第7話 アクィとの野獣の日07。

モバテは話を聞きながら「ああ、あの受勲の時か…、それで現行犯逮捕を可能にしたと…」と言うとミチトが「はい!ゆくゆくは俺はトウテからやりますよ!そうしたら王都来ないで済むし!あ、今も1人入りましたからね」と言って天に向けた人差し指をクルクルと回す。


「王都を嫌がるなって」

「嫌ですよ。貴族はいるし、事件はあるし、安らぎはないし」


こんな会話の後で始まった晩餐会にはロキとマテとロードも来ていた。ちなみにウシローノ達は個別でミチトを招くからと抜けたシヤ達の代わりに第三騎士団に詰めていた。


「あれ?ロキさんだ」

「お疲れ様です。泥棒と強盗退治はありがとうございます。今聞きましたが泥棒は扉を開けて中に入ったら牢屋の中だったと泣いていたそうですよ?タイミングを伺っていたのですか?」


イタズラの顔で「ええ、面白いですよね。強盗も盗もうと獲物めがけて駆け出した時に牢屋の中です」とミチトが説明をしてロキが「…意地の悪い」とあきれ返る。


「そうですか?」

「そうですよ。ですが昼間は第三騎士団の訓練中でしたよね?」


「ええ、だからお行儀悪いけどながらです」

「…君、さっきナハト君から聞きましたがサルバン嬢とメロさんとラミィさんとフユィさんのサンダーデストラクションを相殺しながら二刀剣術を六十二連斬で放っていたんですよね?」


「ええ、その間も1人捕まえましたよ。俺は器用貧乏ですからそれくらいしますよ」

この言葉にロキは意見を諦めて「そうですか」と言う。そして深呼吸をすると「さて、一つ頼まれてください」と続けた。


ものすごい表情のミチトは「え?何するんですか?嫌過ぎますけど、だから王都は嫌なんだ」と漏らすとロキの頼みはヒノをこの場に呼ぶ事だった。


それは必要なことだと思って居るミチトは「成る程、スカロさんが居るのにヒノさんが居ないのはダメですよね。アクィ?フユィと行ける?」と聞くとアクィは「ええ、任せなさい」と言って消えた。



アクィが消えて少しするとドレス姿のヒノが現れる。

モバテはそれも見越していて料理を多めに用意していた。


「姉様はこうなる事を見越してドレスを着ていたわ」

「…ロキから言われたのよ」


むすくれたヒノはフユィに「ヒノ姉様綺麗!」と言われて目尻を下げて「ふふ、ありがとうフユィ。今日はお揃いの青いドレスね」と言うとスカロの横に立って「あなた、訓練は如何でした?」と良妻をやり。スカロは演技とわかっていてもヒノが話しかけてくれるのは嬉しいので「問題ないぞ。伴侶のヒノ」と言う。


「まあ、それは良かった。闘神の弟さんはどう?」

「うむ、パテラがサルバンに連れて帰りたがっていた。剣はキチンと基本動作を叩き込んだぞ」


「あら、素敵ですわ。是非いらして貰いましょう?」

微笑ましい一幕を完璧に演じるヒノにスカロは嬉しさもあるが申し訳ない気持ちになる。

ミチトは外交面はアクィとメロに任せてパテラ達と食事をしているとロキが申し訳なさそうにパテラに声をかける。


「どうしたディヴァント殿?」

「パテラ殿、そろそろ跡取りを…王都ではスカロ殿とパテラ殿、それぞれの奥様方に身体的問題があるのではと言われ始めています」


ロキの申し訳なさそうな顔に事態の面倒臭さを感じたミチトはその場からアプラクサス達に確認をするとキャスパー派の残りカス達が妾としてでも娘なんかをサルバンに嫁がせようと画策していると言う。


パテラとノルア、スカロとヒノの仲は決して悪くない。

仲が良すぎてこうなっているので面白くないミチトはロキに向かって「ああ、アイツとアイツ、それとアイツがゴチャゴチャ言ってるんですね」と言ってチラチラとコチラを見てきているキャスパー派の残りカス達を指差して言うとパーティー会場は凍りつく。


ロキが慌てて「ミチト君!」と止めるがミチトは苛立っていて止まらない。


「パテラさん、スカロさん、今日のお礼とこの先のお願いのお礼です」

立ち上がったミチトの顔は正義の悪魔になっていてアクィとメロは「やっちゃいなさいミチト!」「いいぞパパ!」と言っている。


ミチトはスカロとヒノを呼ぶとパテラとノルアの横に並ばせる。

スカロ達もこの顔のミチトには変な意見はしないで素直に従う。


「ナハト!来い!」

「はい!」

ミチトは闘神の家族として参加させられていたナハトを呼ぶと「今日の訓練はどうだった?」と聞く。


「新発見でした!スカロ様の剣技、パテラ様の勢い、どれを取っても新発見です!パテラ様と訓練をするとキツいのに副団長と訓練をするときのような楽しさもあって、それで何よりナノカと話したんですけどパテラ様は奥様のノルア様にも遠慮なく訓練中は殴りつけるんです!感動しました!そして訓練後にはキチンとケアをされていました!」


「そう、またやりたい?」

「はい!」


「四つ腕魔神の剣はスカロさんにもっと教えて貰いたい?」

「はい!」


「サルバンの訓練は第三騎士団よりエグいけどやれる?」

「お兄さん?」

ここでナハトは訝しむがミチトはそれを許さずに「やれる?」と聞くとナハトは「やれます!」と言い切った。


ニヤっと笑ったミチトは「よし、スカロさん、パテラさん、ナハトを半年で千クラスのオーバーフローを単独で生き残れるように鍛えてください」と注文を出す。

パテラは昼の願いが天に届いた気持ちで「何!?いいのかスティエット!」と喜び、スカロは訓練の過酷さに「…やれと言われればやるが…」と言う。


「ヒノさん、スカロさんはヒノさんが領地運営してるから遠慮して子供の事とか我慢してますけど子供居ても平気ですよね?」

「勿論、主人は私を愛してくれていて過保護で困るわ」

ヒノとしてはここでさっさとスカロを納得させたいし、ごちゃごちゃ鬱陶しいのも好かないのでミチトの話に乗る。


「ナハトを面倒見てくれる関係で定期的にメロを通わせますから妊娠しても体調面は心配無用ですよね?」

「あら、そうしてくださると助かるけど、忙しい姪御に頼りっきりなのも悪いわね」


「いえいえ。メロ、ナハトを痛めつけながらヒノさんのケアも出来るよね?」

「はい!御父様!」

メロもここぞとばかりに話に乗り、キラキラとした笑顔で答える。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る