第23話 遺跡の中へ2

「キヨトに何するんじゃ!!!!離れい!!!」


アイナの怒号と共に、背中の重さが失くなった。

どうやら、何かを蹴り飛ばしてくれたらしい。


「だ、大丈夫ですの!?キヨト!?」


サメロアが、寄ってきて声を掛けてくれた様だ。


「なんとか……。ありがとう、アイナ…。」



倒れている状態から起き上がり、吹っ飛ばされて、ガラスを突き破り壁に激突した何かを見る。

…それは、白い肌のヒト型の化け物だった。

目は虚ろ。体は傷だらけで血まみれだが動いている。

口には変な形の牙が無数に生えている。

手には刃物の様な爪が生えていて、足は獣のようになっている。


…あんなのに、のしかかられたのか…。


「油断するでないぞ!まだ姿を見せておらん奴が大量におる!」


「え?」


アイナがそう言ったと同時に…ガラス張りの向こうから風景に同化していた化け物が次々と姿を表した…。


さっきの奴とは違って頭に、よく分からないものが生えた奴や腕が何本もある奴、翼の生えた奴…とにかく普通の形状をしていない奴らばかりだ。


…既に護衛の人達は戦闘態勢に入っている。


「ギグシャアワー!」


奇怪な鳴き声を上げながら、こちらに向かってくる。

俺も構える。


しかし、アイナがそれを止めた。


「お主は調査隊の者の側におれ。被害が出ぬように障壁を作るのじゃ。」


「あ、ああ分かった。」


とりあえず、言われた通り調査隊の人達

を守ることにしよう。


「皆さん、俺の周りに!」


障壁を言われた通りに張っておく。


……にしても、数が多い。

ガラスの向こう側の部屋が埋めつくされるぐらいの量


そんな奴らがガラスを次々と割って一斉に襲って来た。

そして…そいつらをアイナ達は魔法やら剣技やら魔法やらで倒していく。


アゼルバードさんは、剣の残撃波。

ライリーさんは、とんでもない速さの打撃で

クロエさんは、氷属性の魔法で。

シルマさんは、短剣の妙技で。

アイナは、魔法と拳撃を織り交ぜながら戦う。


そして…しばらくすると全ての化け物を殲滅させたようだ。


そして…しばらくすると全ての化け物を殲滅させたようだ。


辺りに動くものはいない。

残っているのは、死体のみ。


粉々になっているものから、グチャグチャになってるものまで。


…だが、その中には綺麗に残っている死体もあった。


誰がやったのかは、分からないけどよくあの状況でここまで傷付けずに、息の根を止められるなぁ……。


「……っと、そんなことより、こんだけやりゃ、流石にもういないよな…?」


一応周りを見渡してみるが、特に変わった様子はない。


「キヨト、安心せい。ここにはもうおらぬようじゃ。気配や殺気を一切感じんからの。」


「そ、そうか……。なら良かったよ……。」


正直かなり怖かった。だっていきなり襲われたんだぜ? 心臓バクバクだよ。本当に死ぬかと思った…。


「……ん?」


そんな事を考えていると、調査隊の人達が、化け物の死体に集まって何やら話している……。


「……こいつら、何なんでしょうね…人の形してるけど…」


「…さぁ…ね。……とりあえず、持ち帰って化学班の奴らに見てもらった方が早い。」


そう言って、調査隊の人はアイテムボックスを取り出し、化け物の死体を全部回収してしまった。


「……うげぇ、あれ持って帰るのかよ……。」


思わず声に出てしまう。

確かに、未知の生き物の事を調べたいのは分かるけども……。


「……かなり凄惨な状態なのに、よく真顔で回収できますわね……。ある意味尊敬しますわ…。」


「…ホントにな。」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆



赤黒い扉の前に戻ってきた。


「よろしく頼みますぞ。」


バルバさんは、古代文字が読める調査隊の人に、先程手に入れたパスワードを機械に入力した。


ピピッという音が鳴り、ロックが解除されドアが開いた。

中に入ると、そこにはエレベーターのみたいなものがあった。


かなりの大きさで、ここにいる全員を乗せてもまだ余裕がある…。


「……乗り込んでみましょう。」


バルバさんの一言で全員がエレベーターに乗り込む。

全員が乗ったところで、バルバさんが操作盤にあるスイッチを押すと同時にゆっくりと動き出した。


______ ____


着いた場所は、薄暗い空間だった。

壁には所々に灯りが付いていて、視界がそこまで悪くない。


そして目の前には大きな両開きの扉があった。


その扉の奥からは何か異様な雰囲気を感じる。


「……開けますぞ。」


そう言うと同時に、バルバさんが扉を開く。


……中は、実験室のようで、壁際には何かを計測する機器が沢山並んでいる。


そして……部屋の中央に何者かが佇んでいた。


こちらに気付いたようで、ゆっくりと振り返ってくる。


服は何も着ておらず、全身の肌が白い。

身長は160cmいくかいかないかぐらい。


白いショートヘアの赤い瞳をした中性的な顔立ちをしていて、どっちともとれるが、男なのか、女なのか……判別が出来ない。



何故なら、下半身にどちらともとれるものが何もない。


「…………。」


……ジーッとこちらを見つめてくる。

だが、襲ってくる気配は感じない。

それどころか、何処か怯えているような……


「……さっきの化け物とは違いますな。……意志疎通がとれないか、確認してみますぞ。」


そう言いながら、バルバさんが近づき、そいつに声をかけた。


それに反応するようにそいつが口を開いた。


「……********************。***************?」


「こ、これは……」


そいつの声を聞いた途端、バルバさんは動揺し始めた。


…俺には、全く理解が出来ない言語をアイツは発しているのだが……。


そんな事を考えていると…古代文字を読める眼鏡をかけた隊員さんが前に出て…


「あのお方は、古代語で喋っていらっしゃいますね。……自分が会話しましょう。」

と、バルバさんに言った。


「ええ……よろしく頼みますぞ。」


バルバさんが返事をすると共に、古代語が読める眼鏡をかけた隊員さんがそいつに話しかけた。


「***************。」


「***************************。」


しばらく俺達には分からない問答が続き…何やら白い奴の様子がおかしくなってきた…。


「**************************!!!!!!!」


「**************************!!!」


眼鏡の人は必死に何かを訴えかけているが、何言ってるのか全く分からん。


すると、白いそいつから尋常じゃない殺気が溢れ出してきた。


「……!まずい!」


咄嵯に俺は、障壁を張る準備を始めた。

しかし……それよりも早く、アイナは動き始めていた。

アイナは、一瞬にしてそいつとの間合いを詰め、蹴りを入れる。

そいつの身体が勢いよく吹き飛ばされた。

ドガァ!!っと轟音をたてて壁に激突する。

その衝撃によって、部屋全体が揺れ動く。


…他の人達も戦闘に参加しようとするが、アイナが

「手を出すな!ここは我一人でやる!!他の者は今すぐここから撤退せい!!」

と、制止した。


壁に叩きつけられたそいつがゆっくりと起き上がる。

その姿は先程と違い、右腕から幾つもの触手の様なものがウネウネとひしうごめいている。


そして…


「え?」


気が付いたら、目の前にその触手が俺達全員に迫ってきていた。

ヤバい、喰らう。

そう思った瞬間に、突然目の前に透明な壁が現れた。

それは、まるで巨大な盾のように形を変え、迫り来る攻撃を防いだ。


「何ぼうっと突っ立っておるんじゃ!!さっさと逃げんかお主ら!!」


「わ、分かったぁーー!!!!!」


……アイナが食い止めている内に、この場所から離れてエレベーターに乗り込み…上の階層まで逃げた。



「あ、危なかったぜ……。」

アイナが助けてくれなければ死んでいたかもしれない。

そう思うと背筋がゾクッとする。

本当に死ぬかと思った……。

俺だけじゃなく、ギルドから直接選ばれたこの四人ですら反応出来ていなかった……。


「不甲斐ないな…せっかく選ばれてこの場所にいるってのになぁ……。」


アゼルバードさんが悔しそうに呟く。


「えぇ、本当にね。」


「……屈辱的です。」


「……でも、多分自分達じゃあ太刀打ちできなかった。」


…皆さん悔しそうにしている。


「……ねぇ、キヨト……アイナは大丈夫でしょうか?……彼女が強いと分かってはいますが…やっぱり心配ですわ…。」


……と、サメロアが俺に話し掛けて来た。


「大丈夫だと思うけどな…だったら、わざわざ一人残って戦わないと思うけど……」

と小声で答えた。


「…そうですけど……。……ああ、やっぱり気になりますの。ちょっと見てきますわ。」


そう言うと、サメロアは床をすり抜けていった。


「大丈夫だよな?」


…内心ちょっと心配になりながらも、俺は待ち続けるしかない。


「……ところで、何故あの白い子は急に激情して襲いかかってきたんですかな……?理性はありそうでしたが……。」


バルバさんが眼鏡の男の人に疑問を投げ掛けた。


「……酷い仕打ちを受けていたよう

ですね……拷問に近い。」


と、話し始めた。


「あの子は、人に作られた存在です。」


「作られた……ですか。」


バルバさんの問いに対して、眼鏡の男は淡々と答える。


「……はい。自分でそう言っていました。そして…実験と称してその身に余る仕打ちを受け続けていた……とか。それで……私達からそういった類の事をされると…思ったみたいですよ。」


「なるほど……」


バルバさんは納得していた。

俺は黙ったまま話を聞いていた。


「……今はアイナ殿が戻ってくるのを待つしかありませんな……。」


バルバさんは少し不安そうな表情を浮かべた。


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