第30話 リナとの野獣の日11。
ナハトは貰ったばかりの剣が小さな子供のような大きさなのでリトルチャイルドと名をつけてこれでもかと振り回す。
パテラナックルもパテラチャージも「チャイルド!」と剣に語り掛けながら防いでしまうし、とんでもない威力の剣でパテラを寄せ付けない。
だが完全にパテラを舐めていてパテラは「剣に溺れるとは愚か!」と言うと剣の直撃を無視して前に出てナハトの顔面に強烈な一撃を浴びせるし、防御時も「スティエットの教えを理解しないとは愚か!」と言って剣ごと持ち上げられて放り投げられてしまう。
そして最後は剣を奪われてこれでもかと負かされていた。
新しい剣なら勝てると思っていたナハトは「笑止!だらしないわ!」とパテラに言われて落ち込む。
先程までの調子づいた顔からは想像もつかない落ち込みようにミチトの言葉を貰っていたメロが前に出て、「うん。メロはわかったよぉ。ナハトは少し甘ったれなんだね。パパが本気を出したらナハトはすぐに死んじゃうからメロがお仕置きしてあげるね」と怖い笑顔で言うと「何してもいいよ。頑張ってね」と言うなり身を低くしていきなり斬り込むとそのまま剣を蹴り上げて「二刀剣術!八連サンダーインパクト!」と言って八連斬の全てにサンダーインパクトを乗せてナハトはなす術なく訓練場を転がる。
そして倒れたところにサンダーフォールが落ちてきて、回避した先はアースフィードが待っている。
ナハトは死を間近に感じて必死に回避をするとメロは見たこともない顔で「えぇ?逃げるのぉ?戦わないの?さっきはパパに頼んで剣をもらったのに今は逃げるの?パテラお兄さん達やタシア達に甘ったれたのに?」と言って執拗にナハトを追いかけ回して雷を落としたり、足元を急に凍らせて転ばせようとする。
「あーあ…、メロが怒っちゃったねお父さん」
「いいんだよ。ナハトは甘ったれるからメロが怒ってくれたんだよ」
この状況でメロを止められるのはミチトだが、ミチトはナハトを救おうとはしない。
見ていられないリナは「ミチト」と声をかけた。
「リナさん?」
「私久しぶりにメロとミチトの戦いが見てみたいよ。頼めるかな?それで訓練が終わったらお風呂を貰ってドレスだよ」
ドレス姿が楽しみなミチトは「あ!それ!メロにも本気の訓練って言われたんだ!行ってくるね!」と言ってナハトを助け出すと「懲りた?甘ったれはダメだよ。それはミトレさんと母さんの悪い癖だ。ナハトは男として直せ」と言う。
ナハトが頷くとメロも攻撃の手を止めて「パテラお兄さん達にお礼を言って片付けを始める!これからのナハトはパパの弟ではなくて訓練に来てる第三騎士団のナハト・レイカーだよ!」と言うとナハトは「うん。お兄さん。ごめんなさい。今日はありがとうございました」と言ってレスタ達の元に戻る。
「さあメロ、最後だよ。約束だったね」
「うん!メロとパパの訓練だね!」
この言葉を聞いたヒノは即座にテーブルを立ち、剣を持つとばあや達に指示を出す。
使用人達は流れるようにテーブルを安全圏に下げていく。
「チャズ様、リミール様、アンチ様、もう少し安全圏に離れましょう」
この流れにモバテ、シック、アプラクサスは「あ?」「え?」「は?」としか言えずに居る。
そんな中、熊のパークンは何も言わずにリナ達の横に来るとシアとコードとリナに背にのれとやって退避の用意をする。
「え?パークン?」
「何?」
「タシアは?」
「僕は自分でなんとかしろって事かな?」
パテラはすぐに「サルバン騎士団!構え!ノルア!守るぞ!」と指示を出しノルアも「はい!」と返事をする。
これについて行けないのはナハトとナノカで、困惑する中パテラが「抜刀!」と声をかけると全員が真剣な顔で剣を抜く。
スカロも剣を持つとタシアに「タシア!疲れているだろうが流れ弾を任せる!パークン!リナ達を頼む!」と声をかけてくる。
そんな事は関係ないとばかりに訓練場の中は殺気だっていき、メロが「パパ、行くよ?」と言い、ミチトは「ああ、いつでもおいで」と返す。
剣を構えて「身体強化!滑走術!二刀剣術…二十連斬!」と言いながら撃ち込んでくるメロにミチトが「今日はそれからか…付き合うよ」と言うと手甲をつけてメロの二十連斬を拳で軌道を逸らしながら反撃を試みる。
「ちっ!メロはパパより速く動くんだ!二刀剣術!サンダーデストラクション!」
再び放たれる二刀剣術と共に降り注ぐサンダーデストラクションにミチトは「アースランス!アイスボール!」と言うとアースランスでサンダーデストラクションを迎撃しながらこれでもかと氷の塊を空中からメロに向けて放つ。
メロは氷の塊を回避しながら「くそっ!二刀剣術!サンダーインパクト!アースランス!インフェルノフレイム!」と言いながらミチトに二刀剣術を放ち続け、その剣に雷を纏わせて更に術で追い込んでいく。ミチトは「ちっ!いなすと衝撃が来る!」と言いながら「サンダーインパクト!氷結結界!」と言って衝撃を相殺しながらインフェルノフレイムを氷結結界で相殺してしまう。
メロはまだ心折れず、果敢にミチトに攻め込む。
「軽身術!氷結結界!アイスウェイブ!」
「フレイムウェイブ!アースランス!」
「滑空術!二刀剣術!」
「甘い!アースボール!アイスボール!ファイヤーボール!」
神々の戦いのような攻防。
メロの攻撃にミチトの防御。
物凄い状況にモバテ達は言葉を失いながら訓練場を凝視している。
「くそっ!まだパパに届かない!」
「そろそろ攻めるよメロ?リナさんが見てるから本気の奴だ…頑張ってね」
この言葉にメロの背筋が凍る。
多分見たことのない攻撃が出てくる。
「ヒントだけあげるよ…軽身術!身体強化!」
ミチトはそう言って天高く跳び上がると「アースフィード!」と言った。
そのアースフィードは訓練場のサイズに広がって強大な大穴が開いてメロを飲み込もうとする。
メロは慌てて軽身術と身体強化で飛び上がると浮遊術で待ち構えていたミチトが剣を構えて「二刀剣術」と言って乱打戦が始まる。
そのまま落下していく中でメロがどうするか悩んでいるとミチトが「手詰まりだね。お疲れ様、超重術!」と言ってメロだけを地下に落としてしまった。
数秒して「メロー、参った?」とミチトが聞くと穴の中からメロの「参ったよぉ。穴が深いよぉ」という声が聞こえてくる。
ミチトは満足そうにメロを呼び寄せて抱き抱えると穴を塞いで何事もなかったかのよう着地をした。
度肝を抜かれたモバテ達に剣を納めたヒノが「トウテでやるとセルースやスード、ヨシから怒られるそうで、王都かここでやりたいってメロに頼まれたんです」と説明する。
この言葉にモバテ達が何も言えないでいると「今日はまだリナ達が居たから軽く済んで良かったな。伴侶のヒノよ」とスカロが言い、ヒノは「ええ、前回はアクィも居てインフェルノフレイムの撃ち合いにファイヤーボールとフレイムウェイブの炎縛りの攻撃で訓練場は炉の中のようになってましたわね」と返す。
「…あの時の流れ弾は怖かったな」
「はい。屋敷が燃えなくて良かったです」
ようやく口を開いたモバテが「…それを許すのか?」と聞くとヒノが笑顔で「はい。メロは可愛い我々の子供ですから」と言った。
「毎回こんな大惨事なのかい?」
「まあ氷縛りの日は危なかったですね」
「…あれを…王都で?」
「ええ、チャズ様達のお許しを得てみせるとメロが言ってました」
この説明にモバテが「なに?」と言っているとメロが戻ってきてモバテの前に来て「モバテ様!見てくださいました!?」と聞く。
「お、おう。見事だったぜメロさん」
「えへへ、うれしいです。でもまたパパに負けました」
「いやいや、十分だぜ?」
「ううん、もっと回数を重ねて勝ちたいです」
これは良くない流れだと感じたモバテが話を切り上げようとしたが「今度は王都でも訓練をさせて貰えませんか?」と懇願されてしまう。
モバテ・チャズの立場でメロを否定しなければと思うのだが愛らしいメロの頼みに「く…、そうだよな。アプラクサス、第三騎士団の訓練場ならいいよな?」と言ってしまう。
「本当ですか!ありがとうございます!」
メロが嬉しそうにモバテに抱き付くとモバテは「おうおう、気にすんな」と目尻を下げてしまう。
正直困った事になったのはアプラクサスで安全面から許可なんて出来ないのにモバテが許可をした事に困り顔になるとシックが「応援するよアプラクサス」と声をかけてきた。
呆れ顔のリナが「メロ、汗だくでモバテ様に抱きつかないの」と言うとメロは赤くなって「あ、ごめんなさい!」と謝る。
この後でお風呂を貰った全員が晩餐会を終えると夜も更けていた。
ちなみにリナ達のドレスはオレンジと茶色をセンス良くまとめた一着で、40を超えたリナがきても、まだ8歳のシアが着ても様になっていた。
モバテ達を家に送るとシックから果実酒を貰ったリナとミチトは別荘でそれを開ける。
今日の訓練はかなりハードでメロですら船を漕ぐので「ほら、私達もこれ飲んだら寝るから寝ちゃいなさい。メロは明日も居なさいな」とリナが言ってベッドに子供達を連れて行く。
ミチトが「そうだよメロ!」と言う中、メロは「ダメだよぉ、明日はメロ抜きの5人家族だよぉ」と言っていると半分寝ているコードが「メロは嫌なの?」と聞く。
「嫌なんてないよぉ」
「じゃあメロが居たければ居ればいいんだよ」
「もう…コードってば」
「いいじゃん、メロ…格好良かったよ」
メロはこの言葉で2日目も夜までリナ達と過ごす事になる。
そして料理をこれでもかと作ってアプラクサスとエーライとイイーヨ達を招いて剣術大会の話をしながらもてなす。
タシアとコードはかつて大鍋亭に来たばかりのイブがしたようにホワイトソースとマヨネーズを作り、ミチトとリナでメロとシアに料理を教える。
メロはスイーツ作りが得意なので基本的に問題はない。例外があるとすれば油断をすると砂糖を入れたがる事と、スイーツは特性上出来上がりまで味見ができないのでシチューを作っても味見をして軌道修正をする習慣がなかった事だった。
2日目の晩に「いい加減帰らないとトウテが大変だよぉ」と言うメロのいう通り、アクィとラミィは2人してメロが籠絡されたと憤慨していて大変な事になっていたのでメロはトウテに帰る事になる。
3日目は5人で王都散策を済ませるとあっという間に終わってしまう。
「またやりたいね」
「はい」
「お父さん、お母さん、楽しかったよ」
「私も!」
「僕も!」
その言葉にホッとしながらミチトはリナにある事を話してトウテに帰った。
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