第38話 イブとの野獣の日08。
ミチトは執拗にレスタ達を狙い、イブ達が直撃を防ぎながら訓練場から逃そうとする。
1人、また1人と撤退する度に狙いが集中していき撤退の難易度が跳ね上がっていく。
「一応だけど援護のマアルさん以外は手出し禁止ですよー。パテラさん、ナハト?逃げ切れると…いいですね?」
水人間達は恐るべき行動に出た。
それは全ての水人間が様々な二刀剣術の動きでパテラ達を殴りつけて来た。
「くっ!こっちはライブの十連斬!?」
「こっちはママの八連斬だよ!」
「これはメロの八連斬!?」
連斬慣れしているズンバ達ですら防ぎきれない中。「チャイルド!」と言ってナハトが辛うじてだが防いで「パテラさん!ネーズさんの援護をお願いします!チャップさん!今です!退いてください!」と言う。
そんなナハトを見てミチトは「へえ、伊達にタシア達に撃たせてないね。このくらいなら防ぐんだ。ナハトはやるね」と褒めるがナハトには談笑の余裕なんてないので「くそっ、ギリギリ過ぎる。ネーズさんも早く退いてください!」と言っている。
ネーズが退いた所でナハトは「メロ!僕とパテラさんになったら攻め込んで!」と指示を出すとメロは驚いた顔で「やれるの!?」と聞き返す。
「やる!パテラさんも先に退いてください!」
「バカを言え!団長が部下を見捨てる道理はない!」
確かにパテラの性格でいえばそうなる。だがここでナハトが声を大にする。
「じゃあ仮にコレがお兄さ…闘神の作戦で撤退したノルアさん達を狙った場合ならどうします!?団長抜きで耐えられるわけがない!」
ミチトは嬉しそうに「へえ、ナハトもノリがいいや」と言ってニヤリと笑うと「そうそう、そう言う想定をしないとダメですよ。パテラさんってば負けるイメージないからこうなると弱いんですよね。はやく後進を育てて殿を任せられないと…全滅です」と言ってパテラを集中的に狙う。
「くそっ!パテラお兄さん!逃げて!」
「早く撤退ですよ!」
「マアル!俺は良いからパテラおじさんを援護だ!」
「く…。辛い!」
パテラは憎々しい表情で「スティエット…、おのれ…アクィを嫁にやったと言うのに…」と言うとミチトは即座に「アクィは俺の妻です。返しませんよ」と言う。
この間も訓練場の外からは「パテラ様!早く撤退を!」「ナハトは限界です!」と聞こえてくる。
「今日の日を忘れん!忘れさせん!」
そう言ったパテラは「うぉぉぉぉぉっ!!」と叫びながら訓練場から脱出を果たした。
一瞬の間、ミチトは「さて…。メロ?イブ?ナハトの作戦通りにくる?ナハトを逃す?」と言いながらわざと囲うように水人間を配置して聞く。
「ミチトさんの意地悪」
「本当…パパってばそんなにスカロお兄さんに言われたのが嫌だったの?」
「嫌さ、俺は家族を守るんだ。戦争になったら俺の家族…第三騎士団も戦いに出る。
きっともうすぐシローとヨンシーの生まれるシヤも戦いに出る。クラシ君もだ…。
それを守る為にずっとどうするか考えていたからね」
ミチトの思いは本物だろう。
第三騎士団の名を出した時の悲痛な表情は本当に戦わせたくないという顔をしていた。
「パパ抜きでやれるさ!」
「ロゼ?」
「俺たちだって強くなる!マアルやアルマも強くなる!第三騎士団も強くなる!ナハト叔父さんだってやれる!パパだけが大変な思いをする必要はない!」
ロゼの言葉に一瞬嬉しそうな顔をしたミチトだったがすぐに顔を暗くすると「ロゼ…。でもね、口で何とでも言えても力が無いとダメなんだよ」と言う。
それは散々15から外の世界で使い潰され命を軽んじられたミチトだからこそ重みのある言葉だった。
ロゼはロゼなりにミチトの表情で何かを察したが「……やってやる」と言う。
「ロゼ?」
「メロとナハト叔父さんは水人間を蹴散らして!ママ!俺とママでパパに訓練を終わらせさせるよ!」
ロゼの本気に驚くメロとイブは「ロゼ…」「良いですね!やりましょうロゼちゃん!」と言って剣を構えなおす。
「マアル!狙いは全部パパに絞るんだ!」
「はい!」
全員の目がミチトに向いた時、ミチトは「面白い…。やれると…いいね?」と言って殺気を放った。
「言ってれば良い!サンダーデストラクション!」
ロゼのサンダーデストラクションにイブも重ねて強大にしたところでメロが「少し貰うよ!サンダーコネクト!」と言って水人間に向けて放ち、水人間を破裂させて数を減らす。
「メロ!水人間を作るのって頭が疲れるからどんどん破壊して!」
「わかったよ!ナハト!働きなさい!」
「わかってる!」
メロとナハトが水人間に向かったのを見たロゼはイブを見て「ママ、前進だよ」と言うとイブはアイリスになって「ふふ。パパみたいで格好いいよロゼ」と言った。
「照れるってば」
「さあ!マアルちゃん!よろしくお願いしますね!」
再びイブに戻ったイブとロゼが走ってミチトを目指しながら水人間に氷結結界を放ったりウインドブラストを放ったりする。
「確かにロゼの言う通り水人間の制御は疲れるな…。数を減らすか…」
ミチトはイブとロゼの倒した水人間を復元せずに剣を抜くと前に出てイブと剣を交える。
「ミチトさんと剣の訓練ってあんまりしないから嬉しいよ!」
「そうだね。イブは強いから面倒見る必要も無いからね」
楽しそうに二刀剣術を同じタイミングで放つと「わぁっ!手が痺れるよ!ミチトさん凄い!」とイブが喜ぶ。
「イブ?もっと…かな?」
「うん!ミチトさん、もっと…もっと頂戴!」
「ああ!これならどうする?サンダーデストラクション!」
「ロゼちゃん!アースランスで迎撃だよ!アースランス!」
イブのアースランスに合わせてロゼも放つと辛うじてだがサンダーデストラクションを迎撃する。
「俺と同じ防ぎ方、そしてそのセンス。やはりイブが完全な術人間だね」
「うん。アクィさんはミチトさんが無理矢理究極の術人間に仕上げたから強さは敵わない。でもこういう時の発想力なんかは私の方があるよ!」
イブは嬉しそうにミチトに剣を放ちながら術を放ち、ミチトも楽しそうにそれを迎撃する。
真剣勝負の殺し合いに近いのだが2人は楽しそうに見える。
そこにロゼが前進してくると「パパ、ママとイチャイチャしてるけど邪魔するよ!」と言う。
ミチトは嬉しそうにロゼを見て「へえ、何するの?」と聞きながらイブの二十連斬を撃ち返す。
「もうしてるさ…氷結結界!」
「甘い!ファイヤーボール!」
氷結結界の起点に向けてファイヤーボールを放ち術発動をさせないミチトにロゼが無限斬の構えで飛び込んだ時「パパ、俺の勝ちだよ」と言った。
「ロゼ!?っ…くそっ!?」
ミチトは慌てて転移術で回避をする。
その手にはイブを抱きしめていて。ミチトは出現するなり一瞬殺気を放ちながら場所を変えて矢を放っていたマアルを睨んだ。
マアルはミチトの殺気に腰を抜かして「あわわわわ…」と言っていてロゼが近付いて「マアル!平気?」と言って立たせていた。
ミチトの立っていた場所とイブの場所には矢が刺さっていた。
「やられたよ。ロゼの攻撃でイブがあわや怪我をする所だった。ロゼは認識阻害だけ?」
ミチトはナハトの周り以外の水人間を消すとイブを抱きかかえたままマアルのところに向かう。
「ううん。マアルだけだと遅いから風の術で加速させたよ」
「それでか…マアルさんは何発も放っていた一部をロゼが認識阻害術を仕掛けて俺の検知から逃して他に気を向かわせた所で加速か…」
「へへへ、パパはどこで気付いたの?」
「え?かわすとイブに当たるのがわかるくらい近づいてさ。まあ術で防いでも良かったけどナハトをボコボコにしたから満足してたしスカロさんのスイーツ食べる時間なくなると嫌だから終わらせたんだよ」
確かにナハトは今も2体の水人間に袋叩きにされていて必死にメロが助けようとしている。
ミチトを追い詰めたと思っていたロゼだったがそうでなかった事に「まだまだだった…」と言って肩を落とす。
「いやいや、そんな事ないよ。音も消えていたし、消音術なんてどこで知ったの?メロ?アクィ?」
「ううん。今朝起きたら何となく認識阻害術と一緒に閃いてたんだよ」
それは昨晩のそれを寝ながらロゼが覚えていた事の証左に過ぎないのでミチトは顔を赤くして「マジか」としか言えない。
イブは「あはは…照れますねミチトさん」と言ってイチャイチャとしている。
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