第24話 リナとの野獣の日05。

サルバンの訓練内容を話した後でアルマとマアルがミチトの前に来て「闘神様!お願いがあります!」「私達を鍛えてください!」と言った。


ミチトは物凄く困った顔で「ええぇぇぇ?」と言うとアルマとマアルは「ダメ…ですか?」「私達は無能ですか?強くなれませんか?」と言って泣きそうな顔をする。


ミチトは慌てて「いや…そうじゃなくて…」と言うとパテラは「なら何なのだスティエット!何を拒否する!」と聞く。


パテラの問いにミチトが「サルバン流はキツすぎるし見た感じカラーガの訓練でいっぱいいっぱいみたいだから追い込みたく無い…」と言って説明をする。

確かにカラーガの訓練がキツいのにサルバンの訓練など以ての外で、そもそもイイヒートのようにまだ手足が伸び始めていればいいがアルマとマアルはまだそこまでいっていない。

今サルバン送りは毒にしかならなかった。


「ふむ、ならまずはやれるかどうかから入らないかいミチト君?」

「シックさん…、それ何とかしろって奴ですよね?」


シックが出てきてもごねるミチトを見ながらモバテが「ならこうするか。サンクタ・カラーガ。制限時間内に鍛えて貰ったり指針を貰うと言うのはどうだ?勿論お礼は必要だ」と言う。


「チャズ様?」

「簡単だ、リナさんとメロさんとシアさんにミチト君好みのドレスを用意する。仕立ての間だけアルマ・カラーガとマアル・カラーガはミチト君の指導を受けられる」


闘神の指導がドレスで受け入れられる。

サンクタには信じられなかった。

だが、それで受けられれば娘のノルアのように強くなれるのであればサンクタは「それで良ければ喜んでお願いしますが…」と言うと、ニヤッと笑ったモバテは「ミチト君よぉ、それを着てサルバンに降り立つ3人はさぞかし綺麗だろうな」と言った。


ここでアプラクサスとシックも黙っていない。「ああ、スカロ・サルバンが見惚れてしまうでしょうね」「確か晩餐の後は別荘だったね。リナさん、とても美味しい果実酒が手に入りましたので別荘までお届けしますよ?是非ミチト君と飲まれては?」と続く。


こうなるとリナにかかってくる。

リナが言えばミチトは大概の事を拒絶しない。

だがリナ経由のミチトへのお願いが常態化するのはよくないので「ミチト、どうする?」と聞く。

あくまでリナは聞くだけで決めるのはミチトの流れは崩さない。


「リナさん、ドレス着てくれる?」

「うん。着るよ」


「お酒飲んでくれる?」

「うん。飲むよ」


どんどんと表情が明るくなるミチトは「やりましょう!何してもいいんですよね!」と言って立ち上がった。



だがそうなると今度は娘のシアが不満を口にする。

花より団子、団子より訓練のシアは「お父さん、ドレス貰うのは嬉しいけど私の訓練は?」と聞いてくる。


「ああ、シアには凄いの考えてあるから採寸させて貰ったらすぐに訓練に戻っておいでよ」

「やった!」


このやり取りでシアが上機嫌になるとナイワがミチトの前まで来て「スティエット様、私の見立てだとスティエット夫人とシア嬢とメロ嬢のドレスをお揃いにしたらすごく可愛いと思いますわ」と言うとミチトはリナとメロとシアを見て「……お揃い?リナさんとメロとシアが?」と聞き返す。


「はい!どうでしょう?」

「いいですね!それでお願いします!」


「なので…うちのアルマとマアルの実力を伸ばす訓練はとびきりのものをお願いしたいんですけど」

「余裕です。もう考えました。アルマ君は剣士を目指すでしょうから体を壊さない範囲でサンクタさんに近い剣をプレゼントします。マアルさんは術の素質を感じるので少し面白い事をします」


食後、とりあえず採寸に行ったリナ達が戻るまでの間に先にやれる事としてマアルに基本的な術を教えてしまう。

通常のミチトはあまりやらないが今日ばかりはドレスの事があるので伝心術で術を教えるとマアルはファイヤーボールなんかの基本の術はすぐに使えるようになった。


ミチトはそのままインパクト系の術も教える。

これだけでサンクタは大喜びをするが「マアルさんに弓矢を勧めたいんですけどいいですよね?」と提案をする。


これを聞いたモバテが「ほう…ミチト君は弓矢も使えるのか?」と言う。

「いやいや、俺は使えないですよ。昔のチームで弓使いが居てフォローしていた経験があるのでポイントは説明出来ます。正しい弓矢の撃ち方は俺が帰った後にでも誰かに聞いて貰えばと思います」


ミチトは手始めに弓を射らせてみる。

普通に前に飛ばすことが出来たので「うん。今日はそれで十分だよ。後日術無しの弓はサンクタさんに相談して先生を見つけるんだ」と説明をして「俺が教えるのはコレ、射ってみて」と言う、



マアルが矢を放つとミチトは風の術で加速と軌道修正をして離れた的の中心に矢を当てる。


「今日は術で矢を放つ訓練をするんだよ」

「はい!」


「後はコレ」

ミチトはそう言うと矢を放つ時にインパクト系の術を載せて火炎矢や雷撃矢を生み出す。


「とりあえず風の術は教えたから撃てるよね?ここから的まで矢を飛ばす練習だ。何回でも撃つんだよ」

「はい!」


マアルが矢を撃って風の術を行う同時の作業に四苦八苦している中、ミチトはアルマを呼んで「さあ、剣を作ろう」と言って身体に合わせた長剣を作っていく。

確かに筋は悪く無いが故ナイライ・カラーガ止まりの内容にミチトは少し困って「サンクタさん、腕輪あります?」と聞く。


「闘神様?何をなさいますか?」

「んー…、訓練量の底上げとかですね。ただ最初はかなりキツい訓練になりますけどやれますかね?」


ミチトの心配そうな声にサンクタはアルマを見て「アルマ、お前はカラーガだ。できるな?」と聞く。アルマは生唾を飲み込んで「はい!」と返事をした。


「じゃあ腕輪作るから見本貸してください」

ミチトはさっさと腕輪を作るとアルマの腕につける。


途端に動きの良くなったアルマにサンクタが目を丸くするので「簡単に言えば今は腕輪の力で身体強化を行なって無理矢理才能を引き出してます。でも反動がキツいので外した後とか明日なんかは地獄の筋肉痛です」と説明をする。


「…では…」

「はい。最終目標は腕輪なしで今くらいまで動けるまで身体を追い込みます。まあナハトみたいに身体壊さないように抑えめにしてるから大丈夫だと思いますよ」


ミチトの説明にサンクタはアルマを見る。

アルマは今までの自分とは違う動きに感動して力強く素振りをしている。


「タシア、悪いけど俺とやった訓練みたいにアルマ君と撃ち合い頼める?必ず同じくらいの力を意識して倒さず、倒されずだよ?」

「うん!やってみるよお父さん!」


タシアとアルマが剣同士の撃ち合いを始めるとミチトは「よし、じゃあコードとは少しだけ術の訓練をしてからだな」と言って末息子のコードの元に行く。

コードもベリル同様にミチトと繋がるとサンダーデストラクションなんかの術が放てた。

本人も感動はしたが「お父さん、僕1人でうまくやれる気がしないから剣と拳がいい」と言う。


「おお、偉いぞコード。でも今は単独でどの術が使えるかはやろうね」

そう言ってヒールなんかを使わせると使える。

身体強化もやれたのでたいした使い道はないが訓練としては使いやすい無限機関を教える事にした。


「あ、前にイブお母さんが見せてくれた奴だ」

「あー、イブとライブも使えるよね」


「これ、僕もやれるかな?」

「やれるよ。今のコードは軸がブレるから真っ直ぐ無限機関が放てるようになれば実戦では使えないけど実戦の実力は上がるよ」


「うん!それがいい!もう一度よく見たいからお父さん見せてよ!」

「ああ、見てろコード!無限機関!」

コードは中々軸を揃えられないが無限機関そのものはなんとかやれるようになった。

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