第21話 リナとの野獣の日02。

手始めに第二騎士団に顔を出す。ここ数日の第三騎士団の壊滅具合と第一騎士団の壊滅具合を知っている第二騎士団は遂に自分たちの番が来たと覚悟を決める。


「えーっと、第二騎士団の皆さんにはうちの子供達と、俺の弟と…」

「スティエット!俺は!?」


「パテラさんもですって…、勝ち抜き戦をしてもらって全員倒すか負けた段階でカラーガに行ってカラーガ騎士団と勝ち抜き戦をして、その後はサルバン第一騎士団と勝ち抜き戦です。なのですみませんがさっさと進めますがお付き合いお願いしますね」


この言葉には第二騎士団だけではなくモバテ達からもどよめきの声が起きるが「平気ですよ。ヘトヘトの中でサルバンと戦えばきっと無駄な動きが無くなって最適化も出来ます」と笑うとパテラが「それだぁぁっ!ずっと気になっていた訓練だ!ノルア!俺たちに必要な訓練が見つかったぞ!」と喜ぶ。


「確かに!サルバンの訓練では物足りなくてどうするか悩みましたからね!これが答えですね!」

「ああ!スティエットにオーバーフローに連れて行って貰うべきか悩んでいたがまずはコレだな!」


2人で和気藹々と狂った訓練内容に紅潮するパテラとノルアを見てミチトは「マジかよ、イカレテヤガルよ」とツッコむとシックが「いやはや、頼もしいねパテラ・サルバン」と言い、アプラクサスが「それについていけるノルア・サルバンも頼もしいですね」と評価した。


第二騎士団は200人居たので50人ずつに分かれてもらって4人ずつ勝ち抜き戦をして行く。


まずはタシア、シア、コードとノルアだった。

勢い良く攻め込んでいく4人を見てパテラが「ぬぅ、俺はまだか?」と言うので、ミチトは「パテラさんは最後ですよ。ノルアさん連れてカラーガに行かないと頼みにくいからノルアさんを最初にしたんです」と言って事情を説明する。


「成る程な、所でイシホは連れて行かないのか?」

「あー、行くかな?」

イシホに聞くとウシローノはモバテの補佐の話をソコラーノに報告に行っていて一日フリーだと言うので連れて行くことにする。


「あ、先にイシホさん連れて行けば楽だな。メロ、イシホさんと行ってもらってもいい?」

「うん。パパ、ナノカもいいよね?」


「そうだね。ナノカさん、ナハトと離れてても平気だよね?」

「はい!」


この言葉でイシホ、メロ、ナノカは先にカラーガに向かう。


「こっちもそんなにかからないかな」

「ミチトはやらないの?」


「リナさんが見たいって言ってくれたらやるけど、今は子供達が大怪我をしないように見守るようにしてるんです。シアなんてメロから術を抜かしたみたいな戦い方をするから傷が残らないか心配なんだ」

確かに娘のシアはリナが戦うタイプではないのでメロ達に教わったせいで戦い方が良く似ている。なので生傷が気になってしまうのでリナも「そうだね。ありがとうミチト」と言った。



タシアが1番に50人を倒すと「タシア!シアが相手をしてもらった人達とやるんだ!シア!ペースを上げないとタシアに追いつかれるよ!ノルアさんは終わったらタシアの所!コードはノルアさんの所だよ!」と声をかける。


この指示にアプラクサスは「ミチト君…、シアさんは8歳…、コード君に至っては6…」と言いかけるがミチトから「俺とリナさんの子ですから平気ですよ」と一蹴されてしまう。


アプラクサスは最後まで言えずに青くなる。

はっきり言って成人男性ばかりの第二騎士団を1人でも倒せれば凄いのにそれをもうすぐ50人倒そうとしている。

一体どんな育て方をしたらこんな超人になるのか?アプラクサスがそんな事を思っている時、一緒に見守っていたリナが「ミチト…今思ったんだけどさ」と言った。


「何リナさん?」

「願いの具現化…してない?」


願いの具現化はミチトの真式としての力の一つで「こうなりたい」と強く願ったものが形になる。だからこそミチトは妻達に嫌われないために何回でも行為に及べるように無意識に願った結果、オルドスに言わせると性生活特化型の無限術人間真式と言われてしまっているし、真面目な話ではアクィとの娘のラミィは一度胎児未満の時に死んでしまっていたがミチトの願いを受けてこの世に生まれてきている。その他ではタシアが生まれてきた時には睡眠と休息を減らせるようにもなっていた。


リナの言葉でミチトは「あー、確かに。俺は強くなって貰いたいとは思わなかったけどタシア達の願いのままに育って欲しいとは思って望みました!」と言う。

それは全ての子供達に願っていたが、タシアもシアもコードも他の子供達よりほんの少し秀でている。それはミチトが無意識にリナとの子供に願った想いの差だろう。


「だから強いのかも、ラミィ達がヤキモチ妬くから黙ってよう」

「そうですね」


話しているとタシアがニコニコと「お父さん!100行ったよ!」と戻ってくるので「よし!タシアは終わり!こっちで休憩。ナハト!行け!」と指示を出すとナハトは剣を構えて「はい!」と言いながら前に出て行った。


タシアは汗を拭きながらリナに貰ったお茶を飲むとシックが「いやはや凄いねタシア君」と声をかける。タシアは褒められて嬉しそうに「ありがとうございますシックおじさん」と返事をする。その姿もまた理想の若者の姿でシック達は嬉しそうにタシアを見る。



ミチトは「タシア、サルバンで訓練した後でやれたのは流石だね」と褒めると今まで以上に嬉しそうに「へへ、ありがとう。お父さん」と言うタシア。

この言葉が信じられなかったシックが「サルバンで…訓練?」と聞き返す。

ミチトは自慢げに「あ、見ます?」と言いながら、合計40分の打ち込みの姿をモバテ達にも見せると「これで100人抜きしたのかよ…」「タシア君、物凄いですね」と感嘆の声があがる。


話している間にノルアが100人抜きを達成してパテラが入る。

第二騎士団も死屍累々だったが第三騎士団が援軍としてきていて治療を行ってくれている。

もう終了間近になっていたのでミチトは「あー、パテラさんだけ200で、まあ負けたらそこまでですよ」と声をかけると、パテラは嫌がることなく「何!?いいのかスティエット!うはははは!行くぞ第二騎士団!」と言って飛び掛っていった。


この姿にアプラクサスが「パテラ・サルバンはどんどん人間離れしていきますね」と言い、シックも「まったくだね」と頷いた。



シアは辛うじて100を突破したがコードは90で負ける。

悔し泣きをするコードにシアが「まったく、悔しいなら練習だよ。でも強いって、タシアだって6歳の時は50人くらいじゃない?」と声をかけるとタシアも「うん。100はやらせて貰えなかったよ」と続ける。


コードは涙目で「お父さん…本当?」と聞き、ミチトは優しい微笑みを浮かべて「本当だよ。さっきのサルバン訓練が無かったら勝ててたよ」と言ってコードの涙を拭いながら「でもなんで二刀剣術使わなかったの?」と聞く。

コードは悔しそうに「あると勝てちゃうからやめようってタシア達と決めてたの」と言うのでミチトは「マジかよ。凄いな俺の子供達」と言って驚いていた。


話のキリを見てモバテが「なあミチト君、一応この訓練を第二騎士団の目線で名付けるならなんにする?」と聞いてくる。ミチトは「報告書とかですか?」と聞くとアプラクサスが頷くので、「パテラさんは山賊、ノルアさんとナハトは脱走兵、俺の子供達は少年兵との対人訓練ですかね。仮に戦争とかになった時に子供の兵士と戦えないと負けますよ」と説明をするとモバテは「成る程な、採用だ。ありがとうよ」と言った。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る