第3話 アクィとの野獣の日03。

フユィに出した訓練は好きなタイミングで好きな八連斬をミチトに撃ち込むもので、ミチトはその全てを同じ動作、同じ威力で打ち返すという物だった。


轟音と共に火花散る中、フユィは嬉しそうにイブ式を放って打ち返されるとアクィ式を狙い、ライブ式に切り替える。


それは見ていたメロが羨ましがる程で、初めは硬かったフユィの動きが和らいでくるとミチトは「いいぞ!まだ撃てるな!?」と聞く。


溌剌としたフユィの「うん!撃てるわパパ!」と言う声にミチトは「なら数を増やせ!二刀剣術を理解しているフユィならその歳で10は撃てる!やってみるんだ!」と返すと6回程失敗したがメロ式で十連斬を放つとその後は全員の方式で十連斬を放ってみせた。


その時間は30分で、フユィのポテンシャルの高さが伺えた。


訓練後、フユィの腕は真紫になっていて内出血の酷さが伺えたがキラキラと眩しい笑顔で「パパ!撃てたよ!ありがとう!」と言う。


「うん。流石だね。まだやれるね?」

「え?いいの?」

まだ他の家族も待っているのに自分の番がまだある事に驚くフユィ。


「いいよ。まず少し話をしよう。アクィ…ママが術使いになれたのはラミィを産む少し前だよ。それまでは術無しで戦っていた。今のイイヒートさんみたいなものだね」


この説明でフユィはイイヒートを見るとイイヒートはもう1時間近くパテラと乱打戦を繰り広げながら全員の訓練に目を配っていてパテラからは「ぬぅ!見事だイイヒート!」と言わせている。


「そして、フユィはラミィやトゥモを気にしすぎだよ。ほら」

ミチトはフユィの頭に手を置いてヒールの知識を与えると「使ってご覧」と言って紫色になった腕にヒールを使わせると紫色はだいぶ落ち着く。


「あ…できた…」

「そうだよ。フユィはキチンと魔術の才能があるよ。身体に魔術が足りないだけ、ラミィ達は多いから撃てるんだ。焦ることはないよ」


「本当?」

「本当だよ。じゃあ…そうだな。オーバイ、ちょっと来て」


ミチトはオーバイを呼ぶと直結術を授けて「ごめんね、フユィの術負担を代わって」と頼むとフユィとオーバイが手を繋ぐ。


フユィの意思で今のフユィでは到底放てない氷結結界をシヅの足元に放った。


「出た…パパの氷の術」

「うん。初めてにしては上手いね。もしかして普段から撃てたらってイメージしてたかな?」


「うん、ラミィが撃つのを見て撃ちたくて眠る前とかに頭の中で練習してたの」

「偉いなぁ、熱心だね。身体が大きくなって術が貯まれば撃てるからね。焦ることはないよ」

この言葉に救われた顔のフユィが「ありがとうパパ!」と言う。


「じゃあ腕はパパが治すから今度はママ達と訓練出来るね?」

「うん!」

フユィがアクィの胸に飛び込んだ時、スカロと訓練をしていたナハトがフユィに頭を下げて訓練を頼み込む。


「おじ様?」

「ごめん!さっきお兄さんとやってた訓練なんだけど、僕はあれを防ぎたいんだ!頑張って防御するから色んなパターンを放ってくれないかな?」


「私でいいの?」

「ダメかな?」


「ううん、やらせて貰います!」

フユィが六連斬から十連斬を放つのをナハトは大剣で防いで色んなパターンに備える訓練をしていく。


「ごめん!次は3連続で好きな数を放って!転がっても気にせず撃ち込んで!」

「はい!二刀剣術…八連斬!六連斬!十連斬!」


フユィはナハトが必死に防ぐと横に回り込んで更に六連斬を放つ、そして防ぎきれずに倒れ込むとそこに十連斬を叩き込んでいた。


ミチトはそれを見ながら次かな?と言ってトゥモに声をかける。

トゥモ達の訓練も怪我なく終わっていて、いい経験になったのだろう。ニコニコとしている。シヤは流石に幼いとはいえ真式を2人同時に相手するのは骨が折れたのだろう。

訓練場の端で休憩していた。



ミチトはトゥモの前に立つと「トゥモは何がいい?」と聞くとトゥモは真面目な顔で「…いいかな?」と返してくる。


「何?」

「サンダーデストラクションの乗っ取り方を教えてよ」


「えぇ…、この前乗っ取ったのを根に持ってるの?」

「パパには勝てなくてもやれるようになりたい」


「んー…まあいいかな。でもシヤは手加減できるタイプじゃないからなぁ…。仕方ない。シヅに授けるか…」

ミチトはシヅにシヤが考え出した術人間でも放てるサンダーデストラクションを授けると早速使わせる。


ミチトはトゥモにそれを見せた後でメロ、ラミィ、アクィ、シヤのサンダーデストラクションを見させてシヅとの違いを見させる。


初めは理解できなかったが最終的に理解したトゥモはシヅのサンダーデストラクションを乗っ取ってシヅの足元に落とすと満面の笑みで「パパ!出来たよ!ありがとう!」と言って抱きついた。


「いやいや、トゥモも強くなったねえ」

「へへっ、パパの子だからね」


必死に回避をしてヘトヘト顔のシヅは「マスター…なにあれ…エグいってば」と言って倒れ込んだ。



ラミィの訓練はメロと2人でミチトを倒したいというものだったが、真式のラミィは模式のアクィをバカにしている節があるのでメロの機転でアクィと組ませてみる。


初めこそアクィを見下して率先していたがアクィがラミィを見事にフォローしてラミィ1人ならば負けるタイミングでもアクィが引っ張って持ち直す。

そしてミチトは容赦なくラミィを潰しにかかるがアクィが母としても剣士としても術人間としてもそれを許さない事で最後には心からママと呼んで頼っていた。


アクィはそれがわかって心から喜んでミチトに向かって本気を出す。


「ラミィ!パパに向かってサンダーデストラクション!ママも放つ!パパの辛いタイミングで前に出て二刀剣術よ!」

「わかりました!撃ちます!サンダーデストラクション!」


「ちっ、嫌なタイミングで撃つ…だが甘い!アースランス!」


ミチトは降り注ぐ雷の筋1つも漏らさずにアースランスで受け止めて相殺していく。


「究極の無限術人間の力…身を持って思い知りなさい!サンダーデストラクション!」

「舐めるなアクィ!」


ミチトがその全てをアースランスで防ぐ中、ラミィの耳にある言葉が聞こえてきた。


「メロ姉様!手が足りませんわ!」


この言葉にメロが紅潮した顔で前に飛び出すと「任せて!サンダーデストラクション!!」と言った。

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