第17話 古代遺跡とは

今日もいつも通り部屋でボーッとしていると、メルマとクライエットが入ってきた。


そして、メルマはベッドに。

クライエットは俺が座っているソファーに座ってきた。


「やあやあ!昨日ぶり!」


「ああ。元気にしてたか?」


「もちろん!元気元気!」


クライエットは明るい笑顔を見せてくれた。


「それは良かったな。」


「うんうん!」


彼女は、元気よく返事をした。

すると、今度はメルマが口を開いた。


「それで、今日は何かするの?」


「うーん……。」


別に、何かやらなきゃいけない事がある…という訳でもない。


依頼を受けに行ってもいいし、1日ボーッとしててもいい。


「どうしようかねぇ……。」


俺は頭を悩ませた。


「んー……あ!そうだ!」


何か思いついたように声をあげるクライエット。


「どった?」


「そういえばさ、最近新しく古代遺跡が見つかったらしいんだよね。」


「へぇ…そうなんだ。…知らなかった。」


「…古代遺跡?…なんだ、そんなもんがあるのか?」



「…キヨト…知らないの?」


「まぁ…知らんな。」


「え?知らないの?」


「ああ。」


驚き、顔を見合わせる二人。

そんなに有名な話なのだろうか?


「もしかして、一般常識レベルの事だったりするのか?」


「…そうだけど…。」


「あー…そうなのか…。」


「…まぁ…知らないならしょうがないよ。」


「…そうだね。」


二人は、苦笑いしながらそう言った。


「……とりあえず、その古代遺跡ってのはどんな場所なんだ?」


「えっとね……まぁ、言葉のまんまではあるんだけど……。」


「……?」


「…古代の人が作ったものとかが沢山あるんだ。大体、数千年程前の物って言われてるの。それも、今の技術では再現出来ないようなものが沢山ね。…で、遺跡の特徴としては、地面に埋もれてて…地下に続く道が隠されてるんだよ。だから、あんまり見つからないんだよね。最初の遺跡が発見されたのも、今から60年ほど前なんだ。なんでも、地震による地盤沈下によって、たまたま地下への道が浮き彫りになった…とか。」


「ほぉ…。」


「それが最初の発見。それから今までに4か所見つかったんだ。今回の発見で5か所目だね。」


「なるほどねぇ……。」


「それで…古代の遺跡の中には、すっごく価値のある物ばっかりなんだ。…例えば、いつもあたし達が当たり前の様に使ってるアイテムボックスも。」


「なぬ?」


「これも、古代遺跡で発掘されたものなんだよ。」


「マジで!?」


「うん。…まぁ発掘されてからこのアイテムボックス一つだけで詳細を解明して、量産をするっていうのに40年はかかってるんだけど。」


「そ、そうなのか。」


「他の発掘された物も未だに分からない事が多いらしくて……解析も進んでないみたいだし、まだまだ研究中みたいな感じだね。」


「へぇ~…凄いんだな、古代の人達って。」


思わず感嘆の声が漏れてしまった。


「うん。本当にね。遺跡にはきっとまだまた想像も付かないようなものが沢山眠ってるんだろうなぁ。」


「そうなんだ。」


「…歴史って謎ばかりだね。」



……俺は、改めてこの世界は俺がいた世界とは違い、不思議が多いのだなと感じた。


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


クライエット曰く、古代遺跡が見つかれば、そこに向かう為の調査隊が編成される…との事。


その中には、万一の時に備えて実力者を集うらしい。


古代遺跡の中には…何が潜んでいるか分からない。


…だから、実力者を集う為にギルドに直接依頼を出すそうだ。


そして…そのギルド内で実力が認められる者が、そのまま調査隊のメンバーに推薦されるらしい。


これは、とても名誉な事だとかなんとか。


まぁ、名誉だとかそういうのは、どうでもよくって、俺は古代遺跡ってのに心惹かれた。

だって、ロマンじゃん。

それに、なんかワクワクするし。

だから是非とも、俺もその調査隊に入ってみたいと思った。


「…というワケで、詳細を聞きに来てみた訳です。」


「ほ~ん…なるほどな。お前もメンバーに入りたいってクチか。」


「ええ、まぁ。」


執務室にいるグラゴルさんに直接話を聞きに来た。


「俺としては構わんぞ。」


「お!本当ですか!」


「ただ、問題がある。」


「問題?」


「まだ、それに関する依頼が届いてない。まぁ、時間の問題だとは思うが。」


「そ、そうなんすか?」


「おう、それによ、他のギルドからも推薦枠を貰おうとしてる奴なんてゴロゴロいるし…何より調査隊に推薦するにゃ、実績が必要だからな。」


「じ、実績っすか??」


「ああ。……推薦されるのは大抵、長年ギルドにいて、尚且つ最高ランクの依頼をこなしてる奴らばっかだからなぁ。更に、その中でも名の通った5名しか選ばれねぇ。…お前、まだ入ったばっかだし、そーいう依頼だってまだこなした事ねーだろ?」


「はい、無いですね。」


「だったら、まずは最低条件をクリアしないといけねぇ。……推薦してもらう為の実績作りってやつよ。」


「あ、なるほど。」


「…最高ランクの依頼なんてそう滅多にくるもんじゃねーから…まぁ、地道に行くしかないのよな。」


「…そうっすね。」


ふむ……。


とりあえず、このままでは遺跡探索は出来なさそう…。

_______


執務室の外に出ると…なんか近くの椅子にアイナとプカプカ浮いてるサメロアがいた。


「お、なんだ、来てたのか?」


「む?キヨトではないか。グラゴルの執務室から出てくるとは…何かやらかしたかの?」


「失礼だな、なんもやらかしてねーよ。」


「フム……では、何をしていたのじゃ?」


「えっと、実は古代遺跡の事でよ…。」


「ほう、古代遺跡とな?…そういえば、新しく見つかったと聞いておるが…。」


「それがどうかしたんですの?」

2人が食いついてきた。

俺は2人に事情を話した。


「なるほどのぅ……。」


「…今の状態で、推薦は流石に難しいですの。」


「まぁな……。」


やはり、厳しいようだ。……だが、諦めたくはない。


「……でも、やっぱり俺は行ってみたいなぁ…。だってロマンじゃん…古代遺跡って響きだけで。」


「ロマンですか…。確かに…古代の失われたものが残っている場所…。それだけで心踊るものがありますの。…わたくしも興味あります」



「なんじゃ、お主も古代のロマンがなんちゃら…とか言うのかの?」


「はい、言いますわ。……だって、わたくし…ロマンチストな幽霊ですもの!!」


ドヤァ!!といった顔をしながら、胸を張るサメロア。


「……ところで、キヨトよ。メルマはどうしたのじゃ?今日は一緒にはおらんのかの?」


「ああ…あいつなら今頃自分の部屋でゴロゴロしてるんじゃないかな?」


「ちょ、無視しないで下さいまし!!」


「うおっ!?」


急に大声を出して、突っ込んできたサメロアに驚く。


「ちょっ、てめ、いきなりでかい声出すなよ…。」


「無視するのが悪いんですの!」


「ああ…悪かったって。…アイナは驚いてないのか?」


「逆に言うが…あれぐらいでお主は驚きすぎじゃ。もう少し胆力をつけた方が良いぞ。」


「…へぇい。」


そんなこんなで、ちょっと騒いだ後…


「さっきの話に戻るけど…実際、どうしようかなぁ。」


「実績を作る事から始めるしかないと思いますの。」


「だよなぁ…。う~む。だが今からそれをやったとして…間に合うとは思えん。最高ランク…SSクラスの依頼なんて…見たこともねーし。」


「…そりゃ、そうじゃろうの。その次元の依頼となると、個で国を壊滅させかねない程の力を持ったモンスターの討伐が主じゃしな。そうそうお目にかかれる事はない。」


「…うへぇ…。SSランクって危険度で言うとそんなになのか…。一番ヤベェ…ぐらいにしか認識してなかった。」


「まぁ、それ程危険な依頼と言うことじゃな。これが来るという事はある意味一種の緊急事態。……国が滅ぶ可能性があるということじゃからの。」


「マジか……。」


SSランクの依頼が来る……それはつまり、この世界にとっての脅威が迫っているということになるのか。


「ちなみに、どんな感じの奴がいるんだ?」


「そうじゃのう…。我が見てきた中じゃと…ドラゴンの希少種やスライムの突然変異種…など色々おる。」


……なんだろう。俺が思っていたよりも凄くヤバそうな気がしてきたんだけど……


「…ん?アイナ…今、見てきたとか言った?」


「そうじゃが…それがどうかしたかの?」


「……ちゅーことは、お前、SSランクの依頼…受けた事あるって事か?」


「まぁの。過去に何回も受けた事はあるぞ。一人で行ったこともあるの。……何じゃ、呆けた顔して?」


「…いや、滅茶苦茶な事言ってるなぁ…って…。」


アイナは首を傾げる。


……国を壊滅させかねない奴とタメ張れるってなに…?化け物ですか?


……あ、そういえば、アイナって最強の魔法使いとか言われてるんだった。


だが、それにしたって強すぎるだろ……と思った。




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