第11話 この前の小さな女の子

ギルドに向かうために部屋を出ると、丁度よく左の部屋の扉が開いた。


そこから出てきたのは…この前道に迷っていた、ゴスロリファッションな黒髪ロングの小さい女の子だった。


「え?」


「…え?」


俺達は、互いの顔を見つめる。

女の子は、何でここにいるのか…という事を聞きたげな顔をしていた。


「えと……、この前は…どうもありがとうございました。」


「あ?…ああ…、それはどういたしまして。」


「…隣…空き部屋だったハズなんだけど…いつ、越して来たの?」


「今さっき。…てか、君もギルドに所属してたのか。」


「うん。」


まさか、とは思っていたけど本当にギルドに所属しているなんて…。


だって、こんな小さい子がモンスターと戦っている姿なんて想像出来なかったから。


「…ねぇ、貴方もこれから、依頼を受けに行くの?」


「そのつもりだけど。」


「そっか。…なら、また一緒に連れていってくれない…?」


「ああ…別に良いけど。」


「…ありがとう。私、かなりの方向音痴なんだよね…。行った事のある場所なのに…迷っちゃうなんて事が…かなりの頻度で起こるから…。」


「た、大変だな…。」


「うん。大変…。迷う度に人に道を聞かなきゃいけないから…。…それでも、迷う時もあるんだけど…。」


「あ、アハハ…。」


…という事で、ゴスロリの女の子とギルドに向かう事にした。


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


「…そういえば…貴方…名前は何て言うの?」


道中に、彼女はそんな事を聞いてきた。


「俺の名前か?清人だ。」


「キヨトって言うんだ…。…私は、メルマっていうの。…隣の部屋になったのも、何かの縁だし…良かったら、覚えておいて。」


「分かったよ、メルマ。」


「…うん、よろしく。」


それから、雑談を交えながら…メルマが変な方向に行かない様に注意して歩いた。


…そして、しばらくして、ギルドに辿り着いた。


「よーし、着いたぞ。」


「うん。」


とりあえず中に入って、受付の場所まで行く。

さっき、俺のギルド所属の手続きを済ませてくれた金髪の人が立っていた。


「あら、メルマちゃんに…キヨトさん?」


「…こんにちは、ソティナさん。依頼を受けに来たよ。…キヨトには、ここまで迷わない様に、連れてきてもらった。」


「そうだったの。…貴方達、知り合いだったのね。」


「うん、そうなの。」


「そうなのね。……メルマちゃんの事、送って下さってありがとうございます、キヨトさん。この子ったら、一人で歩くと変な方向に行っちゃいますから。依頼を受けて、それが達成してても戻ってくるのに2、3日かかった事だってあるんですよ…。」


「……。」


…コイツの事、一人にしない方がいいんじゃなかろうか…。


本当にその内、どっかで野垂れ死にしちまいそうで怖い。


…それと、この受付の人、ソティナさんって名前なんだ…。

…覚えとこ。


「え~と…依頼を受けに来たのよね。貴方達、二人で行くの?」


「…いや、そこまでは決めてないけど……そうだね…良かったら、依頼も一緒に行く?」


「俺は、別に構わんぞ。」


「…なら、一緒に行こう。」


「分かった。」


…その後、依頼を選びそれを受けて目的の場所へと、向かった。


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


「…にしてもさぁ、本当にこの難易度のクエストで良かったのか…?危なくないか?」


「うん、これでいいの。だって、報酬金が高いでしょ?…Aランク位のモンスターなら、私一人でも、どうにかなるから。」


「…本当なのかなぁ…?」


メルマが選んだ依頼の難易度はEからSSまであるランクの中で3番目に危険なA。


その内容は、ラージラビット…とかいうでっかい兎のモンスターの討伐。


…周りには、子分のスモールラビットとかいう小さい兎を数十匹引き連れているらしい。


たったそれだけなのに、何でAランク?

ただ、でかい兎が小さい兎を引き連れてるだけじゃ?とも、思った。

けど、こいつはでかいクセにすばしっこくて、力もとんでもないらしい。


それに加えて、引き連れている小さい兎は単体での強さはCランクとそこまで強くはない。

…が、塵も積もれば山となる。…群れている時の厄介さはかなりのものらしい。


兎とは、危険な生き物だったろうか?

少なくとも俺がいた世界では、可愛らしい生き物だった…


「……って、おい、何処行こうとしてるんだメルマ、そっちはラージラビットが目撃された場所から反対方向だぞ?」


「…え?…あれ?こっちじゃないの…?」


…少し目を離した隙に、あらぬ方向に行こうとしたメルマは、困惑しながら俺の事を見つめてきた。


「違うからな。そっち行ったら、目的の場所から遠のくからな。」


「……私、また変な方向に行こうとしちゃってたんだ…。…ごめんなさい…。」


「いや、別に謝らなくてもいいんだけども…。…それより…どっか行かない様に気をつけろよ…。」


「…うん。」


…本当にこの子は、Aランクのモンスターと戦えるのだろうか…。


…新米なのに実力は折り紙付きだと、受付のソティナさんも言っていたけど…おっちょこちょいで、心配になってくる。


「…まぁ、いいや…。とりあえず、行くぞ。」


「うん。」


メルマが、また何処かに行かないよう、目を光らせながら目的の場所へと向かった。


☆ ☆ ☆ ☆ ☆



「おー…案外すぐ見つかるもんだなぁ…。」


目撃があったという場所まで来て…少し歩いていたら、あっさりと見つかった。


全長が2mくらいある巨大なウサギ。

周りには、数十匹の小さいウサギがいる。


「見てるだけなら…可愛いらしいんだけど、一応、あれでもモンスターなんだよなぁ…。」


大人しそうなクセして、こいつら人を襲って貪り食う事もあるというから恐ろしい。


「…とりあえず、あっちが気付いてない内に先制攻撃だ。」


「うん。まずは、周りの小さい子達から…。」


そう言うと…メルマは大量の火の玉を出現させ、ウサギに向かって放った。


油断していたウサギ達の殆どに当たり…小さい兎達はこんがりと焼けていく。


「おー…結構やるねー。」


「これくらい出来なきゃ…モンスターとなんか渡り合えないよ。…さ、残った子達が来るよ。」


「お、おう。」


…襲撃に気が付いたウサギ達は、こっち向かってピョンピョンと跳び跳ねてくる。


…そして、でかいウサギは、一回の跳躍で少し距離のあるこちらまで跳んできた。


着地した瞬間に大きな振動が発生して、転びそうになるも、なんとか持ちこたえた。


…そして、でかウサギの方を見てみると…俺達の事を凄い形相で睨みつけてきていた。


「こわ。」


「来るよ…!」


…襲いくるウサギ達を、メルマと一緒に討伐しまくった。


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