第27話 転生者
「こっちに来てから数人の転生者の方には会ったんですけど、芝さんもお元気そうでよかったです」
俺との再会をとても喜んでくれる小鳥遊君。
彼は転生前に話した時のイメージ通り、イケメンの好青年だった。
人付き合いが良さそうで、笑顔が似合う爽やかな人柄。
「それにしても、どうして俺だと分かったんだ? 初対面だろ?」
「ええっと、その……最期の時ですね。朧気ですが、背格好とかは記憶に残ってましたから」
「それに、こっちでは日本人顔は珍しいですし」と続ける。
確かに、こっちの人々の顔は日本人っぽくないな。
俺は海外の人の顔に詳しい訳じゃないから、具体的にどこの国に似ているとか言えないのだが。
「立ち話も何ですし、どこか店でも……あっ」
「店、ってあるか?」
「多分、無いかと。首都ならまだしも、ここは辺境なので飲食店は少ないです」
だよな。
酒場みたいな所はありそうだが、昼間から開いてるものでもないし。
「なら、俺の家来るか?」
「……えっ?」
***
「……すごいですね、芝さん。こっちに来て一週間足らずなのに、どうやったらこんな豪邸が建つんですか?」
客間のソファーで身を乗り出しながら聞いてくる小鳥遊君。
そう言えば、こっちに来て一週間しか経ってないんだよな。
内容の濃い日が続きすぎて、数ヶ月は経っている気になっていた。
……今回の聖国の一件が片付いたら、少し休むことにしよう。
「お茶です」
「ああ、どうもです」
「ありがとう、ヴィー」
「いえ。失礼します」
ヴィーに入れてもらった紅茶に口を付ける。
俺は元々コーヒー派だったんだが、彼女の入れてくれる紅茶は美味いと思える。
ヴィーのやつ、俺の好みとか細かく把握してるからな。
何回か入れただけで、絶妙な量の砂糖とミルクが入るようになった。
「本職のメイドさんなんて、俺、初めて見ました」
俺もだ。
前世なら、喫茶店の前で客引きやってるのを何度も見たことがある。
そしてメイドらしいことができたからか、ヴィーが誇らしげだ。
無表情なのは相変わらずだが、それも澄ましたような顔に見える。
だけどな、小鳥遊君。
ヴィーは振る舞いこそメイドだが、どちらかというとグレー。
未だに俺はコイツの正体を知らないし。
「俺がこっちに来て……」
「? どうかしましたか?」
「いや、何でもない。俺のことより、小鳥遊君の方はどうだ? 今は何かやってるのか?」
女神に説教して家もらった、なんて言っても信憑性は薄いしな。
それよりも、小鳥遊君のことが気になる。
「僕はですね――」
小鳥遊君が飛ばされたのは、広い草原だったそうだ。
360°どこを見ても、地平線まで広がる草原。
俺とは違って、魔物の蔓延るような場所ではなかったのは羨ましい。
そして右も左も分からない小鳥遊君は取り敢えず草原を進んだ。
すると、狼系の魔物に襲われている集団を発見。
スキルによって撃退すると、何とその集団はこの国の王女様の一団だったらしい。
ラノベの主人公みたいだな、小鳥遊君。
「俺は小鳥遊君の一週間の方が凄いと思うけどな」
「あはは……」
苦笑いをする辺り、小鳥遊君も自分の豪運を自覚しているそうだ。
王女様を救った後、王城に招かれた小鳥遊君。
国王から直々に褒美について話をされたそうで、小鳥遊君は商業権をもらい、今は国の御用商人なんだとか。
「何で商業権だったんだ?」
「自分、前世はドライバーだったじゃないですか。あの仕事に憧れたのって、商品を受け取ってくれる人の笑顔が見たかったからなんです」
若いのにしっかりしてるな。
俺なんて、前世の会社は適当に選んだのに。
他にも小鳥遊君の武勇伝を聞きつつ、ヴィーが大量に生産した野菜をお裾分けしたり、俺の狩ってきた魔物の素材を渡したりした。
小鳥遊君は代金を払いたい様子だったが、後輩にランチを奢るような感じだったので固辞しておく。
「そう言えば、芝さんはレイリッド神聖国の話は知ってますか?」
レイリッド神聖国は聖国のことだ。
時事的に勇者の件だろう。
「パレードで勇者のお披露目とか言ってるヤツか?」
「よく知ってますね」
それは情報源が女神とギルド長だからな。
「その勇者なんですけどね、どうも妙な噂があるんですよ」
「噂?」
「なんでも、教主が大聖堂で祈りを捧げていると、光に包まれて現われたそうです」
特別おかしい点は無いと思うが?
魔法のあるこの世界なら、そういった現象も珍しくなさそうだ。
現に、ヴィーは転移魔法を使えるし。
「それでですね。勇者が現われたのは一週間ほど前という話です」
「……ああ、そういうことか」
「そういうこと、です」
なるほど、話が見えてきた。
300年間の膠着状態を打開する切り札。
魔族に対抗し得るとした勇者の実力。
約一週間前に、突如として現われた。
つまり“勇者”は――
――俺たちと同じ“転生者”だ
――
スマホで見返してみたんですが、説明多くてつまらない感じですか?
最初の方は脳死で書けてたんですけど、時間が経つとダメになってきました
――
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