第29話 リナとの野獣の日10。

メロの二刀剣術を防いで浮かれるナハトが気に食わないミチトはメロと代わると「タシア、メロ、見ててご覧。これが俺の無限斬だよ」と言って二刀剣術無限斬をナハトに向かって撃ち込むと始めはそれなりに防げたナハトは文字通り訓練場に腰まで埋められる。

ミチトが冷ややかな目で「剣に溺れるな」と言うと埋まったナハトは「…はい。ごめんなさい」と謝った。


パテラとノルアが「スティエット…何回打ち込んだ?」「あっという間でした」とコメントをするとミチトは「さあ、500くらいですかね。本気で放てばこれくらい行けますよ」と言って笑う。


ナハトを痛めつけても気が晴れないミチトは不機嫌顔でナノカの前に出て「ナノカさん、悪いんだけどナハトの調子の良さが気に食わないからナノカさんからも見てて気になったら指摘してくれないかな?」と言う。

それはナノカも気になっていたし、第三騎士団でも熱心に訓練に取り組みながら調子良く訓練の追加を頼む姿にシヅ達が苛立っていた話を聞かされて色々と察する事になった。


「ナハト、そこから頑張って抜け出して20人抜きやる?パテラさんに殴られながら脱出する?」

「え!?お兄さん?」


「調子に乗ってるのが気に入らないんだよ」

「ご…ごめんなさい」


ナハトは素直に謝って救出されるとパテラが「ナハトぉっ!その剣で俺と訓練だぁぁっ!」と言い出す。


「まあ…俺はタシアとシアとコードに教えられたから良いですけどね。あっちでスカロさんのスイーツ食べようよ。疲れたよね?甘いの美味しいよ。スカロさん、フルーツオレってスカロスイーツのクオリティで出ます?」


スカロは任せろと言って厨房に行くとすぐに極上のフルーツオレが出てきて子供達は子供の顔で美味しいと喜んで「サルバン好き!」「訓練させて貰えてスイーツ美味しい!」「皆優しい!」と喜び、ヒノも優しい顔で「いつでもいらっしゃい。貴方達の為にもお仕事頑張っているのよ」と言う。


現にサルバンの収益はヒノが嫁いで激変した。

これでもかと増収して領土の大きさに何もかもが見合って居ない。



メロが仕事と聞いて昨日ジェードがコルゴ・メイランを殺しかけた話をしてスカロとヒノに謝るとヒノは「殺せばいいのに。私のメロに色目を使うなんて万死に値するわ」と言い、スカロは「メイラン…黙って砂糖だけ作っていろ!」と憤慨した後で「なんの問題もない。それこそサルバンに砂糖を売らねば干上がるのはメイランだ。サルバンはオッハーの砂糖でもなんの問題はない!最高のスイーツを生み出してみせる!」と言い切る。

アプラクサスが「それは困ります。仲立ちをしますからこれまで通りメイランから砂糖を買ってやってください」と慌てて止めていた。


このやり取りでも笑わないミチトにリナが「ミチト、機嫌直してよね」と声をかける。

リナに言われると大人しくなるミチトが「わかってますよ。皆ナハトに甘いんですよ」と漏らしながらクッキーをつまむ。


「ようやくミチトに弟と認めてもらって嬉しいのよ」

「甘ったれすぎです。アプラクサスさんも騎士団だからって特別扱いし過ぎです」


ここで「ふふ」と笑ったモバテが「ミチト君よぉ、まだまだ甘いって、あのアプラクサスがなんの考えもなく一騎士団員を甘やかすような事を言うかよ。勿論タシア君達は生まれた時から見知った孫同然だが彼は違う」と言う。


「モバテさん?アプラクサスさん?」

「ミチト君、あのナハト君は見事な広告塔になります。力を追い求める闘神の弟。そして今の剣も使いこなせるのなら最高です。見た目からも力強く見えます」


「は?何するんですか?」

「剣術大会を催したいと思いました。元々は構想でしたが先日の訓練を拝見して以来、実現に向けて考えています。

国内の力自慢が進む道を誤って悪の道におちるよりも剣術大会で所在を把握して、本人が望めば王都の騎士団、故郷を離れたくなければ領主に口を聞きます」


「え?そこにナハトを出すんですか?」

「はい。後はイイヒート・ドデモを考えています。シヤ君達が負けるとは思いませんが万一術人間が負けると困ります。そしてこの興行をウシローノ・モブロン達4人の術人間達に任せます。そうしてやれる事を増やします」


ミチトは聞きながら、ナハトが関わり、イイヒートが関わる。そしてライブが後援するとエーライの前で言ってしまった自身のスレイブ達の名前まで出されて行き青くなる。


「…それ、俺とライブも関わりません?」

「4人が困ればですね。是非ともご家族で観覧にいらしてください」


「場所は何処を?王都でやるんですか?」

「いえいえ、毎年やる必要もありませんから不定期開催にして、活気付かせたい土地があります。スカロ・サルバン。念話水晶をお貸しください」


アプラクサスは念話水晶を使うと相手も念話水晶を持ち合わせている人間で最初は丁寧な挨拶だったが「街を作ってください。剣術大会の開催地にします。宿屋と飲み屋、武器屋に道具屋、鍛冶屋くらいで結構、言うなればキャーラ家のブレイクポイントのような街並みで結構です。はい、大会中の収入は全て差し上げます。それも非課税としましょう」とアプラクサスが言うと「本当ですか!やります!やらせていただきます!ただ町の候補地は少し高台で整地が必要で!出来ましたら闘神の部下達をお借りできませんか!?」と聞こえてくる。


この声には聞き覚えがある。


「ロリーさんですか?」

「ええ。ロリー・ガットゥー、ここにミチト君が居ますよ?」


ロリーは「是非代わってくれ」と言うのでミチトが念話水晶を握ると「ご無沙汰しております!剣術大会はとても素晴らしいと思います!アプラクサス様のお考えも見事です。王都では物見遊山の輩が冷やかしに来ますがガットゥーでしたら本気の猛者しか来ません!是非ともガットゥーでの開催をお待ちしております!」と一気に言われる。


「あー…、ご無沙汰してます。高台の整地ですね。手配します。後は俺の家族も大会を見に行ったりするので宿屋なんかの方も力を入れて貰えますと…」

「任せてください!では早速計画に入りますね!」


ロリー・ガットゥーの話を聞いたシックとモバテは「…いやはや、有能だとは知っていたが物凄いね」「まったくだ、女当主を軽んじる風潮に一石を投じる存在だな」と言って喜んでいた。

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