第16話 1日

「…。」


「おはよう。」


朝起きると、ベッド目の前には…メルマが立っていた。


「あの……なんでこんな時間に俺の部屋にいるの?」



「鍵が開いてたから入った。別に、いつも通りでしょ?」


「……いや、確かにお前が俺の部屋に入ってくるのはいつも通りだが、こんな朝っぱらに入ってくんなよ…。」


「大丈夫。私は気にしないから。」


「俺は気にするけどな。…後、寝間着から着替えるから一旦出てけ。」


「おけ。」



そう言うと、メルマは素直に出て行った。


「まったく……。」


…まぁ、いいや。

とりあえず、さっさと着替えてしまおう。




「ふぅ。」


身支度を整えたので、メルマにもう入ってきていいと伝えた。


すると、すぐさま扉が開いて中に入ってくる。


「それで…?こんな朝っぱらに来るなんて…何か用でもあんの?」


「暇だから遊びにきた。」


「あーはいはいそうかよ。」


「うん。」


「じゃ、帰れや!」


「嫌だ。」


「即答かい!……お前な、俺だって色々とやる事があるんだけど。」


「例えばどんなこと?」


「そうだな。まずは朝飯を食うだろ?その後は歯磨きしたりとか。」


「うん。続けて?」


「後は昼まで寝たりだな。んで、起きて、気が向いたらギルドに行って依頼をこなす。そんくらいかな。」


「なるほど。つまりは暇なんだ。」


「おう、そだな。」


「…じゃあ、私はここにいるね。」


そう言って、メルマはベッドの上に座っていた。



「ああ、うん。まぁ、好きにしろ。」


「うん。」


そう言うと、メルマは俺のベットで

ゴロゴロし始めた。


本当に自由だよなこいつ。


…まぁ、いいや。


別に嫌なわけじゃないし。


…と、思っていたら、また部屋の扉が開いた。


そちらを見るとそこには、クライエットがいた。


「おはよう~キヨト。」


「今度はお前か…。」


彼女は、そのまま部屋に入り、ソファーに座った。


「…何か用?」


「いや、特に用はないよ。キヨトと、きっといるであろう、メルマに会いに来ただけ。」


「…そーですか。」


…彼女がここに越して来てからというもの、何かと俺に絡んでくるようになった。


最初の内は、ギルドのマスターの娘さんだということで、敬語で接していた。


だけど、それを彼女はあまり好まない様なので、すぐにタメ口で話すようになった。


そして、何故かメルマ同様、勝手に部屋に入ってくるようになった。


引っ越しの挨拶に来た時はちゃんとノックしてたのに…。



「俺の部屋は溜まり場じゃないのに…何でぞろぞろと入ってきやがるのかね…。」


「えー、別にいいじゃんか~。ねぇ、メルマぁ。」


「うん。全然問題ない。私が許可する。」


「いや、ここ俺の部屋だからな?勝手に主導権握ろうとしないでくれる?」


そんな感じで、今日も一日が始まった。



☆ ☆ ☆ ☆ ☆


…あれから、三人でしばらく過ごした。

とりあえず、やる事もないので皆でギルドに向かう。



そして早速到着し、依頼掲示板の方に足を向けた。



「…さーてと、どんな依頼があるかな~。」


そう言いながら、貼ってある依頼書を物色する。


すると、メルマが一枚の依頼書を手に取った。


「これ行きたい。この前、行けなかったやつ。」


その依頼内容を見てみると、この前受けようとした採集のクエストだった。


「確かに、この前はクライエットの騒動に巻き込まれて行ってなかったな…。…」


「そうなの?それは…ごめんね。」


「いや、謝る必要はねーぞ。別に気にしてねーし。」


「…そう?なら良かった。」



「…んで、その依頼を受けるんだよな?」


「うん。」


「そうか。…クライエットも行くか?」


「…そうだね…あたしも行かせてもらうよ。今日は、特に目ぼしい依頼はないし。たまには誰かと一緒に依頼受けるのも悪くなさそう。」


「ん。了解っと。じゃ、受付に行こうぜ。」


そう言って、俺達は受付に向かっていった。


「あら、皆さんおはようございます。今日は、クライエットさんもご一緒に行くんですか?」


いつも受付にいるソティナさんが話しかけてきた。


「そうなの。今日は、クライエットも一緒。賑やかで楽しい。」


「良かったわね。」


「うん。」


メルマは笑顔で答えた。


「あはは、嬉しそうね。」


「うん。嬉しい。」


「…それじゃ、依頼の確認をしますね。」


「あ、はい。お願いします。」


それからしばらくした後、確認が終わった。


「じゃあ、行くか。」


「うん。」


「レッツゴ~。」


「お気を付けて~。」


ソティナさんに見送られながら俺達はギルドを出発した。



☆ ☆ ☆ ☆ ☆



目的地に着くまでの間、俺は二人と雑談をしていた。


因みに、今歩いている場所は草原である。


「…そういえばさ、最近なんか目立った事とか起こってるん?俺、世間に疎いからさ…そういうこと全然知らんのよ。」



話題を振りつつ、最近あった出来事について二人に聞いてみた。



「うーん、そうだね~。最近は特に何もないよ。平和そのものかな。」


「私も特にないと思う。」


「へぇ~、そっかぁ。」


どうやら、大きな事件は起きていないらしい。


「まぁ、言うてたまにボロギド組の奴らがたむろってるくらいかな。」


「ボロギド組?」


「うん。一人でいる人に群がって恐喝する連中。他にも、裏で色々とやってるらしいんだ。」


「ほう。」


「でも、街の警備が厳重になってきたからか、最近はめっきり見なくなったけど。」


「ほーん…。」


「私は、最近みかけたし、なんなら実際に被害を受けた。」


「マジで!?」


「大丈夫だったの?」


「うん。一人気絶させたら退散していったから大丈夫。」


「そ、そうか。」



(こいつ、見た目の割には強すぎだからなぁ…。)


小学生みたいな身長しといて、俺より魔法の扱いが上手い。…メルマがどれぐらい強いのかは、本気で戦ってるとこ見たことないから、皆目検討もつかん。


「……今、私の事小さいって思った?」


「思ってないです!」


「ふぅん……。」


ジト目を向けてくるメルマ。


「いや、ホントだって!信じてくれよぉ……。」


「まあまあ、落ち着いて落ち着いて。」


「むぅ……。」


少し不満げだが、なんとか納得してくれたようだ。


「ところで、クライエットは何か事件に巻き込まれたりしなかったのか?」


一応、念のため聞いてみる。


「あたし?いや、特にはないね。」


「そうか。でも、一応気を付けとけよ。世の中何が起きるか分からんからな。」


「あはは、大丈夫だって。あたしがあんな貧弱な連中に負ける訳ないから。でも、一応用心はしとくよ。」


「おう、しとけしとけ。」


…そんな会話を続けながら、目的の場所に向かった。


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


あれからしばらくして、目的の森にたどり着いた。



「よしっ、んじゃ、採集を始めるとするか。」


「うん。」


「おっけー。」



三人で、この森に生えているという目的の薬草を探す。



そして、探すこと数十分後……ようやく見つけた。


早速、採取に取り掛かる。

まずは、葉っぱの方を切り取る。

次に根っこの部分を掘り起こす。

最後に茎から切り取り…アイテムボックスに突っ込む。


これでオッケーだ。


ちなみに、葉っぱだけでも結構な量になる。


なので、3人で手分けして採ることにした。



ある程度、採集が進んだ所で休憩を挟み、昼食を取ってまた作業を再開した。

それから数時間後……


「まぁ、こんだけ集めりゃいいだろう。」


「うん、そうだね。」


「いっぱい集まった~。」


アイテムボックスに詰め込めるだけ詰め込んだから、足りないなんて事にはならないはずだ。


「さてと…じゃあ、帰るか!」


「おー。」


「帰ろー帰ろー。」


…俺達は、そのまま帰路についた。


街に着いた頃には、時刻は既に夕方になっていた。

日が暮れかけているため、辺りはかなり薄暗い状態になっている。



「すっかり暗くなってきたね。ゆっくり帰ってきすぎたかな?」


「かもしんねぇなぁ。」


「お腹空いてきたなぁ~。」


「それもそうだな。さっさと依頼達成の報告しちまってよ、食堂で飯食おうぜ。」


その後、報告をして、報酬を受け取った。


ギルドを出てからは、宿舎に向かって歩いていく。


_宿舎に戻り、食堂に向かう。

今日のメニューは……肉料理みたいだ。


「……。」


「…もぐもぐ。」


「…うわぁ、ホント…よく食べるね…。」



目の前では、メルマが美味しそうにご飯を食べている。


その量はいつも通り凄まじいものであり、見ているだけで満腹になりそうになる。


向かい側で食事をしているクライエットも引いている様子だった。

しかし、当の本人は気にした素振りを見せず、黙々と食べ続けている。


「……ご馳走様でした。」


…数分経つと、満足そうな顔をしながら食事を終えた。

…メルマの周りには大量の食器が積み上げられている。


「あんなにあったのに…。」


「ふー……」


大きく伸びをするメルマ。


彼女曰く、あの程度は普通の食事量だと言いやがるのだから恐ろしい。


俺は、そんな彼女の隣に座っていた為、若干胃もたれ気味である。


「……。」


…その後、ご飯を食べ終わったら直ぐ様部屋に戻って、風呂に入り寝た。


…明日もこんな風な1日になるんだろうなぁ…なんて思いながら。


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