第16話 ライブとの野獣の日07。

ミチトと繋がるのをやめていたので流石にサンダーデストラクションは放てないがジェードのイメージ通りに放たれたとしたらサンダーデストラクションは間違いなく目の前の騎士を黒焦げにして殺していた。


「ジェード!今何をやった!もう勝負はついていた!」

ミチトは蹲る騎士たちを無視して前に出るとジェードを怒鳴った。

その顔は父の顔だが同時に闘神の顔になっていてとても恐ろしいモノだった。


サンダーデストラクションを放てなかったジェードは手を見ようとした所でミチトに怒鳴られ、慌てて振り向くとその顔はとても恐ろしいもので「ひっ…」と言って顔をひきつらせた後で「お…俺…、パパに…」と弁明をはかろうとしたがミチトはジェードの言葉を最後まで聞かずに「サンダーデストラクションは命を奪う覚悟もないものが使っていい力ではない!」と怒鳴りつけるとジェードは泣いてしまった。


メロやウシローノ達は落とし所の見えない中どうするべきか悩んでいると第三騎士団を痛めつけて戻ってきたライブは惨状を見てメロから何があったかを見せて貰うと前に出て無言でジェードの頬を殴った。


突然現れた母も怖い表情で、今までもイタズラをしたりして怒られた事があっても無言で殴られる事は無かった。そして頭をはたかれたり尻を叩かれることはあっても平手とはいえ頬を殴られる事は無かった。


ジェードは言葉を失って「マ…」と声を出した瞬間、ライブは「このバカ!甘ったれるのもいい加減にしなさい!アンタがサンダーデストラクションを放てないのはアンタの心が備わってないからだよ!術が放てないから恥ずかしい!格好悪い?そんなのよりも今調子に乗って人を殺しかけたアンタの方がよっぽど格好悪いよ!」と怒鳴った。



ミチトだけではなくライブにまで怒られたジェードはどうする事も出来ずに走って逃げてしまう。


そのジェードは本気で泣いていた。

声を出さずに必死に我慢をして泣いて去っていくジェード。


ライブが間に入ってくれたらなと思っていたミチトはここで少しだけ怖気付いてジェードを案じてしまうが、その空気を察したライブは「ミチトは間違ってない。命を奪う覚悟も無いのに過ぎた力を使えば怒られるんだよ」と言ってイイーヨとイイダーロにサンダーデストラクションの指南を始めた。



「イシホ、アンタは指示出しの訓練、第一騎士団を上手く使ってメロと戦いなよ。ミチトはウシローノとベリルの訓練してあげて。私はイイーヨ達に教えながら第一騎士団の大将をやる」


そう言って訓練が再開されるとウシローノはミチトに「僕はジェード君に教わります」と言って去って行ってしまい、取り残されたミチトはベリルにフユィと同じ連斬の訓練を始める事にしていた。



ジェードはどこに行くことも出来ずに木陰で泣いていた。


昨日までの4人家族が一転して地獄になった。

だがなんで地獄になったかはわからない。

メロに色目を使っていた男どもを痛めつけて最後にはミチトとライブに褒められて有終の美を飾るつもりだった。


「あ、居ました!ジェード君!」

そう言って駆けてきたウシローノに「どうしたの?」とぶっきら棒に話すジェードだったがウシローノは「僕と訓練をお願いします!君こそ今の僕に必要な存在です!」と言ってジェードの気持ちなんかを無視して訓練を申し込む。



てっきり慰めなんかが始まると思ってい身構えていたジェードは呆気に取られて「え?」と聞き返すがウシローノは「あの戦闘力は凄かったです!僕は二刀剣術も放てません!一緒に訓練をしてください!」と再度頼み込む。


結局断れないジェードはウシローノに「でもさ、俺でいいの?パパとかママとかメロとかの方が良くない?」と聞く。


「いえ!僕のベストパートナーはジェード君です!ミチトさんもライブさんもメロさんも僕に合わせたトレーニングと言って僕の好みではないトレーニングを持ってくるんです!向き不向きなんかではなく僕のやりたい訓練に付き合ってくれるのはジェード君です!」

ウシローノは訓練はありがたいし何時間でも何日でも頼みたい。

でも誰に頼んでも自身が望む訓練はウシローノ向きではないと断られてしまっていて不服に思っていた。


「あ…そう?良いけど…何するの?」

「さっきの滑走術からの十連斬の流れは見事でした。アレを教えてください!」


「あれ…パパと繋がってたから出来ただけで俺1人だと出来…」

「試しましたか?試してないなら試してください!第一騎士団は戻りにくいから第三騎士団に行きましょう!」


ジェードの反論を認めないウシローノの圧に負けたジェードは「え!?ええぇぇぇ!?」と言っているがウシローノは「ほら!時間は有限ですよ!行きましょう!」と言って有無を言わさずにジェードの手を取ると第三騎士団の訓練場に向かう。


第三騎士団は敵襲にあったように壊滅していてライブとメロの暴れぶりに目を疑ったが団長になったグローキに訓練場を使いたいと言うと「ああ、午前中は皆屍だからいいよ」と言って貰える。


「さあ!やってみてください!」

ウシローノの視線に勝てないジェードは照れながら滑走術も軽身術も身体強化も使えて二刀剣術を連続して十連斬で放つ。


撃てたジェードすら驚きながら自分の手を見て「撃てた…」と驚く。

そこに飛んできたウシローノが「撃てましたね!さあそれを僕に教えてください!」と頼み込む。


だが、そうは言ったがウシローノは膂力の問題で剣が振り切れずに二度の六連斬で息切れをしてしまう。

これこそがミチト達がウシローノ向けの訓練を用意する要因だった。


ジェードもミチト達が何故ウシローノ好みの訓練をさせないのかを理解して「ウシローノさんはナイフにしようよ、俺も最初はナイフで練習したから滑走十連斬はナイフにすれば楽チンだよ。それなら疲れないからさ」と提案をするとジェードの前でも関係なく愕然とした表情で肩を落として「…悔しいです。この身体が憎い…。僕も皆と同じ剣で戦いたい…」と絞り出すように言った。


この言葉はジェードに突き刺さる。

ラミィ、トゥモ、ロゼを見て才能の壁にぶち当たった時、夢も見た。

ロゼはフユィと「ロゼはトゥモ達と同じか」と聞いた時に違うと言ったが違っていてもあの動きや気配は自分達よりトゥモ達に近い。夢の中でそのロゼはトゥモとラミィと共にミチトに勝負を挑んでミチトから余裕を剥ぎ取っていた。


溌剌としたロゼの顔とそれを見て愕然とするジェードをみてニヤリと笑ったトゥモの顔を見て飛び起きて1番に「悔しい…憎い」と思った。


そして今、ウシローノを見て何かに気がついた。


ジェードは思わず「同じだ。俺も悔しい。だからやれる事で強くなろう!出来ない事をやろうとしてる間にアイツら先に進むから追いつけなくなる!」と口から言葉が出た。

ウシローノはジェードの言葉にハッとなって「ジェード君…?アイツら?」と聞く。


「トゥモとかラミィだよ!アイツらアクィママから生まれたから術量多くてパパの術が撃てるけど俺はまだだから撃てない。けど撃てなくてもイメージは持ってたし、こっそりファイヤーボールを出してインフェルノフレイムの真似をしたよ!出来る事をやらなきゃ!」

この言葉はウシローノにとっても天啓だった。


「そうですね…。そうですよね!やりましょうジェード君!ナイフでの十連斬を教えてください!」

「やろう!」

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