第4話 神を恐れぬ女、神を恐れる女

 一難去ってまた一難。

 僕は幼馴染の新居知恵に付きまとわれることになった。

 中二病傾向なところがある以外、印象になかった彼女がここまで不気味な存在になっていたとは。

 ただ、彼女がどこまで知っているのか。それを探るために服部家の忍びが新居知恵を偵察することになった。


 翌日、授業中の武羅夫に連絡が入ってくる。

『現在、新居知恵が週刊誌の記者と接触しています』

 週刊誌の記者と接触……?

 もしかして……。

『盗聴器を作動させます』

 うわあ、盗聴までしているとなると、完全に悪役だなぁ。


『初めまして、週刊文冬の記者四里泰子と申します』

 や、やはりあいつだった……。

『東地大学一年の新居知恵よ。SNSで反応してくれた、ということは悠ちゃんのことをよく知っているということよね?』

『もちろん。私は彼に殺されそうになったことがあるわ。彼の事を記事にしたいのだけど、文冬はキンタマを握られていてとてもではないけどOKサインが出そうにない。石田首相と料亭で会食していたという情報も押さえてあるわ』

 うわぁぁ、首相との会食まで押さえられているのか。

 というか、四里との関係で行くと、彼女のデスノートもどきを僕が跳ね返したことがあったな。死神が僕のことを知っていたみたいな扱いだったし、このまま行くと知恵の認識はますます僕が破壊神ということになるのではないだろうか。

『つまり、首相も悠ちゃんには逆らえないわけね』

『ヂィズニーランドも押さえていたし、日本国政府自体が彼に逆らえないのは間違いないと踏んでいるわ。ここまで情報を出した以上、貴方の知っている情報も教えてほしいのだけど』

『これよ……』

『こ、これは……!』

 四里が何かびっくりしているけれど、これと代名詞で説明されているから何のことだかさっぱり分からない。推測するならば、僕に関する資料を作っているのだろうか。

『なるほど……。彼は世界の四破壊神の化身であるわけね』

 あー、やはりそっちの方向で説明されちゃっているわけか。

 その後、二人とも無言のままパラパラと資料をめくっているらしい音だけが聞こえてくる。

『……でも、これは相当やばいわね。これが本当だとすると、引換となるのは世界そのもの……。いくら知る権利をもってしても、世界と引換というのは恐ろしいわね』

 おっ、四里がちょっとビビッているぞ。

 もしかしたら、本人のみならず周囲も破滅するかもしれないぞと圧力をかけたら、彼女は仲間になってくれるのではないだろうか?

 って、発想が極悪組織だけど。

『何? 怯えているわけ?』

 知恵は冷静だ。とても冷静すぎる。

『いくら何でも、世界と引換というのはリスキー過ぎない?』

『そう……。思ったよりも臆病者だったわけね。フフフ』

 知恵は不気味に笑っている。

『私が悠ちゃんの弱みを握っているとしても?』


 ……えっ?


 魔央と武羅夫も僕の方を見つめてきている。

「何だ? 何か握られているのか?」

 武羅夫の問いかけに、僕は一応「心当たりはないけど」と答える。

 ただ、相手は一応子供の時から付き合いがある。予期せぬ弱みを握っている可能性はありそうだ。学校でお漏らししたとか、無理矢理封印している黒歴史くらいはあるかもしれない。

「……そんなレベルのものとは聞こえないけどなぁ」

 武羅夫の言葉に魔央も「そうですねぇ」と頷いている。

 でも、とことんまで弱みになるようなことはないと思うんだけどなぁ。


 ともあれ、知恵は僕の弱みを主張するが、四里はまあまあヘタレのようで「これ以上、関わり合いになりたくはないわ」と回答した。

『残念ね。商談不成立ということになるわけね』

 知恵が回答し、四里が「さよなら」と離れていった。

『ふぅ……』

 知恵が溜息をついた。

『そろそろ頃合いね』

 うん? 何が頃合いなんだ、と思った瞬間。


 ズゥゥゥゥン、という爆発音がして、周囲ががやがやと騒ぎ始めた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る