第40話 権力者ゲーム

とある日。

…アイナ達がまず来て、その数十分後にメルマ達が来て、なんかわちゃわちゃなっていた俺の部屋で、ジラウスがこんな言葉を発した。


「なぁ、ここにいるメンバーで…権力者ゲームやらね?」


「なんだ?権力者ゲームって?」


聞き馴染みのない言葉に首を傾げながら、その言葉を発したジラウスに質問する。


「何だ、お前知らねーのかよ。権力者ゲームってのはな、くじなんかで、一人だけ権力者を決めて…それ以外の奴にランダムで命令を出すんだ。例えば、○番が、○番に何かをするとか。…もちろん、命令ってのは、何でも命じる事ができるんだぜ!!」


…と、ジラウスは、興奮気味に言った。


「……あー……はいはい。分かった。そーゆーゲームね。」


王様ゲームじゃねーか……。

こっちの世界でもそーゆー遊びがあるんだなぁ……と思った。


「……で、何でそんなゲームをいきなりやろうなんて言い出したんだよ…。」


「だって、やってみたいんだよ、権力者ゲーム。くじだって、用意してるんだ。それに、せっかく人数集まってるんだしさ、やろーぜやろーぜ!!」


……と、人数分の割り箸を懐から取り出して、迫ってくるジラウス……。


「…別に俺は構わんけど……。」


「本当か!?じゃあ、メルマとクライエットは!?」


「別に良いよ。」


「うん、あたしも。やったことないからな~、どんな雰囲気になるんだろう。」


「いよっし!!じゃあ、アイナさん達は!?」


「…わ、我らか…?う~む、やったことはないが…そういうのはあまり興味がな…」


「いいじゃないですか!!やりましょう!!権力者ゲーム!!アイナも興味あると言っていますわ!!!」


…アイナが喋っているのに、サメロアがそれを遮った。


「な、ちょっと待つんじゃ…我は興味があるなんて一言も……」


「僕はやってみたいな。だって、やった事ない遊びだもん。アイナも一緒にやろ。」


「…な、エルラまで……。……仕方ないのぉ。」


「よしっ!じゃあこれで俺、キヨト、メルマ、クライエット、アイナさん、サメロアちゃん、エルラちゃんの全員の了承を得た!!権力者ゲームをやるぞ!!!」


ジラウスが嬉しそうに言う。


「あ、先っちょが赤い割り箸を引いた奴が権力者な。それ以外には、1~6の数が書いてあるからな。その中の数を使って命令してくれ。」


…ジラウスの説明を受け……テーブルに集まり、…ジラウスが用意した割り箸を引いた。…結果はエルラが権力者 …になった。


俺は、一番だった。

…他の皆は何番だったんだろ。




「…いきなり権力者になっちゃった。」


「おお、ラッキーじゃん。早速なんか命令しちゃいなよ。」


と、ジラウスはエルラに促す。


「…う~ん…何でも命令していいんだよね?」


「ああ、もちろんだぜ!!」


「そっか……。」


そう言って、エルラは考え込む。


「…なるべく、良識の範囲内で頼むぜ……。」



と、俺はボソッと呟く。


「そうだね……。えっと、それじゃあ……4番の人が、1番の人に抱きついて。人と人が密着すると、どんな反応するのか、ちょっと見てみたい。」


エルラの命令に、「おおおおっ!」と声を上げるジラウス。


「俺、4番!!1番、1番は誰だ!!」


……と言いながら、ジラウスは4と書かれた割り箸を皆に見せる。


女の子に抱きついて欲しいという欲望が丸見えである。


「……残念だったな、ジラウス。お前のお相手は、この俺だ。」


…と言いながら、1番と書かれた割り箸を見せた。


「なっ…キヨトと…だと……!!」


絶望した表情で俺を見るジラウス。

まぁ、確かに男同士だからな。


抵抗がないと言ったら嘘になるが………まぁ、仕方ない。

王様の……いや、権力者の命令は絶対のはずだから。それにここで拒否してもゲームが盛り上がらないだろう。


「さぁ来い、ジラウス。権力者の命令は絶対だ。それに、言い出しっぺのお前が逃げるなんて事しないよな?」


立ち上がって、両手を大きく広げ、受け入れる体勢を取る。


「ぐぬぅ……」


「ほら、早くしろって。権力者の命令は?」


「ぜったーい……。ちくしょー……。」


ジラウスは立ち上がり、こちらに向かってくる。

そして、覚悟を決めたように、勢いよく俺の体に腕を回して、抱きしめてきた。


「……お前、よく平気でいられるな……。」


「ん?何が?」


「男同士でこんなことしてんだぞ!?何か思わねーのかよ!!」


と、ジラウスは若干キレ気味で言う。


「……別に何も思わないけど。」


「マジかよ……これ、結構恥ずかしいんだが……。」


「まぁ、人によってはそーかもしれねぇな。」


「はぁ……。……なぁ、もう離れて良いか?」


…ジラウスが、エルラにそう聞いた。


「まだダメだよ。」


「えぇ……!?」


「だって、まだ1分も経ってないよ。…もう少しだけ観察させて。」


「……マジかよぉ……。」


……しばらく、ジラウスと抱き合った。


「……ありがとう。満足できたよ。」


「そりゃあ良かったな……。」


エルラの言葉を聞いて、ジラウスはため息を吐きながら、元の位置に戻った。


「…そいじゃ…気を取り直して、もっかいくじ引くぞ~……」


明らかにジラウスの元気がなくなっている。

そんなに嫌だったのだろうか……。

ちょっとショックかもしれない…。


まぁ、そんな事は置いておいて…シャッフルした割り箸を再び引いた。


引いた割り箸を見てみると、5と書いてあった。


…で、権力者は誰かと言うと…


「……あ、私だ……。」


そう言って、メルマが先端が赤く染まった割り箸を見せてきた。


「なに命令するの?」


「さぁ…?特に決めてなかったし。」


クライエットの問いに対して、そんな風にメルマは答えた。


「え~、それじゃあ権力者になった意味ないじゃん。」


「う~ん………。……じゃあ……5番の人は……私の事をこのゲームが終わるまで膝の上に乗せて。…人を椅子がわりにするって、何だか権力者っぽいから。」


「なるほどね。」


「5番~誰だよ~5番~。」


「……言うほど権力者っぽいのか…それ?」


俺はそう呟いて5と書かれた割り箸を見せる。


「キヨトが5番なんだ。……ふ~ん……。」


「またお前なのかよ!?」


「そみたいですね。」


「引きが悪いね、キヨト。また命令聞かなきゃいけないじゃん。」


「……まぁ、そうだな。」


クライエットの問いに……ちょっと落ち気味で答える。


「……じゃあ、権力者権限で、キヨトの膝の上に座らせてもらいます。」


メルマは俺の方に近付いていく。


「それじゃあ失礼します……。」


そう言って、メルマはちょこんと俺の膝の上に座ってきた。


「……どうだ、人の膝に座った気分は。」


「……なんかこうやってると、本当に権力者になった気分。」


と言って、俺の方を振り向いてくる。その顔は、何処か楽しそうな気がした。


「……楽しそうで何よりです……。」


「うん、楽しいよ。」


「……さいですか……。」


……そのままの体勢で、ゲームを続行する事になった。


「……じゃあ、くじ引くぞ~」


再び割り箸をシャッフルし、それを皆は一斉に引く。


……俺は、3番だった。


「……ねぇ、キヨト何番だった?」


「言ったら意味ねーだろ。」


「……けち。」


…メルマはぷくっと頬を膨らませた。


「そんな顔したって教えません。」


「……ぶー…」


「拗ねんなって。」


「……拗ねてないもん。」


と、そっぽを向かれてしまった。


「とりあえず、権力者は誰だ?」


俺が問いかけると、手を挙げたのは…サメロアだった。


「にゅへへ……、わたくしが、権力者ですの!」


と言いながら、サメロアはさきっぽが赤いと割り箸を見せた。


「ひぇぇ!!!サメロアちゃんが荒ぶってる!?」


「落ち着け、クライエット。ただサメロアは、権力者になって喜んでるだけだから……。」


……相変わらず、サメロアの事が中途半端にしか見えてないクライエットには、どういう風に映るのだろうか?


「……ん?どうかしましたの?」


「いや、何でもない。それより、どんな命令するんだ?」


「んふふふっ、それは決まってますの!…1番の方の、体の一部を触らせて下さいまし!!」


「……なっ!?」


……声を上げたのは、アイナだった。


「やっぱり、アイナが1番でしたのね!!さっき、自分が持っていた割り箸を、アイナが取ったのを見逃さなくて良かったですの!!」


「サメロア、お、お主…!?」


「えっへんっ、わたくし、洞察力は鋭い方なんですのよ?」


「ぐぬぅ……。」


「それじゃあ早速……いっただっきまーす!!」


そう言って、サメロアはアイナの尻尾へと飛び込んでいった。


「……むふふ、普段あんまり触らせてもらえない分、今日は堪能させてもらいますの!!」


そう言いながら、サメロアは尻尾に抱きついて離さない。


「ぬぅぅ……」


嫌そうな顔をしているが、あまり抵抗する素振りを見せていない。


「……我慢してるな。」


「し、仕方なかろう、一応、命令なんじゃからな。」


「……そりゃそうだな。」


「ムフフフフ、もっふもふで気持ちいいですの!!」


サメロアの勢いは止まらず、凄い勢いで9本ある狐の尻尾をもみもみしている。


「……くすぐったいのじゃ……」


「……ん~……もっと堪能させて下さいまし~。」


そう言って、サメロアはどんどんアイナの尻尾に沈んでいく。


…そのサメロアの表情は、とても幸せそうで、蕩けた顔をしていた。


「……幸せそうだね。」


「だなぁ。」


メルマのそんな感想に同意した。


……そして、それからも時間が経ち…権力者ゲームを飽きるまで続けた。


…で、それぞれ権力者になった回数は、クライエットとエルラが二回、アイナとサメロア、俺とジラウスとメルマが一回ずつだった。


…ハチャメチャな命令だったり、変な命令ばっかだった。


この場で踊れだったり、肩車しろだったり…。


ジラウスの奴は、明らかに欲望に忠実な命令。

俺に抱きつけ!!…とか言ってたけどまた俺と抱きつくハメになって、ちょっと可哀想だった。


まぁ、それ以外なら結構盛り上がっていた。


…案外楽しかったし


またやりたいな…とそう思った。

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