第34話
……ミーニャの捜索をして……四時間が経った。……未だに手がかりすら掴めない。
「……はぁ……。」
俺は、タメ息をつきながら……あまり人がいない通路を場所を歩
いていた。
「どうしたもんかね……。」
そう呟きながら、歩いていると……
「ヴッ……!?」
とんでもない悪臭が漂って来た。
思わず鼻を押さえてしまう。
何だこれは……。
臭いの元を探して辺りを見渡すが、特に何も見当たらない。
……気になって仕方がないので、その臭っている方向へと足を進める。
……すると、用水路の様な場所にたどり着いた。
……そこを見てみると……歩けるスペースがあり、俺が探していた二人の探し人と…何故か魔力の縄でぐるぐる巻きに縛られて、連れられている男三人がいた…。
「お、おい…何やってんだよ……メルマ?」
俺は、困惑しながら、歩いている奴の名前を呼び掛ける。
すると、こちらに気付いたようで振り返ってきた。
「あ!キヨト!!」
「お兄ちゃんっ!!」
二人は、俺を見るなり駆け寄ってくる。それと同時に、縛られてる男達は引きずられて痛そうだ……
「えっと……。」
……状況が全く理解出来ない。……どうして、こんな事になっているんだろう……。
……とりあえず…事情を聞くために近寄ろうとするも……
「ううっ!???」
メルマ達が近寄ってくると同時に、先程感じていた悪臭が、さらに強烈になったのだ。
「お兄ちゃんっ!!」
「おわっ!??」
ミーニャが、勢いよく抱きついてくる。
そして…次はメルマが近付いてくる……も……
「うおっ、お前、くっせぇぞ!??」
他の奴らも臭うけど、特にメルマが、その異臭を放っている事に気付く。
「あ~……ごめんね。今まで……下水道にいたから……。」
「……なんでそんな場所にいたんだよ?」
「……道に迷ったから。」
「下水道に迷い込むかぁ、普通!?」
「まぁまぁ、細かい事は気にしないで……」
「細かくねぇよ!?」
…ツッコミをいれつつ、ミーニャの頭を撫でてやる。
ミーニャは嬉しそうな顔をしている。
とりあえず、無事だったみたいだし……良かった。
「……で、後ろのその男達はなんなんだよ?……てか、何でミーニャと一緒にいたんだ?」
「……ミーニャちゃんが、この男達に捕まって、何処かに連れてかれそうになってる所を見かけたから、助けてあげた。それで一緒にいるの。」
「あ、ああ……そうだったのか。」
「うん。……っていうか、キヨト、ミーニャちゃんの事知ってるの?お兄ちゃんって呼ばれてたけど。」
「あ~と……それは……」
……なんて説明すればいいのやら……。
頭を悩ませていると…ミーニャが、口を開いた。
「メルマおねーちゃん。キヨトお兄ちゃんは、ミーニャのお友達なの。一緒に遊んでくれる、ミーニャの大好きなお兄ちゃんなの。」
……ミーニャの言葉を聞いて、少し照れくさくなってしまう。
「あー……そう言う…ね。ミーニャちゃんは、キヨトの事が好きなんだね。」
「……えへへ。」
ミーニャは、満面の笑みを浮かべる。
「……あー……まぁ、そゆこと。」
「ふぅん……。」
……メルマは、納得したような表情を見せる。
「お……おい……。」
「……あ?」
声をかけられたので、縛られている男の内の一人を見る。
「なんだよ?」
「……お前、コイツの……仲間かなんかなのか?」
「まぁ……そんなもんかな。」
「……そうかよ……ああ、クソっ!……何だって、こんな目に遭わされなくちゃいけねえんだよ!!」
男は、苛立ちながら、地面を踏みつける。
その様子に、ミーニャは怯えた様に俺の後ろに隠れる。
「うるせーよ……ちょっと黙ってくれないかな?」
「うっせぇ!!大体、そこのチビがいなきゃな、命令されたこと、全部上手くいってたんだよ!!」
「命令…ってなんだよ?」
「ボロギド組の幹部、グエル様からの直々の命令だよ!!そこの、ネコのガキを連れて来いって言われたんだよ!!」
「ちょっ、お前……喋り過ぎだぞ!?」
もう一人の男が止めに入るも、
もう遅く、全てを話してしまっていた。
そして、そう言われた男は、ハッとした顔になって明らかに焦った顔になる。
「あ~……い、今のは……聞かなかったことにしてくれないか?」
「……無理に決まってるだろうが。」
「……ですよね~。」
その男は、ガックシと項垂れる。
そして…その男に向かってメルマが近付いていく。
その顔は、無表情でやけに圧を感じる。
「お、おい……どしたん、メルマ?」
「この男、また私の事ちっちゃいって言った。これで三回目。」
「え、ああっと……そうなの……?」
「うん。だから……お仕置きする。」
そう言って、メルマはその男の顔を平手打ちで何度も往復でビンタし始めた。
「うっ、ちょっ、ぶへっ!?」
「痛い?……痛いよね?」
「ぐっ、や、やめっ、ぶっ!?」
「痛かったら、ごめんなさいって言おうね。」
「ご、ごめんなさっ!」
メルマは、その男に平手打ちするのをやめようとしない。
「…ごめんなさいは?」
「ごめんなざぃっ!!」
「……。」
メルマは少し手を止めるも、また平手打ちを再開した。
男は、もう涙目になっている。
「あ~……その辺にしといてあげようぜ……。」
「……。」
……そう言うと、こちらを見つめてくるメルマ。そして、すこし考える素振りをし……
「……分かった。」
「ありがとうございます……。」
メルマは、渋々と男から離れた。
……その男の顔には、真っ赤な手形がついている。
痛そうだ……何て思いつつ、一つ質問をする事にした。
「……で、結局のところ、その幹部様は、なんでミーニャを捕まえて連れて来いなんて言ったわけ?なんか、理由があんだろ?」
「ああ?……んな事は知らねーよ…。詳細なんざ聞かされてねぇ。」
「本当か?」
「嘘ついてたら、他の全員にも……痛い目にあってもらうからね。」
「ウソじゃねーって!本当だから!!な、オメーら!!」
あとの二人も、少しメルマに怯えた様子で……何も知らないと、賛同した。
「……ウソついてる様には、見えないかな。」
「そうだね。……まぁ、それは置いといて……お風呂に入りたい。臭いが、キツいみたいだし。」
「ああ…うん……。」
……とりあえず、この三人組を警備署に引っ張って行った。
そして受付でこの三人組を見せたら、すぐ引き取ってくれた。
何でも、全員、過去に何回か傷害を起こした事のある前科者らしく……顔が割れていたとか。
そんなこんなで、次はメルマとミーニャを風呂に入れる為に、寮に向かった。
二人とも……数十分は風呂の中から出てこなかった。
そして……その後は、メルマをギルドに連れてってソティナさんに見付かった事を報告。
皆にも見付かった事を報告したかったけど……誰もいないので、それは後回し。
こういう時、携帯電話みたいなすぐに連絡する手段でもありゃ便利なんだか、そういった類いのものはない為、仕方がない。
……で、最後に、ミーニャをお家まで、送り届ける。
メルマは、ギルドに置いてきた。
また、少し目を離したスキにどっか行かれても困るし……何より、一回皆でギルドに集まる事になってるから、その変わりとしての役割も任せてある。
「……さて…と。着いたぞ、ミーニャ。」
「……すー……。」
「あー……まぁ、流石に寝ちまってるか。」
ここに来るまで、ずっとおんぶしていたが、いつの間にか俺の背中ですやすや眠っている。
起こすのも悪いので、そのまま背負って店の中に入る。
すると、奥の方から足音が聞こえてくる。
姿を現したのは……暗い顔をしたまま俯いたラミネさん。
「ラミネさん。」
「……キヨト君……?……ああ!!!」
俺がミーニャを背負っている事に気が付いたのか、暗い顔から一転、明るい笑顔を見せ、俺に詰め寄ってくる。
「ミーニャ!!ミーニャなのよね!!?」
「ええ、そうですよ。」
「……良かった……無事だったのね……。」
「ええ。……ちょっと色々あったみたいでしたが……何とか無事に見つける事が出来ましたよ。」
「ああ……なんて、お礼を言ったら良いのか……分かりません…。本当に……ありがとう…!!」
そう言いながら、ラミネさんは…何回も頭を下げてくる。
「良いんですよ。……それに、今回ミーニャを見付けたのは、俺じゃないですしね。」
「……え?そうなの?じゃあ……誰が……?」
「まぁ、詳しい話はお部屋でしませんか?ミーニャもぐっすりですから……布団に入れてあげません?」
「……それもそうね。」
ラミネさんに連れられ、居間にお邪魔させていただく。
……近くに布団を敷いてもらい、そこにミーニャの事を寝かせてあげる。
……そして、俺は、今回の件について話をした。
まず、ミーニャがあの三人組の男達に、狙って拐われていた事。
メルマが助けた事。
…全てを話した。
「ミーニャが狙われていた……ですか?」
「ええ。…細かい事までは分かりませんけど……なんでも、ボロギド組の幹部が…ミーニャを連れて来いと言ったから、男三人組は、ミーニャを連れ去ったみたいです。」
「……そうなの。」
ラミネさんは、少し考える素振りを見せる……。
「……何故、ミーニャだったんでしょうか?……その幹部の人に、気に障るような事をしてしまったのかしら?」
「……う~ん……でも……ミーニャが、人の気に障るような事すると思いますか?」
「……ないと思いますけど…。」
ラミネさんは、分からない……と言った様子で首を傾げた。
確かに……そこは疑問が残る所ではある。
「……まぁ、分からない事をいつまで考えててもしょうがないですよね。」
「……そうですね……。」
「とりあえず……、ミーニャから目をはなさないであげてください。……まだ、安心は出来ないんで。」
「ええ。」
「じゃあ……もういい時間ですし、俺は、行きますね。」
「ええ……ありがとう。メルマさんという方にも……お礼を言っておいてくださいね。」
「はい。」
そして、立ち上がってそのままギルドに向かった。
ギルドに着いた時には、既に皆揃っていて……メルマを囲むようにしていた。
色々と質問攻めにされている様だった。
「あ、キヨト…。」
メルマが、こちらに気付いた様で、手を振ってきた。
それに続いて、皆も俺の存在に気付く。
とりあえず……メルマ達の所まで歩いてく。
「よぉ、皆おつかれさん。」
「お前もな。……集合時間になったんで、ギルドに来てみたが、お前じゃなくて、メルマがいたから驚いたぞ……。」
「ホントにね。もー、あたし達はさ、散々捜してたっていうのに、メルマったら呑気に椅子に座ってお菓子食べてたんだよ~。」
「でも、何事も無いようで良かったよ。……これで、一安心出来るね。」
「ああ……まぁ、そうだな。」
皆、口々にそんな事を言う。
「……で、メルマ……お前、皆にちゃんと説明したんだろうな?」
「したよ。下水道の事とか、ミーニャちゃんの事とか。」
「そうか。」
メルマが、全員に話をしていた事を確認したので、これからどうするかを話し合う事にした。
…で、その結果…とりあえずあの三人組が言っていた、グエルとか言う幹部の居場所を聞くために明日、警備署に行く事に決まった。
……あの場で聞いておけば良かったが、メルマとミーニャを見付けた安心感で、すっぽりとそこら辺が頭から抜け落ちていた。
……まぁ、明日にでも聞けば良いだろう。
とにもかくにも、今日は解散という事になった。
__________
俺の部屋にて。
「お前、俺の部屋まで付いてきてるけど……帰らなくて良いのかよ、エルラ?」
「え、どうして?」
「いや……だって、アイナが心配するんじゃねーのかよ?」
「そうかもしれないけど……帰るのが、面倒臭くなっちゃった。暗いし…泊めてくれる?」
「それは別に構わねーけども……お前、アイナになんつって出てきたの?」
「夕方には帰るって、言った。」
「ふ~ん……ダメじゃん。もう夜じゃん。」
「いいの。……大丈夫だよ……多分。」
「いや、ダメだろ、お前…アイナがどれだけ心配性か、分かってる?今頃きっと、家の中、ウロウロしてるんじゃないかな?」
_______
少し前に遡り…
アイナの家……
「うぬぅ~……何故帰って来んのじゃ、あやつは……」
「ちょっとアイナ、落ち着いて下さいまし……。」
……夕方には帰って来ると言っていたのに、エルラは夜中になっても、未だに帰ってこない。
心配になって来たのか、ずっとそわそわしっぱなしのアイナは、ウロウロしている。
「あたっ!?」
「あーもう、動き回るからですわよ……。」
また、家具に足の小指を強打したのか、痛そうにしている。
「もう、そんなに焦らなくても……。確かにちょっと遅いですけど…そのうち、帰ってきますって。」
「しかしのう……。」
そう言いながら、また部屋を行ったりきたりし始めた。
そして……しばらくそうしていたら……
「……ええい、もう待っとられん、ちと街に探しに行ってくるぞ!!」
遂に我慢の限界が来たのか、家を飛び出してしまった。
「あー……行ってしまいましたわ……。……多分、追いかけても追い付けないから、大人しく留守番してましょう……。」
______
「……怒られても知らねーぞ?」
「……それは、その時にでも考えるよ。」
「…そうですかい。」
俺は、溜め息混じりにそう返事をした。
ソファーに座っている俺の隣にエルラがちょこんと座ってきた。
そして……寄り掛かってくると、エルラはそのまま目を閉じて眠ってしまった。
……本当に自由な奴である。
「はぁ……俺も寝るか……。」
明日は、朝早くから出掛けなければならないので、早めに就寝する事にした。
……寄りかかってきているエルラを起こさない様にしながら、そのまま横たわらせ……俺のベッドにある布団をかけてやる。
……すると、 ガチャッ!!と 部屋の扉が勢いよく開いた音が聞こえた。
「え、なに?」
扉の方を見ると、そこには……
アイナがいた。
「……夜分遅くにすまん……エルラを…って、おるではないか!!」
「……あれ、アイナ……どしたの?お前、しばらくは来ないって……」
「エルラが何時までも帰ってこないから捜しに来たんじゃよ。……全く、気持ち良さそうに寝おってからに……!」
「あ~……うん。帰るの面倒臭くなったから、泊めてって。」
「はぁ~、こっちは何かあったんじゃないかと心配しておったのに……これでは、我がバカみたいではないか……。」
アイナは、呆れた様子でそんな事を呟いた。
「ああ~っと……まぁ、コイツが帰らなかったのには、ワケがあんだよ。俺の用事に付き合ってもらってたっていうかなんというか……」
「なんじゃ?それは?」
「あ~……まぁ、話すと長いんだけどね。」
今日あった事をアイナに話した。
メルマが迷ってた事や、ミーニャの件など。
「ほ~ん……。なるほど……。」
「そうそう。」
「まぁ、エルラが何故帰ってこなかった……という事は分かった。……それは良いとして、そのミーニャという猫の獣人の幼子が狙われておったという話じゃが……。」
「……ああ、うん。明日、さっき話した男三人組の奴らに……そのアジトの場所でも聞きに行こうかと。……素直に話してくれるかは分からんけど。」
「ふむ、そうか。……それにしても……ボロギド組……のぉ。5年程前に名前を聞き出した組織じゃったか。」
「あ~……そうなんだ?」
「下っ端は、チンピラばかりで……集団でカツアゲやスリなどの犯罪行為をするだけのカス連中ばかりなんじゃがな……。幹部等の上の連中は、裏社会で名を聞く大物ばかりらしい。」
「へぇ~……そうなのか。」
「まぁ、詳しい事は我にも分からん。あくまでも噂で得た知識じゃからな。……出来れば、そんな危険な組織が関わってる事に首を突っ込んで欲しくはないが……」
「そういう訳にはいかねーな。あんなちっちゃな子が危険に晒されたんだ。見て見ぬふりなんて出来るわけがない。」
「まぁ、じゃろうな。」
「あぁ。」
「……ふぅ。仕方ないのう。」
アイナは、諦めたようにそう言った。
「止めても無駄だと言うのは分かっておるからの。……とりあえず……今日のところは、おいとまさせて貰おうかの。サメロアの事を置いてきてしまっておるしな。……エルラの事は任せるぞ。流石に、起こすのも可哀想じゃし。では、また来る。」
「お、おう。」
アイナにそう言われ、エルラを起こさない様に静かに部屋を出て行くのを見届けてから、俺は眠りについた。
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