第13話 ライブとの野獣の日04。
夜ご飯はモバテ邸になる。
モバテはライブの為に北部料理の店からシェフを呼び寄せる徹底ぶりだった。
ミチトは転移術を使おうとしたらジェードからダメ出しをされて「歩いて行こうよ!」と言われる。
「ジェード、アプラクサスさん達は馬車ならまだしも歩かないんだよ?」
ライブの言葉にもジェードはダメ出しで「今度は俺がアプラクサスおじさんと手を繋ぐ、ベリルはシックおじさんだよ!」と言って祖父に甘える孫のように「いいよね?手を繋いでモバテおじさんのお家まで歩こうよ!」と誘う。
「敵いませんね。それでは行きましょう」と言ってアプラクサスもシックも外に出て歩き始めてしまう。
これでまた闘神がアプラクサスとシックに子守りをさせて王都を練り歩いたと伝説に書き足されてしまった。
モバテ邸にはウシローノ達も来ていて明日の訓練にお邪魔したいと言う。
「まあ初日は収拾つかなくなるから我慢して貰いましたけど明日はよろしくお願いします。ただ行くのは第一騎士団です。モバテさん、ボコボコにして良いですよね?」
「ああ、よろしく頼む。第二もやるか?」
「んー…第二は第一より強いからタシアにやらせたいんでまた後日です」
「了解だ。アプラクサスに言ってくれ」
談笑の中、ジェードはモバテに甘えてみる。
正直、甘えたいが子供の立場としては1人が甘えると残りの子供達も甘えてしまって収集がつかなくなる事を考えると今までは我慢していた。
そんな事を知らないモバテは「ん?珍しいな。だが嬉しいぞ。私はどうしても目付きが悪いらしくて子供に怖がられるらしい」と言って笑う。
「怖いかな?ベリル?」
「怖くないよ。疲れてる風に見える」
ベリルの言葉に「なんだ、子供はよく見てるな。ありがとう。その言葉に元気が出たよ」と言って微笑みかけるモバテを見てライブが「モバテさん、どうしたの?」と聞く。
モバテはため息を一つつくと天を見て「いやはや、私ももう歳だしな、私のポジションを狙う輩は山程居るがドイツも腹の中は見せないし、口に能力が見合ってなくてな、そいつらにダメ出しするのも疲れたって話さ」と言って辟易とする。
「んー…?アプラクサスさん達はなんとかできるの?」
「私達は自分の仕事をやりきってモバテ様の負担を軽減する事しか出来ません」
「アプラクサスもシックも良くやってくれてるさ。それどころかこの2人も後継者問題が始まってるさ」
「成る程」
ライブのテンポが気になったミチトは「ライブ?」と声をかける。ライブは「んー…、ローサさんが最近モバテさん達も大変だから見かねたら助けてあげてねって言われたんだよね。これかな?って思ったんだ」と返事をしながらまた何かを考えて居る。
「助けるって…どうするの?」
「んー…、ウシローノ、イシホ、イイーヨとイイダーロ、こっち来て。ミチト、私達とモバテさん達をお城まで連れてって。すぐ帰ってくるからご飯はそのままね。アガットとドリータンは待っててね」
何が何だかわからないままにミチトは謁見の間に転移をしてエーライを呼ぶと「モバテ、私も行きたかったのに何故呼ばない」と文句から始まる。
「陛下、そうそう城を離れないでください」
「ズルい。もうリッパーに王位移そうかな…」
「まあそれは今度話しなよ。モバテさん、ゴチャゴチャ言ってる貴族呼んでよ」
ライブのお願いでリミール派やアンチ派、無派閥の貴族達が呼ばれるとライブがモバテに「この中に今すぐ後継者候補って居るの?」と聞く。
「いや、まだ実力も何も足らない。アンチ派の奴らはアプラクサス有利の事ばかりするだろうし、リミール派の奴らもシックに有利な事をする」
「ふんふん」
「無派閥の奴らもこれを機に新しい派閥を作る」
「成る程」
正直呼ばれた皆は来るとミチトとライブ。アプラクサス、シックなんかがいていい気分はしない。
「あなた達は我々を越えてモバテ様に声をかけていたのですね?」
「よくもまあ大それた考えを持ったものだね。我々は別に子供に跡を継がせたいとは思っていないが能力優先だよ」
アプラクサスとシックの言葉にモバテも頷く。
先が気になるエーライは「さて、闘神の妻よ。何を考えた?」と声をかける。
「え?陰でコソコソってのが好かないからご飯の最中に来ちゃったんだけどさ、ウシローノ、イシホ!アンタ達は2人でモバテさんの仕事のお手伝いをしながら仕事を覚えな!イイダーロがアプラクサスさん、イイーヨがシックさんだよ!1年で交代。3年経って全員が一周したらモバテさん達に誰がいいか選んでもらう。アンタ達がダメダメだったらそっちの貴族に仕事を叩き込んで貰う」
言い切ったライブは「どう?モバテさん?」と確認をする。
「…良いのか?」
「いいんだよ。ミチト、マスターとして4人に命令!」
「ウシローノさん達、やれる?」
「やります!」
「はい!」
「…やるよ」
「頑張ります」
4人のスレイブ達は真剣な表情で貴い仕事に力を振るう気になっていた。
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