第37話

「さて、付きましたのよ!!」


「……ここなの?」


「そうですのよ!」


彼女の案内で、ガイゼスが住んでいるという屋敷のすぐ側に着いた。


辺りは……もう暗くなってきている。


入り口には、門番らしき数人立っているのが見える。


「……とりあえず、着ている服を脱いでっと……。」



僕は、着ていた服、下着を全てアイテムボックスにつっこんだ。

映結晶もこの中に入れてある。


……裸になったら、そのまま透明化する。


「おお、これで完璧に見えませんわね。わたくしにも、あなたが手に持っているアイテムボックス以外、何も見えませんわ。」


「そうだろうね……。……でも、そっか。アイテムボックス持ってると……ちょっと目立っちゃうよね。」


……とりあえず、アイテムボックスが入る位のスペースをお腹に空けて、そこに入れる。

そして包みこんで見えなくする。


「あら、アイテムボックスは何処にやったんですの?」


「お腹の辺りにちょっとスペースを空けてそこに入れたよ。こうすれば、見えないだろうからね。」


「そんな事も出来るんですのね……。」


「うん……まぁね。」


「……居場所が分からなくなる前に、あなたの身体に触れておきますわね。」


……と、彼女は僕の肩の辺りに手を当てた。

手の感触は感じるものの、体温を一切感じない。


「……よし、じゃあ行こうか。」


「ええ。」


僕達は、屋敷の塀を飛び越えて中に忍び込んだ。


音を立てないように着地する。


……そしてどこかから、入れないかを探る……と、二階の窓が開いてた。

一回ジャンプして、その窓の中を覗いてみる。


そこには、誰かがいる気配はなかった。


なので、すぐにそこから侵入してみた。


……改めて、部屋の中に誰もいないのを確認してから、窓から飛び降りて床に着地をする。


「大丈夫そうだね。」


「……そうみたいですわね。」


部屋の中を見回してみると……あまり広くなく……ベッドやタンス……と、生活に最低限必要な物しか置いていない。


「随分と殺風景な部屋……。」


「使用人さんのお部屋でしょうか?……んー、目ぼしい物はありそうにないですし、移動してみましょう。」


「うん。」


扉を開けて、廊下に出てみると……そこは薄暗かった。

壁にある蝋燭が灯っているだけで、そこまで明るくない。


「……とりあえず、ガイゼスがいる場所が何処か、探索してましょう。」


「うん。」


薄暗い廊下を歩きながら……探索を始める。


しばらく移動して探索していると……大きな扉を見つけた。


「ここの扉だけ……やけに大きいね。」


「恐らく……ここがガイゼスの部屋だと思いますけど。」


「……。」


「ちょっと中の様子を見てきますわ。エルラはこの場所を動かない様にしていて下さいまし。」


「分かった。」


……サメロアは、扉をすり抜けてその部屋に入っていった。


________


「……やっぱり、ここが奴の部屋で間違いないですわね。」


……作業机で何やら書類を整理している奴の姿が見えた。


何の書類を整理しているのか気になったので、近付いて覗いてみる。


「……別に怪しいものではないみたいですわね。」


財源に関してのものや、税に関しての詳細がまとめられたものばかり。

……これに関してはあまり、見るものではない。


てっきり、変な事でもしてるかと思ってましたが……案外真面目に働いてるのだろうか?


そんな事を考えていると……ガイゼスは一人でブツブツと呟き始めた。


「ボロギド組……まさか幹部含めて全員、警備署に連行されるとは思っていなかった。……仕事をきっちりとこなす連中だっただけに…残念だ……。」


「……あら。」


誰もいないと思って油断してるのか、ボロボロとこちらが欲しい情報を提供してくれる。


……今の言葉で、少なくともコイツがボロギド組と関係があるのが確定した。


後は……証拠さえあれば……


しばらく様子を伺っていると、今度は立ち上がって、本棚の前に立った。


そして……本棚にある本を一冊ずつ取り出して、表紙を確認しては、バラバラの場所に入れる作業をし始めた。


あれは何をしているのだろうか?


よく分からないまま眺めていると……作業が終わったのか、ガイゼスは少し後ずさる。


すると……本棚が動き出して、隠し通路が現れた。

その中に入ると階段があり、地下へと続いていくようだ。

彼はそのまま、その中へ降りていく。

それを確認したら、私は急いでエルラを連れてその通路へと入り込んだ。



かなり長い階段を降りていくと……一つの空間にたどり着いた。


鎖や手錠、足かせなど色々な道具が置いてある。


拷問部屋だろう…。


……血の跡もあちこちにあったりして……椅子に縛り付けられてる……息のない傷だらけの年端もいかない少女だったりが……。


とてもじゃないが、こんなところで長時間過ごせば気が狂ってしまいそうな位、凄惨な光景が広がっていた。


そして、そんな部屋を眺めて……ぶつぶつとガイゼスは何かを言っていた。


「……新しい玩具の供給が途絶えてしまったし……どうしたものか……。これでは、憂さ晴らしすら出来やしない。」


……と、独り言を言っている……。


「こいつ……!!」


……今にでも殴りかかりたいが……我慢する。


もう少し情報が欲しい。

そう思い、再び監視を続ける。

すると、ガイゼスは……傷付いた女の子の遺体に近付いた。



「……これじゃあ、ほぼ使い物にならんしな……。まぁ長い間、使えただけ、よしとしよう。一週間も持たずに死んでしまった奴もいたから……それに比べたらマシか。」


そして……その死体の顔に手をそえた。


「……まだ生きてた時は……良い声を出してくれていたな。今となっては、何も言わないが、これはこれで……。腐ってしまう前に……もう一度だけ。」


……そう言って……ガイゼスは……


「……っ!?な、何をして……!?」


「………。」


とんでもない光景を目の当たりにして、声が出せなくなる。


「………こ、こんなの……見てられませんわ……。」


「……大丈夫?」


「……気分が悪い……すいませんが……ちょっと……上で待ってます……。」


……エルラにそれだけ言って……この部屋から去った。


________


「………。」


サメロアは、行ってしまった。

アイツも、用が済んだのか、上へと戻っていった。


一応……お腹の辺りを少し空けて……今の奴の行動を撮ってはいたけども……。


「こんなの……人に見せられるものじゃない……。」


……何で、あんな事が出来るのか……理解出来なかった。

人の尊厳を踏みにじる様な行為。


人としての……やっちゃいけない一線を超えてる。


…人間じゃない僕にでも分かるのに……。


「……。」


女の子の遺体に近付いて

みる。……酷い有様だ。

身体中に痛々しい切り傷がある。

更には、所々焼け焦げた跡もある。

多分だけど……魔法によるものだろう。


……見る限り、まだ10歳いくかいかないかぐらい……なのだろうか?


「まだまだ、人生これから……のハズだったろうに……」


……僕は、その遺体に手を合わせた。……どうか、安らかに眠ってくれますようにと。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る