第33話 事の顛末
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よろしければそちらの方も
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「――以上が事の顛末ですね」
「お前も大変だな、女神」
「いえいえ。元を辿れば、私の管理不行き届きが招いた結果ですからね。身から出た錆というやつです」
シルヴィアを誘拐――もとい、救出した日の夜。
俺は女神から教会の一件についての顛末を聞いていた。
「それにしても、あの守銭奴どもをスキル剥奪だけどか甘いな、お前も」
「スキルのない世界で生活してきた隼人さんには分かりづらいかもしれませんが、スキルの剥奪はこちらの人間にとってかなりの罰になりますよ?」
女神曰く、例えるならば事故で失明するとか下半身付随レベルらしい。
それに、現地の人間は魂がスキルと馴染みやすい下地ができている。
今回のスキル剥奪による喪失感と不安感は並大抵のものではない。
「そもそも神聖教は私がつくったんですよ」
「神がマッチポンプしてる宗教とか最低だな」
「あまりにもストレート⁉︎」
「……最悪だな」
「何で言い直したんですか。それに、前後で意味が変わってないじゃないですか! むしろ酷くなってる気がします‼︎」
1ボケ3ツッコミ。
打てば響くとはまさにこのことだろう。
……ダメだな。
深夜テンションになってきている。
現時刻は0時と、まだまだ夜は始まったばかりの時間だが、眠たくて仕方ない。
近頃の健康的な生活リズムの弊害か。
「あの宗教をつくった理由もあるんですよ?」
「一応聞いておく」
「この世界を創ったとき、魔物も創造することが決められていましたからね。ですが、それだと人類はただ蹂躙されるだけの存在になってしまいます」
だから、信者に優遇する措置を設けたと。
……今、何かおかしな部分が無かったか?
「まあ、信者から送られてくる信仰心で神としての階位を上げるという目的もありましたけど」
「やっぱ邪教だろ」
「ってことで、終わった話はこれくらいに」
「……まだ何かあるのか?」
最早、俺のボケに突っ込まなくなった女神。
つまらない。
「いつになったら私のことを名前で呼んでくれるのですか!」
「……はぁ?」
真面目な顔したから、また依頼かと思ったら。
今度はお前がボケ側か?
「こうして何度か会っているのに、隼人さんは私のこと『女神』とか『お前』としか言わないじゃないですか‼︎」
「いや、そもそも俺、お前の名前知らないんだけど?」
名前を呼ぼうにも、肝心の名前を知らない。
「あ、あれ? そうでしたっけ?」
「転生するときに『フィー』って名乗ったきりだ」
あの時は階位の違いからコイツの名前を聞き取れなかったんだっけ?
なら、同格の神になった今なら聞き取れるのか?
「ええっと、では改めまして。私はこの世界、フィアレデントの創造神であり管理者である女神『フィリア』です」
「フィリアぁ?」
「せっかくフルネームを名乗ったのに何ですか? そのリアクション」
フィリアって、ギリシア語で“愛”だろ?
お前が?
「失礼ですね! 私は気に入ってるんですよ、この名前!」
「はいはい、良い名前だよ」
「お茶を濁さないでください! ちゃんと名前で呼んでくださいよ」
「はぁー……フィリア」
「な、何ですか。急に私の名前を呼んだりして」
「いや、お前が言えって言ったんだよ」
それからは今回の依頼の報酬についての話になった。
と言っても、特に働いたつもりもない。
せっかくなので、女神には作物の図鑑と育て方の指南書をもらっておいた。
最後に、今回の件の中心人物とも言えるシルヴィアについてだが――
「別に、私からどうして欲しいとかはありませんよ?」
「はあ?」
「彼女は私の信者の中でも、特に敬虔でしたから。それが食い物にされている現状をよく思わなかっただけです」
「今回の件は完全に私のワガママですね」と微笑むフィリア。
それに付け加えて「隼人さんがあの娘をもらってもいいんですよ?」なんてほざいていたから、アイアンクローを極めておいた。
大体、俺とシルヴィアの歳の差を考えろ。
前世だと刑務所行きの年齢だ。
それに、彼女が俺のことを好きになるハズが無い。
「そうですかねぇ」
「あ”?」
「いえいえ、何でもありませんよ。それじゃあ、私は事後処理が残ってるので帰りますね!」
それだけ言って、フィリアは転移魔法で帰って行った。
時計を見ると、現時刻は25時半。
話していたらかなり遅い時間になっていた。
馬車の疲れも残っているのか、身体が怠い。
ベッドに横になった俺は泥のような眠りに就いた。
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