第5話 決闘?
皆さんこんにちは。時方悠です。
今回も、変な事件に巻き込まれてしまいました。
「魔央、君も夢を見たら分かると思う。丑の刻参りに効果があるのかどうかは分からない。ただ、見た目としてめっちゃ怖い。それが千人規模になると発狂するくらい怖いかもしれない」
僕の説明に、魔央は頷いた。
「丑の刻参りは正しくやれば効果があると家族皆が言っていました」
そうね、黒冥家は呪い屋本舗だものね。丑の刻参りに効果がないとは絶対に言えないよね。
次いで、魔央はまたナチュラル破壊神なことを言ってしまった。
「ただ、それはあくまで呪う側の霊力その他によります。負け組の人達は負のエネルギーは多いのかもしれませんけれど、実際の霊力となるとたいしたことないと思うのですが……」
「黒冥さん、負け組教を馬鹿にするのでげすか?」
反応した木房さん、あれ、語尾がおかしなことになっていない?
「馬鹿にしているわけではないですけれど……」
「これだけの豪邸に住んでおきながら、知った風に私達負け組教の繊細な心の中にずけずけと入りこもうとする……、恥を知るべきでげす! ゲテモノ!」
どこの田舎言葉やねん。あと最後はゲテモノじゃなくて俗物なんじゃないか?
って、何か黒いオーラみたいなものが炎のように木房さんの背後に浮かび上がっている!?
「申し訳ねえが、一度痛い目に遭ってもらうでげす。とわー!」
おおっ、黒いオーラみたいなものが木房さんの右手から放たれた!?
それが魔央めがけて飛んでいき、一メートルほど前でお辞儀をするように落ちて消えていった。
「な……!? 一体どういうことでげすか?」
木房さんが驚愕している。
それはまあ、魔央は破壊神四体集めた集合体だからなぁ。世界を一瞬で滅ぼす負のオーラがあるわけで、そんな相手に放っても通用するわけはなさそう。
とはいえ、これを木房さんに説明してもややこしいことになりそうだし。
「ワタクシめの、全日本の負け組の負の感情がこんなにあっさりと跳ね返されるなんて……」
しかし、何で木房さん、あたかも自分が負け組の代表かのように言っているんだ?
夢の中では負け組教の救世主のようにも称えられていたし。
「確かにそうであります。ワタクシめは、世界の負け組の最強格として育てられたのであります」
「どうやって?」
「……ワタクシめは18年前のある日、橋の下に捨てられていたところを木房家に拾われたのであります」
のっけから滅茶苦茶暗い。
「木房家はありとあらやる負けを味わってきた負け組一家でした。だから彼らはこう思いました。『私達の家ではこの子を立派な子供に育てることはできないかもしれない。それなら、世界最強の負け組として育てよう』と」
どんな斜め上発想だよ。貧しいなりに暖かい家庭にしようとかそういう発想はなかったわけ?
「その日から、ワタクシめは最強の負け犬となるべく徹底したトレーニングを受けるようになりました。スポーツで勝つチームを応援すると正座一時間、以下うんたらかんたら」
うん。その努力の方向性をもう少し別に向けられなかったのだろうか?
「おかげで今では、どんな勝負であっても、試合開始前にはどちらが負けるか一目で分かるようになり、日経新聞を一目読むだけでどの銘柄が下がるかも分かるようになりました」
「えっと、木房さん?」
「何でありますか?」
「どの銘柄が下がるか分かるのなら、他を買えば勝って資金が増えそうな気がするんだけど……?」
「……」
「……」
「とにかく、ワタクシめは最強の負け組であるはずなのであります。その私のオーラが一メートル前で失速するなど……、勝ち組の前に膝を屈するなど、ウッ、ウッ」
ガチで泣き始めてしまった。何か色々と間違えているようにも思うのだけど、本人的にはアイデンティティに関わることなのかなあ。
「黒冥魔央! ワタクシめは貴女に決闘を申し込むのであります!」
と、唐突に決闘を宣言してしまった。
「ワタクシめは自分が負け犬であることにプライドを持っております! そのプライドを踏みにじる黒冥さんを許せないのであります!」
申し込まれた魔央の方は、というと。ピンとこない様子で少しうろたえている。
「は、はぁ……。それは構わないのですが、どういう決闘をするのでしょうか?」
「お互いに呪いの秘術を駆使し、相手を呪殺した方の勝ちであります!」
うわ……、それはまた何というか、かなり厄介な戦いになりそう。
でも、今さっきまでのを見ていると、明らかに魔央の方がワンランク上な気がするのだけど、大丈夫なのかな?
「……分かりました」
魔央はあっさりと承諾した。
「それでは、明後日朝三時、▽■村〇×で会いましょう」
えっ、そんな遠いところ行くの?
片道だけで三、四時間かかりそうだよ。何で?
「毎日都会だとうるさいですし……」
そっちか!?
都会と言っても、ほとんど大学とタワマン最上階行き来しているだけじゃん! 全然、都会ぽい生活していないよ。
と言っても、やっぱり田舎ぽいところの方が落ち着くのかもしれないなぁ。
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