノさんもですよね?」


「当然よ。だったら聞くけど敵は一般的な兵士が2万、それもオッハー、ナー・マステ、ニー・イハオからそれぞれ2万が攻め込んできた時にミチト1人でやれないの?」

「いや、別にそれくらいなら領土側全部に無理矢理埋めたり洪水で洗い流しますけど…」


考えが済んでいてミチトがやれるという以上何の問題もない。ヒノは呆れるように「群勢いらないじゃない」と返すとミチトはスカロを指さして言いつけるように「でもスカロさんがダメ出しする」と言う。


「バカね。スカロの行動は人基準だからよ。ミチトが人基準に落とし込むなんて大変でしょ?無理するから変になるのよ。本気でやれる事をやればいいのよ」

一瞬の間の後でミチトは「おお!確かに!そうですよスカロさん!!」と言ってスカロを見る。


「…そ…そうだなスティエット。悪かった」

この言葉に晴れ晴れとした顔でミチトは「あー、やっと10年以上気にしてたことが無くなったー!」と喜ぶ。


すかさず抱かさったままのイブが「ミチトさん、嬉しい時は妻のイブをギュッとするんですよ!」と言うとミチトも周りを気にせずに「イブ!」と言ってイブを抱きしめる。


「わあっ!もっとギュッとしてください!」

「やったよ!」

喜ぶイブとミチトを見て「…ふむ」と言ったヒノは優しい顔でロゼを見て「寂しい?」と聞く。


「ちょっと。でもママはパパが好きだから仕方ない」

「ふふ。偉いわね。でもね。ロゼもやってあげなきゃ」


「え?」

「2人でミチトを負かせたのよ?それでミチトに睨まれて怖い思いをした仲間のマアルちゃんを慰めてあげなさい」


「あ、そっか!…でもマアルって貴族だよ?」

「あら、ミチトは知らないけどスティエット家は貴族以上の平民よ?それに私達サルバンの家族でディヴァントの家族よ?だから怒られないわよ」


「そうなんだ、じゃあいいや」と言ったロゼは今も椅子に座って震えているマアルに「お疲れ様。助かったよ」と言って抱きしめて頭を撫でるとまさかの抱擁に「ひぇえっ!?」と驚いた声を出すマアル。


「あ、嫌だった?」

「いえ!?ホッとします!!」


「良かった。パパに睨まれたの怖かった?」

「はい。まだ身体の芯から震えてます」

この返しにロゼが「怖いよね。でも覚悟なんだって」と言ってマアルの目を見て微笑んだ。


「覚悟ですか?」

「うん。それも含めて覚悟。パパに睨まれる覚悟…人を傷つける覚悟…全部の覚悟を持たないと戦ってはいけないんだって皆が教えてくれたよ。マアルも弓を持つ時には覚悟をすれば平気だよ」


「はい。まだ覚悟が持てない時は手を引いてもらえますか?」

「俺が?良いけど心もタシアが凄いよ?」


「いえ、ロゼくんがいいです」

「俺?まあ俺も1人じゃなければいい訓練になるからありがとう」


その姿を見たメロとノルアは微笑ましい気持ちになってこっそりとナイワに見せると「メロ嬢には本当に感謝しかありませんわ」と言われた。




ミチトは頑として夕飯を拒否して別荘に帰ると言う。

悲しげな顔で「何故だスティエット!?我々は家族ではないか!」と言うパテラに「ロゼに沢山のパスタを作ってあげるんです!ナスとトマトとミートボールのパスタ、イブ特製のホワイトソースを使ったミートボールパスタ!王都だから魚を使ったパスタもやれるし!煮込みパスタも作るんです!」とミチトは言い張る。


「………何?それが理由か?」

「それ以外に理由がありますか!?」


「あー…、パパってば昼にマアルちゃんとロゼの会話が聞こえてたから…」

「ロゼの好物はパパのパスタって話ですね」


「ふむ。スティエット」

「なんですスカロさん。その言い方怖い」


「パスタは明日の昼に持ち越せぬか?」

「は?ヤですよ。腹ペコのロゼは俺の作るパスタで笑顔になるんです」


スカロはミチトの返事に何も言わずに、しゃがんでロゼの目線になると「ロゼ、男ならば耐えられるな?耐えた先の方がより美味いことを知っているな?」と聞く。


「スカロおじさん?うん…」

「スティエット、宴だ。マアル嬢に何もせずに帰してはサルバンとしては困る。ロゼに思い出と経験をさせようではないか」


「は?」

「メロとイブとロゼとマアル嬢に服を作る。ロゼとマアル嬢はお揃いでメロとイブはお前好みのやつだ。ロゼもそのうちメロ達に連れられてパーティに出ることにもなろう」

ミチトはスカロの発言に「行かせませんよ。あんな面白くもない」と即座に文句を言う。


「パパ、マアルちゃんもパートナーが居ないと辛いんだよ。イシホお姉ちゃんが王都に住んでてお呼ばれした時にウシローノお兄ちゃんに会うまでは辛かったって言ってたよね?」

「行かなきゃいいんだよ…仮病使いなよ」


頑としてパーティーの話に「行かなければ良い」と言うミチトだったがメロは「…パパのパスタが明日ならメロも食べたいから明日のお昼ご飯までご一緒しちゃおうかなぁ…」と言うとミチトは鋭い目で「メロ、本当だね?」と言った後でスカロに「…それなら仕方ない。パーティは参加しましょう」と言った。


そして申し訳なさそうに「ロゼ、嫌で嫌で仕方ないと思うけどパーティで我慢できる?パスタが明日でも平気?」と聞く。


「…うん。パパ、揚げ焼きステーキも付く?」

「勿論さ!そっか…そうしよう。仕込みもあるから、スカロさん、ステーキ肉を4人分分けてください。帰ったら仕込み済ませておくから美味しくなります」


「構わんぞ。持っていくと良い」

スカロは義妹ノルアとその実家カラーガとの付き合いもあるので努力は惜しまない。


ヒノもマアルは生まれた時に抱いたこともあってキチンと可愛がっている。


「ふふ。ロゼとお揃いね。あの子もいい子よ。安心しなさい」

「はい。お姉様」


サルバンの仕立て屋も天変地異のような訓練後には急ぎで呼ばれる事もあり、全員が出動準備をして待ち構えていた。そして今日は初のロゼまで居たがなんとか作り上げる。


メロは隠し球があるからとイブと優先でドレスを作って貰い、ミチトは足止め代わりに今日の場に相応しいアクセサリーを一から作ることになる。


「んー…まあ良いですけど…、俺センス無いんですよ?」

これにはスカロが「気にするな、スイーツの飾りつけに比べればアクセサリーはまだ簡単。軌道修正はしてやる」と言う。


メロは慌ただしく動く。王都に顔を出して広域化させた伝心術で伝えたい人達に要件を告げると皆気持ちよく応援をしてくれる。

イブもこの場を見てもらいたいと言って転移を済ませると、そちらに関してはアクィが手を回していてくれた。

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