第34話 イブとの野獣の日04。

訓練後、ロゼはモバテの前で「どうでしたか?」と聞く。


「ああ、見事すぎだな。だがどうして隠すような真似をしていたんだ?」

「俺がやれちゃうとジェードとフユィが辛そうな顔をするからです」


この言葉に優しい顔になったシックが「優しいんだね。本当にイブさんと同じ優しさだね」と声をかける。ロゼは突然の事に「シックおじさん?」と聞くとシックが答える前にアプラクサスが「ええ、貴い心が根付いていますよ。ロゼくん。皆ロゼくんに救われています。いつまでもその貴い心を忘れないでくださいね」と言ってロゼの手を取って褒める。


「アプラクサスおじさん?」

「ミチト君に怒られてしまいますが一つお話ししましょう。ロゼくん、誤解のないようにお伝えしたいのはイブさんが4番目の奥さんなのもロゼくんがごきょうだいの中で最後の方なのもイブさんにロゼくん以外のお子さんが居ないのも全部イブさんの貴い心がもたらした事なのですよ」

この言葉にロゼは驚いて「アプラクサスおじさん?」と聞き返す。

今度はシックが「驚くのも無理はないよ。ただイブさんは他の奥さん達に抜け駆けをしないように順番を最後まで待ったし、ロゼくんが7歳なのはシアさん、フユィさん、ジェード君が生まれるからイブさんがミチト君やロゼくんの為にも遅らせたからだよ」と説明をし、ロゼは驚きの表情で「本当ですか?」と聞く。


「ああ、それで男の子を授かれたイブさんは女の子はメロさんやラミィさん達が居るからと言ってロゼくんだけで我慢したのさ」

「知らなかった…、ママはパパに好かれてないのかと思ってました」


「あの姿をご覧なさい」

アプラクサスが示した方を見るとイブがミチトに抱きついて「プリンですよ!」とやってミチトも「そうだね。一日中振り回してごめんね」と笑顔で謝る。


「笑ってる」

「だろ?だから変に気負う事はないさ」


「はい。今日は良かったです。本気も出せました」

「…そういえばロゼくん、一応なんですが本気の本気になるとロゼくんに勝てるのは誰ですか?」

アプラクサスの質問に困り笑顔のロゼは「内緒です。俺達きょうだいは仲良しです」とだけ返すと、この答えにモバテは嬉しそうに「だな、アプラクサスの負けだな」と言った。


ロゼはソリードがクラシと夜ご飯になって不貞腐れたがアプラクサスが「それでは今日は我が家にいらしてください。シックもモバテ殿も是非どうぞ」と誘われて行くことになる。


ロゼはニコニコと嬉しそうで、イブもプリンを約束されて笑顔だった。


ミチトはこの家族の日を経て色々と考えさせられたし、子供達の中にも闇がある事がわかってこれからはもう少し前向きに向き合わなければと思いながらアプラクサス邸に着いたわけだが…


「マスター!!」

「また雷!鳥さん逃げちゃったよ!」


「あ…カメリア…シナバー…」

「なんで雷を降らせるの!?やめてってお願いしてるのに!」


「いや、今日も俺じゃ…」

「また治癒院の子供達が泣いてるよ!」


「ロゼが…」

「鳥さん来てくれなかったら怒るからね!」


「…イブ、ロゼ…」

ミチトは助けを求めるが意地悪い笑顔のイブがロゼに「内緒にしましょう」と言っていてミチトだけが怒られ続けていた。



夕食後、別荘に帰ると3人でお風呂に入る。


「ふふ。ミチトさん、ライブ達とは狭かったよね?」

「そうだね。でも今日はアイリスとロゼだからまだゆったり入れるよ」


「ロゼちゃん。ママの凄さが分かりましたか?ママはそれも考えて3人家族にしたんですよぉ〜」

「成程、ママやるね」

アイリスは珍しく勧められたお酒に酔っていて上機嫌でミチトとロゼに抱きついている。


「あ、忘れてた。この別荘、建て直すんだ。ちょっと厄介な仕事を頼まれてその報酬でもあるかな?」


「パパ?お風呂大きくなるの?」

「多分。なんかやって欲しいのあったらアプラクサスさんかエーライさんに言っていいよ。今回はかなり面倒ごとだからね」

ミチトは仕方ない事だが、率先して動くわけではないという立場の為にも嫌そうに説明をする。


「それじゃあ3人じゃなくても良くなるの?」

「あ!じゃあもう1人赤ちゃんに来てもらいましょう!」


子供の前でとんでもない事を言うアイリスにミチトは「ええぇぇぇ?もう沢山居るよ?」と言うとロゼは「ママ、俺はパパとママを独り占めしたいからやだよ」と言う。

この返しは想像していなかったアイリスは「あらら…」と言った後は「そうですねー」と言って納得をした。



「じゃあ今日は早く寝ましょう。明日は何がしたいですか?」

「んー…お買い物。後はサルバンでケーキ食べて訓練。夜はメロと双六」

サルバンと聞いたミチトは演技ではなく嫌そうに「サルバン?辞めない?」と言う。


「ミチトさん?」

「ナハトに会いたくない」

数日をアクィ達と見ていたアイリスは「ああ…」と言って納得をする。

ナハトの事で怒ったミチトをなだめられるのはリナくらいのものなので困るのだが、ここでロゼが「大丈夫だよ!俺がガツンとワガママ言うなって言ってあげるよ!」と言う。


「…じゃあメロが来て行きたがったらと、明日ロゼに考えてる本気の訓練次第にしよう」

ロゼはその言葉に満足そうに風呂を出るとすぐに「無理、眠い」と言って寝てしまう。



「ミチトさん、今日はお疲れ様」

そう言ったアイリスは寝間着の下に昼の水着を着ていた。


「実家は嫌だったよね。お母様の顔とか辛かったよね。ごめんね」

「いや、気にしてくれてありがとう。でもなんで水着?」


「ミチトさんが可愛いって言ってくれたし、それに…ロゼは一度寝ると起きないよ。消音術と認識阻害術をかけるから…ね?」

アイリスがそういってミチトに抱き着いてくる。


「マジか、ロゼは真式だから起きるかもよ?」

「大丈夫だよぉ。明日はメロちゃんが来るから今日…ね?」

そう言ってアイリスはピンクの野獣へと変貌をした。



翌朝、朝一番に来たメロを見てロゼが「メロ!パンケーキ行こう!」と言って朝食がパンケーキになる。

メロもパンケーキの前では幼い頃のメロそのものになってパンケーキを楽しむ。


そしてモーニングの後でミチトは「ロゼの訓練だよ」と言ってモンアードに顔を出した。


「お?珍しくまた会ったな」

「ええ、この子が息子のロゼ、こっちが娘のメロ、そして…」

「妻のイブです」


3人はモンアードに挨拶をしたところでミチトが「この人がモンアードさんね」と紹介をした。


「今日はどうした?」

「指輪を何個か売ってください」


「あ?毎度ありだが作らないのか?」

「まあそれは作りますが、今日はこの子の訓練なんですよ。なので複雑なのと超複雑なの、後は記念にイブとメロにオススメをください」


モンアードは「なんだそれは?」とボヤきながらも複雑な指輪を持ち出して「これでいいのか?」と聞く。


「バッチリです!」と返したミチトはそれをロゼに持たせて「ロゼ、左手に単純な術気を出して指輪の表面を走らせてご覧」と言う。

ロゼがやれた所で銀を持たせて「今度はそのまま右手の銀に術を流して同じ形にするんだ」と言う。


ロゼは唸りながらなんとかそれらしく作るが細部がまだ甘い。


「これなら隠れて訓練出来るよね?」

「うん。すごく疲れるよ」


「パパ?」

「ロゼはやれる子だからね。でもフユィやジェードの為にできないフリをしているからこう言う訓練をさせてあげるんだ」

この説明にメロが納得をする横でモンアードは「…商売あがったりな親子だな」とコメントをする。


ミチトが「キチンと買いますから許してくださいよ」と言うとモンアードは「まあな」と言ってイブとメロにオススメを渡すと合計で5個の指輪を買った。


「銀の塊はあげるから頑張って訓練するんだよ」

「うん。頑張るよ」


「それで、今日はどうするの?」

「メロは希望ある?」


「ロゼの日なのにメロが決めるの?」

「うん。メロがサルバンって言ったら行こうと思ったんだ。スイーツと訓練!」


「ロゼは昨日も訓練なのに?」

「うん。色々と教わったからやりたいんだ!」

メロはロゼに言われて「サルバンも行きたいんだけど」と言った。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る