第22話 遺跡の中へ
朝になり、飯食って色々準備した。
そして……早速遺跡の中へ行くことになった。
今回はギルドの調査隊の護衛をしつつ、遺跡を探索する形になっている。
そして、遺跡の入り口の前に立った時、先頭を歩いていたバルバさんが俺達の方を振り返って口を開いた。
「ここから先はいまだ解明できていない未知の文明の遺物がある場所です。くれぐれも油断せず、警戒を怠らぬようにお願い致しますぞ。」
そう言うと、バルバさんはゆっくりと遺跡への階段を降りていく。
それに続くように他のメンバーも中へ入り始めた。
それに遅れてはならぬとばかりに俺
も慌てて後を追う。
入った先は薄暗く、ジメッとした空気が漂っている。
周りを見渡せば壁や床はよく分からない何かで出来ていた。
それはまるで石のような、木のような、はたまた金属なのか……。
全く見当もつかない材質だ。
壁を触ってみると……柔らかくて硬いという矛盾した感触が手に伝わってくる。
内心、すげ~……などと思いながら辺りを観察しつつ、階段を進んで行った。
すると、少し広い場所に出た。
そこは天井が高くなっており、所々苔が生えていて、足元には小さな水溜まりが出来ていた。
そして、部屋の中心には大きな柱が数本立っている。
その柱の内、一本の側まで来たとき突然、天井の明かりが灯った。
それにより、視界が良くなり部屋全体がよく見えるようになった。
……奥に扉が二つあるのが見える。
一つは真っ黒で、もう一つは赤黒い扉。
「……なんで、急に灯りが?」
「さあの?……とりあえず、警戒は怠るな。」
アイナはそう言いながら、周囲を注意深く観察していた。
皆さんも警戒をしている。
しかし、そんな中でも俺だけは違った。
何せ、初めての遺跡探索なのだ。
しかも、こんな不思議な場所でワクワクしない方がおかしい。
一応、警戒はしているけども……やっぱり気になってしまう。
……そんな状態のまま、部屋の奥の二つの扉に近づいていった。
そして、赤黒い方扉の側には画面に見たこともない文字をを入力する、機械の様なものがある。
「……この隣にあるものは、扉を開ける装置な様なものでしょうか…?……古代文字が画面に羅列していますが……。」
「恐らくそうであろうが…迂闊に触らない方が吉じゃ。」
アイナはそう言い、その機械みたいなものをじっくり見ていた。
確かに、こんな訳のわからないのに触れたらどうなるか分かったもんじゃないよな。
黒い扉の方の側には特に何も無い。
バルバさんが扉に近付くと……勝手に開いた。
扉の向こう側は先が見えない通路になっている…。
「…何もしていないのに開きましたな…。」
「先に進んでみましょう……。何かあるはずです。」
……と調査隊の人がそう言った。
「そうですな。」
バルバさんもそれに同意する。先へ進むことにした俺達は、慎重に歩を進めて行った。
道幅も広く障害物なども一切ない、とても歩きやすい。
だがやはり、警戒はしておくべきだろう。
それから少し進んだら…通路に変化が現れ始めた。
今までよく分からない物質で出来た通路だったのに……急にガラス張りの通路に変わったのだ。
その光景は、まるで近未来を思わせる感じだった。
そして、そのガラスは透けていて……その向こう側の風景も見える。
「何だあれ…?」
ガラスの向こう側には割れた培養カプセルの様なものが無数にある。
そして……その割れたカプセルの内の一つの側に…異形の何かが倒れていた。
色は白く、人の形こそしているが……所々ぐちゃぐちゃになってしまっている。
腕らしきものは変な方向に曲がっており、足は片方が引きちぎれてしまっている。
そして頭は潰れてしまっていて、顔が分からない。
「こんなもの今までの遺跡ではなかった。…ここは、一体どういう施設……?」
バルバさんの呟きを聞き、俺は疑問に思ったことを口にした。
「今までって……どんな感じの遺跡だったんですか?」
「……日常生活の道具などを作る工場のような場所でした。」
バルバさんがそう答えた。
「そうですか……。」
見るからに何かを実験していたような場所だ。
「……とりあえず、先に行ってみましょう…。」
バルバさんがそう言うと、皆がうなずいて進み始める。
俺もそれに続いて歩いていくと……今度は開けた場所にでた。
そこには大きなモニターがあり、先程の大量の割れたカプセルが映し出されている。
周りには、コンピュータの様な機器が沢山ある…。
「これまたがらりと様子が変化しましたな……。」
バルバさんがそう言う。
確かにその通り。
今見ている場所も、さっきの所も明らかに違う場所だ。
それにこの機械の山。
まるで、SF映画に出て来るような場所だ。
そんな場所を調査隊の人達は、慎重に調べ始めた。
護衛の方々もいつ、何が起きても良いように警戒をしている。
「……この機械って、どう使うものなんだろうな?」
「さあの?」
俺とアイナは調査隊の方々が調査している間に少しだけ話をしていた。
しかし、特に進展は無く俺達は機械の方に興味を移していた。
この部屋にある機械は……パッと見で、さっきのガラス張りの通路から見えた培養カプセルのなんかだとは思うけど…。
「未来的な場所だなぁ。古代遺跡のはずなのに。」
「……そうじゃな。」
「わたくし、こんなもの見たことありませんの。……ちょっと、色々と見てきますわ!」
そう言うと、サメロアは機械の方へと向かって行った。
「……あ~、行っちゃった。」
「元気じゃなぁ。」
「そうだなぁ。」
……機械を見て興奮しているサメロアを見ながら、周りの機械を見渡す。
……ん? 何か機械の上にかなり薄汚れた紙切れが置いてある。
近づいて確認すると……よく分からない文字で、何か書かれている。
「どうかしたかの?」
「いや……この機械の上に置いてあるこれ…。」
「……ふむ…なるほど…。」
紙切れを見たアイナは、バルバさんを呼んだ。
「どうかしましたかな?」
「紙が置いてあったんじゃ。何か書かれておるみたいなのじゃが、分かるかの?」
「……おお、これは古代文字ですな。私は読めませんが、隊の中に読める者がおりますぞ。」
そう言うと、バルバさんが隊員の一人を呼びに行った。
そして、眼鏡をかけた真面目そうな男性を連れて来た。
「どうですかな?読めそうですか?」
「えぇ、なんとか。」
バルバさんに呼ばれた男は、その紙に書かれていたものを読み上げ始めた。
「念の為に生物実験室へのパスワードを書き残しておく…。パスワードは、エルラ・ガバナンス……と書いてあります。」
「……生物実験…パスワードですか。……あの入り口付近にあった赤黒い扉の先がそれ、なのですかな?」
バルバさんがそう聞くと
「おそらく、そうでしょう…。」
男の人がそう言った。
「とりあえず、まだここに何かないか調べてから…あの場所に戻りましょうか。」
「そうですね。」
そして、しばらくこの部屋の中を調べた。……が、何もなかったようだ。
そして、そのまま俺達はあの赤黒い扉があるところに戻るためにガラス張りの通路を通っていくことにした。
……?
よく見てみると、奥の方に先程はなかった、ぐちゃぐちゃの肉片が転がっていた。
「……あんなのあったか?」
ジーッとそれ見つめていると、嫌な予感がした。
……前からではなく、後ろのガラスの向こう側から視線を感じた気がした。
そして、後ろを振り返ろうとした瞬間……ガラスの割れる音と共に
「アアァアェォアァュエァァーーーーー!?!!!?!」
という訳の分からない叫び声が聞こえてきた。
「うおわっ!?」
背中に急な重荷が掛かる。
俺は思わず前のめりになり、その場に倒される。
「アアァアァォーー!?えぇるらぁーーー!!!?」
何かにのし掛かられた俺は、地面に倒れたまま動けなくなった。
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