第26話 リナとの野獣の日07。
サルバンに着くと何も言っていなかったのに使用人一同、トウテを巣立ったレオを含めたサルバン騎士団を立たせた中にスカロとヒノが正装で待ち構えて「ようこそおいでくださいました」「ようこそサルバンへ」と言っている。
ミチトが不思議そうに「あれ?なんで?」と言うと「ふふふふふ…」と笑ったヒノが「チャズ様たちがいらっしゃる事とかもう間も無く来る事とかは愛妹が教えてくださいましたわ」と言った。
そのヒノの顔はとてつもなく怖い。
パテラとノルアがは「ヒィッ!?」と言った後で「済まない!」「これには!」と言うが「訓練が大変で気が回らないとしてもサルバンとしてキチンと連絡くらいはしてくださいね」とヒノに睨まれて真っ白になっていた。
「それではお茶の用意が出来ております。訓練を見ながらでしたら訓練場になさいますか?」
スカロの言葉にモバテ達は「ああ、そうさせて貰う」「ミチト君、タシア君の訓練は期待していいよね?」「楽しみです」と言うとミチトは「ええ、期待してください」と言ってタシアに微笑みかける。
訓練場に行くと最後の20人抜きの前にタシアに向かって訓練をする。
「タシア、二刀剣術は皆の奴を放てる?」
「うん。イブお母さんのもライブお母さんのもアクィお母さんのも、後はメロのも放てるよ」
「うん。まあメロのは俺が教えた奴だけどね」
「お父さん?」
「まだ誰にも見せてない俺だけの二刀剣術…、タシアになら教えてもいいかなと思ったんだ」
この言葉に外野のメロが「え!?ズルいよパパ!!」と怒る。
「あはは、後で使ってみるのは良いけどタシア向きだから教えるんだ。レスタさん、防御頼めます?」
「ご指名ありがとうございます!自分がいかせていただきます!」
フル装備で前に出てきたレスタを見ながら「タシア、これは簡単な十連斬だ。剣の軌道を覚えろ、一刀目と十刀目以外は状況に合わせて好きに振るんだ」と言って剣を構えると右手は上、左手は下に構えて「二刀剣術!」と言って斬りかかった。
レスタも散々アクィやメロと訓練している事から二刀剣術はある程度防げる。
だがミチトは十連斬だが十で終わらずにそのままレスタが吹き飛ぶ三十連斬まで放った。
「レスタさん、ありがとうございました。レオ、ヒールをお願い」
ミチトはそう言いながらタシアの前に行って「今の連斬は見たね?特徴は?」と聞く。
「十連斬目の剣の終わりが右手は上で左手が下で再び休みなく十連斬が出てた…。イブお母さん達の連斬はどこから始まっても最後は両方とも下なのにお父さんの連斬は違った。だから休みなく撃てたんだよね?」
「そうだよ。でもこれはかなり力を使うからタシアじゃないとキツイよね?」
「うん。皆女の人だからだね」
「そうだよ。少し振ってご覧」
タシアは暫く基本動作を重ねて瞬間的に二十連斬まで放てたところでミチトが「レスタさん達はこのまま20人抜きの相手をお願いします」と指示を出した。
「タシア、必ず止めはこの二刀剣術にして、それが条件だ」
「え?これ?」
「ああ、だからサルバンで教えたかったんだ」
ミチトは言うだけ言うとシアとコードに課題を出しながら訓練場を後にしてリナの横で一緒にスイーツを食べる。
「スカロさん、これ美味しいですね」
「おお、やはりか!スティエットの好みに合わせてにんじんを練り込んだのだ!」
にんじん入りのケーキに喜ぶミチトにリナが「ミチト、タシアってどうなるの?」と聞く。
ミチトは嬉しそうに「多分、かなりキツいはずです。でもそれが狙いなんで追い込みます」と説明をしながらケーキをもうひと口食べる。
ミチトは本当に気に入ったスイーツはハイペースで食べるのでスカロは嬉しそうにそんなミチトを見る。
「あれ、そんなにキツイの?」
「いや、朝一番に教えてたら第二騎士団もカラーガも余裕でしたよ。でもここでやる事に意味があります。あ、スカロさんってシアの訓練見て貰えません?レイピアの二刀剣術をアクィに教わってたみたいで、でも手首の力が変に入ってるから今の訓練なんです」
「ふむ、あれはなんだ?しなる剣で土塊を切り裂くのか?」
「はい」
「成る程、自然に振るえないと切れないのか。任せろ。伴侶のヒノ、モバテ様達のおもてなしは任せたからな」
「はい、あなた。存分にお力をお振るいください」
スカロはタシアの訓練を名残惜しそうに見ながらシアの訓練に付き合う。
「ふむ、悪くない。だが少し手を出そう。まずは土塊に刃を通す訓練だ。ギリギリまで俺が手を添える。振ってみろ」
「スカロお兄さん?」
「ほら、早くしろ」
「はい!」
スカロが手を添えるとゆっくりとした動きなのに土塊に刃が入る。
「え?」と驚くシアに「刃筋を立てれば入るのだ。同じ速度で振ってみるがいい」と返すスカロ。
シアが1人で振るうと剣は土塊に入らない。
「え?」
「スティエットはその癖を直すための訓練をくれたのだ。それをこなせばシアの剣はアクィに匹敵する」
この言葉にシアが震えて「アクィお母さんと?」と聞く。
「アクィに匹敵する剣士になれる。しかもアクィは今も修練を重ねているのだぞ?シアは8歳でそれに並ぼうとしている。スティエットの血は恐ろしいな。だからやり切って見せろ」
「はい!」
この後もスカロはシアに手ほどきをする。
「よし!いいぞ!安心しろ!成長して背丈や手足が伸びようともメロのように修正はしてやる!安心して強さを求めろ!」
この言葉を聞いてモバテは横でお茶を飲むメロに「成る程、スカロ・サルバンも人を育てる才能があるんだな」と言うとメロは「はい。スカロお兄さんは身体に合わせた訓練を、パテラお兄さんは訓練を楽しむ心を、そしてママが貴い心を育ててくれました」と嬉しそうに答える。
「だがそれだと益々メロさんが強くなってしまってミチト君の出したメロさんと付き合える人はメロさんに勝てるひとだったから遠のかないかい?」
「ふふ。シック様、ありがとうございます。大丈夫です。今は家族で居られることがとても嬉しいんです」
この及第点の答えに一瞬殺気をだしたミチトは笑顔に戻ると横のリナが「ミチト、いい加減にしなさいよ。私達が早くに親元を離れて苦労したり、イブとライブを老化させてしまったことを気にしていてメロだけはって思っていてもやり過ぎだよ」と注意をする。
ミチトはそこら辺を口にしないからモバテ達は初耳で成る程と納得をした。
「ならアプラクサスとシックから聞いたが子離れの第一歩で別荘の建て替えからだな」
この言葉にリナが「モバテ様?」と聞き返す。
「リナさん、あの別荘に家族15人は手狭です。それにメロさんももう18歳。いくらミチト君といる事が幸せでも寝所なんかは分ける必要があると思ってライブさんといる時にご提案させてもらったんですよ」
モバテ達の提案は全部何から何まで国が金を出す。
それがわかっているので申し訳ないとリナが「アプラクサス様、そんな…」と言うとモバテが「大丈夫。気になるようならミチト君には頼みたい仕事があっただろうアプラクサス?」と言った。
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