第9話 アクィとの野獣の日09。

少ししてアクィ達がパンケーキを持って戻ると全員に振る舞う。

それは店で食べるものより格段に美味しい。


機嫌の直ったミチトは「アクィ、アクィとヒノさんも参加したんだよね?ノルアさんはフルーツ切ってくれましたよね?」と聞くと「ええ、兄様主導で私達も参加をしたしノルア姉様がフルーツカットと盛り付けをやったわ」と答えた。


「ヒノさん、少しファットマウンテンから取ってくるからこの場にいる人達の家族で来年の入学希望者は入学金半分免除にします?」

ミチトの意図を察したヒノは「ええ、構いませんわよ」と答える。


そのままでは終わらずに「我がサルバンのスイーツ学校の卒業生は主人ほどではないものの厳しい訓練を乗り越えた猛者達ですからお抱えのスイーツ職人に迎えたい方がいらしたら個別相談にも応じさせて貰います」と言う。


遠回しに「サルバンに逆らうと美味いスイーツ食べられなくなるぞ?」というもので、そこにアプラクサスが「スカロ・サルバン、ヒノ・サルバン、ハニートーストの得意な生徒は居ますか?」と聞くと「お任せください。パンに合わせた細やかな調理法、そして付け合わせのアイスクリームまで全て鍛えております」「アンチ領からの生徒もおりますので今度お会いしますか?」と返す。


ミチトはラミィに食べさせて貰いながら「まあサルバンの訓練はキツいですよね。一日中メレンゲを作らされて腕が紫色になる子とか居ますもんね」と会話に割り込む。

紫色の腕と聞いて周囲が引く中、取り繕う真似もなく極々普通に「ああ、それはトウテの孤児院から来てくれた子達やサルバン孤児院の子達がヒール治療をしてくれるからこそ出来る荒技だ」とスカロが言った。


やはりサルバンは危険集団だと思わせる事に成功する中、ミチトはヒノの皿を預かると「ヒノさん、懲りないバカが居るんで…頼めます?」と言って剣を渡す。


「懲りないバカ?」

「出入り口の所に出ますからね」


「何が闘神だってんだ…、宝石かっぱらって売り捌いて…あれ?ここどこ?」


ミチトが警告をしたにも関わらず、まだ泥棒がモンアードを目指していたのでミチトが転移をさせる。


「泥棒さんです。ヒノさん、ほら…スカロさんの後妻を狙おうとか言ってヒノさんを亡き者にしようとかいうのが出てきたらどうなるか見せてやってくださいよ」

「ふふふふふ…見せしめねミチト!」


「ちょっとミチト!ここで姉様にそんな事させたら…」

アクィは引き気味に言うがヒノは前に出ると「泥棒?愚かね。苦しみなさい。苦しんで悪事を働くとどんな目に遭うか鳴きなさい!」と言いながらあっという間に泥棒の関節を破壊してしまう。

そして剣を持ちながら「あなた…衰えてしまったわ。また訓練を頼めますか?」とスカロに話しかけるとヒノを単なる美女だと思っていた連中はこの姿に青くなる。



「お兄さん…、ヒノさんは前より強くなってますね」

「あれ?ナハトは前に教わったんだっけ?うん。ヒノさんは子供達やサルバンを守るって言って訓練してるから強くなったよね」


そんなやり取りで終わったパーティー。

アクィとメロでスカロ達を送らせる。


「ナハト、明日サルバンに連れてくから用意しておけよな。ナノカさんもキチンと用意しておいてね」

「はい!」

「え?私もですか?」


「あれ?行きたくない?でもナハト1人だとなんかあっても困るし」

「いえ!名前を呼ばれなかったので行けないかと…」


「いえいえ、どうぞ行ってきてください。後はノルアさんと一緒にお化粧とかスイーツの訓練も受けてきてくれるとナハトも喜ぶしね」

「はい!頑張ります!」


こうして1日目が終わると2日目はメロがナハトとナノカをサルバンまで連れて行く。


ミチトはメロにずっといようと誘ったが「ダメだよ〜。メロはお母さん達のお手伝いもあるしローサおばちゃん所にも行くんだよ〜」と言って帰ってしまった。


2日目は特に普通の一家として過ごす。

アクィがケーキを焼いてミチトが料理を作るとウシローノ達を招いて玩具御殿の玩具で遊ぶ。


3日目の最終日はアクィ主導で王都を散策して幸せアピールを欠かさない。

3日目の晩、アクィはミチトに「昔と違って殆ど無かったわね」と言う。

別荘はワンフロアのブチ抜きで不可能ではないが子供達が起きるか気にしながらするものではない。


夜中に目が覚めてと言うのはあったがたまたまでそれで丁度いい。

アクィが不満を口にしないように「別にいいだろ?」と言う。


「まあね。でもピンクの野獣はどうするのかしら?」

「ロゼが足腰立たなくなるまで訓練させて…とかかもね。まあヤレればいいけどね」

この時の言い方と声が気になったアクィが「ミチト?」と聞くとミチトは「ロゼはフユィ達に気を遣って自身が真式だとは言ってないからね」と言う。


ロゼは周りに気を使って真式である事を隠している。

だが若干7歳の男の子では子供達は欺けても大人には通用しない。

何気ない会話の中から答え合わせもできるし、きょうだい達が見ている所では絶対に正体を現さないように徹底していた。


アクィはそれを思い出して「あ、そうだったわね。あの子隠すのが上手いのよね。忘れてたわ」と言った。


「3日間はどうだった?」

「最高、兄様達の事もありがとう」


「俺も楽しかったよ」

「またしましょう?」


「ああ」

こうして最初の3日間は終わりを迎えた。

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