第22話 リナとの野獣の日03。

その後は30分してパテラが200人を倒して訓練が終わる。

ボコボコでボロボロの…敗残兵以上にボロボロになった第二騎士団は第三騎士団に任せるのは申し訳なくてミチトがさっさと治して礼を告げる。


そして逃げるようにカラーガの屋敷に飛んだ。


待っていたメロとアルマとマアルがモバテ達に挨拶をした後で「サンクタ様は訓練場、ナイワ様がイシホお姉ちゃんと一緒にお母さんとするお茶の用意」「それで僕とマアルが」「皆さんのお出迎えです」と言う。


パテラは200人抜きのせいで野獣化していて「挨拶よりも敵だ!対戦相手を俺にくれ!」と叫ぶ。知らない人が見たら奇人にしか見えない。

そこにミチトが猛獣使いのように「パテラさん、挨拶できない子はサルバンに帰しますよ!」と言うと、パテラは身体をビクつかせて「ぬぅ…。すまぬスティエット」と言った後でアルマとマアルに「久しいな弟と妹よ」と言った。


このやり取りに呆れたメロが「もう、パテラお兄さんは何人?」と聞く。


「おう!200だ!」

「おお!凄いね!」


そんな事を言いながら訓練場に向かうとお茶の席と対戦相手達が準備万端で待ち構えていた。


たぎるパテラにミチトは待てと言って皆に挨拶をしてからタシア達を前に出す。

結構な人数で「あー…?何人います?」と聞くとサンクタが「今日は300だ」と答える。


「おお、じゃあタシアとシアとコードで100ずつやりなよ。その後でノルアさんとナハトね。パテラさんは300やります?」

「応!」


ここで名前を呼ばれないメロが「パパ、メロは?」と聞く。


「やりたい?」

「やりたいよ!」


確かに我慢出来ない顔のメロにお預けは厳しいので「んー…、じゃあパテラさんの300を取り上げて…」と言うとパテラがこの世の終わりのような顔で「何!?」と言うが、直後に「メロと同時にスタートしてどっちがより多く倒せたかやりましょうか?」と提案をするとメロとパテラは顔を見合わせて「ふふ…ふふふふふ…それはいいなスティエット!」「パパ…メロ勝つよ!」と燃え上がった。


これにはカラーガ騎士団は目を丸くする。

そして若干6歳のコードが破竹の勢いで勝ち進んで行く。


「お父さん!ここの人達さっきの第二騎士団さんより強いよ!」

「そうだね。まあ流石に疲れたかな?」


ここでパテラが「コードぉぉっ!ようやくお前の訓練はスタート地点だ!今からが強くなれる時間!そこからが伸び代だ!本気で挑め!悔し涙を思い出せ!全てを曝け出して勝ちに行けぇぇっ!」と声援を送る。


「え!?パテラおじさん!本気出していいの!?訓練は?」

「それは第二騎士団とやった!カラーガ騎士団はまた別の訓練だ!ヘトヘトのコードが本気で挑む!それこそがこの訓練の意義!スティエットに感謝して本気になるんだ!」


コードは辛そうにしながらも41人目の対戦相手に勝つと「じゃあ…ちょっと待って!」と言って「メロ!僕の手甲出して!」と言った。


メロは不服そうに「えー?もうパパに見せるの?」と聞くとコードは「うん!パテラおじさんの言う通り本気出すよ!」と言う。それは子供の戯言に思えないコードの言葉だった。


ミチトは「手甲?」と言いながら見守るとコードは「お父さん!剣の鞘も出して!腰に付けるんだ!」と言う。


メロから「カラーガ騎士団は二刀剣術だけで勝ちなよぉ」と言われながら手甲を渡されるとコードは「…んー…じゃあ最後の10人は手甲にする!」と言い、ミチトから鞘を貰いながら「その手甲どうしたの?」と聞かれる。


コードは満面の笑みで「エクシィ爺ちゃんが作ってくれたんだよ!」と言う。

その手甲は一般的なものを子供サイズに仕立て直してあった。


「お待たせしました!お願いします!」

コードは止まる事なく加速をすると二刀剣術も駆使して80人目まで倒す。

だが流石に腕が重く、剣が一瞬で振れなくなると剣を鞘にしまって手甲に替えて「よろしくお願いします」と言った。


コードの構えはサマになっていて隙はない。

それどころか小さな身体がより小さく構える事で狙いが難しくなる。


「へへ、メロとママとソリードお婆ちゃんの所に行って仕込んだんだよ。コードってさ、すぐに剣を持つの疲れるってボヤくんだよね」

「マジか…。でも子供達の訓練って見張ってたけど…」


ここでメロが自慢げに「ママとメロで認識阻害してるんだよ〜」と言って笑い、ミチトは呆れながら「そこまでする?」と突っ込んでいた。



結局コードは古参のシャーリーも倒して100人抜きを果たす。


「お父さん!さっきと合わせて190倒したよ!」

コードが笑顔で飛び込んでくるとサンクタ達は耳を疑い、お茶を飲みながらスカロのスイーツを食べるリナ達から嘘一つない事を言われる。


「ちなみにタシア君はここを勝ち抜ければ200、シアさんも200ですよ」

「ナハト君にノルア嬢もだね」

この言葉にサンクタが「…レイカーは実力者ですがノルアも?」と驚く。娘のノルアは結婚前はやれて30人くらいだった記憶がある。


「サルバンの日々が功を奏したんだろうな」

「…はは…そうですか…」

サンクタの言葉にリナが「パテラさんはここで仮に300を成していたら王都と合わせて500でしたよ」と説明をする。


常人のリアクションが楽しくなっているリナはサンクタが「す…スティエット夫人?」と聞き返すと即座に「本当です」と言った。

うろたえるサンクタにシックが「まあパテラ・サルバンが異常なのかもしれないからカラーガは普通で構わんよ」と言って落ち着かせていた。



アプラクサスが「所でリナさん、今回はコード君が1番でしたね」と言うとリナは「ええ、コードは本気を出しましたから」と返す。

この言葉にモバテが「待て、じゃあタシア君やシアさんは…」と口を挟むとリナは「まだ二刀剣術すら放っていません」と言った。


この会話をアルマとマアルは目を見開いて聞いていた。



シアは「ダメだー…パテラおじさん!私も二刀剣術解禁していいかな?」と聞きながら70人目を倒す。


「よぉぉっし!行けシア!」

シアは気持ちよく返事をすると「ごめんなさい!撃ちます!」と言って二刀剣術を放つとイブ式にも関わらずアクィが放つような二刀剣術であっという間に100人抜きをした。


ミチトが「ナハト!ノルアさん!」と言って送り出す中、シアが「お父さん!見てくれた?」と言って飛びついてくる。


リナによく似たシアを見て「うん。すごかったよ。でも戦いより料理とか…マナー」と言うが最後まで言う前に「今はまだ剣だよ!料理はお父さんもお母さんも教えてくれるから明日沢山作ろうね!」と言われて目尻を下げて「うん。作ろうね」と言ってしまう。


タシアは二刀剣術すら封印した豪剣による正攻法で兵士を斬り伏せて100人を倒し終えると「ふぅ、ありがとうございました!」と溌剌とした笑顔で感謝を告げた。


「お父さん!どう?」

「流石だね。後で本気のタシアが見れる事を期待するよ」


「お父さんが相手してくれる?」

「そうだね」


その言葉に喜んで飛び跳ねながらリナに手を振るタシアはお茶に合流してスカロスイーツを貰ってニコニコとしている。


「おいおい…余裕だな」

「タシア君、お身体は辛くないですか?」

「はい!まだ大丈夫です!まだ僕は子供だからパテラおじさんのサルバン大人訓練を受けられないから頑張ってパテラおじさんのお許しを貰えるようにいつも頑張っています!」

タシアの言葉にシックが「イシホ嬢?タシア君のは…」と聞くとイシホは頷いて「はい。ここだけの話です」と返した。


タシアは大人向けの訓練すらパテラの「子供向け」を信じていていつか受けられる大人向けの為に訓練は怠らない。


大人の部も問題なく進む。

3年前は99人抜きを達成したナハトは余裕で久しぶりの同僚を蹴散らして、ノルアも弱くは無かったがとても100人抜きを達成出来るとは思えなかったのにカラーガにいた頃は使わなかったロングレイピアを使いこなして行く。


それでもポテンシャルの問題で100人目のターネと呼ばれた兵士と引き分けてしまう。

ターネはガタイのいい大男で相性もあるがロングレイピアを弾かれてインファイトで引き分けたノルアは悔し泣きを堪えてパテラの前に立つと「パテラ様!気合を入れてください!」と言い、パテラも「惜しかったが実戦なら死んでいた!この痛みを忘れるなノルアぁぁっ!」と言って思い切りぶん殴る。


それも義理の両親、義理のきょうだい。

使用人や元同僚の見ている前でだ。


訓練場を吹き飛び転がるノルアにアプラクサス達がドン引きする中、ノルアは紅潮した顔で「サルバンの20人抜きでは遅れは取りません!」と言ってパテラも「よぉぉっし!よく言った!俺が至らぬ時は頼むぞ!」と言って抱きしめ合う。


メロが「ノルアお姉ちゃん、サンクタ様達が見てるよ?」と言いながらヒールを使うとノルアは自慢げに父と母に「パテラ様はいついかなる時も全力で私を愛してくれるのです!父上と母上の前で強くなった姿を見て貰えて感無量です!」と報告をする。


娘が常識を手放して遠くへ行ってしまったショックでサンクタが「ノルア…お前…」と言う中、ナイワは「あら、おめでとう。幸せそうでお母さん嬉しいわ」と微笑む。

その横でアルマとマアルはスカロクッキーを口からこぼしていた。

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