第12話 色々なお話
あれから、ラージラビット達の亡骸をアイテムボックスで回収した。
…メルマは俺の出番がいらない程の活躍をしていて、本当に実力は相当なものだった。
なんと魔操術が使える様で…高威力の魔法を連発したり、身体能力を向上させたりで…とにかく強かった。
…これで、方向音痴という心配要素さえなければ、頼りがいのある奴なんだけど…。
まぁ、そんな事は置いておいて、俺達は依頼達成の報告の為に、ギルドへと帰還していた。
「はい、確かに…ラージラビットが入ってますね…。お疲れ様でした。これが報酬です。」
「ありがとうございます。」
ソティナさんから報酬を受け取り、そこからメルマと分けあった。
「ふぃ~…なんか疲れたぜ~。それと…腹も減ってきたなぁ…。」
「…もうそろそろで夕方だし、いっぱい動いたからね。」
「だな。」
…そんな事を話していると、丁度よく二人からぐぅ~という音が鳴り響いた。
「……………。」
メルマは、恥ずかしそうに頬を赤らめた。
「お前も腹鳴る位には、空いてんのね。」
「……うぅ…。」
「ハハハ、別に恥ずかしがる事なんかねーよ。生理現象だ。さ、腹減ってんなら、飯だな。寮に帰ったら、食堂でたらふく食おうぜ。」
「………。」
赤い顔のまま、コクコクと頷くメルマ。
…俺達は食堂に赴いた。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
「うめぇーなー。」
「…お腹が空いてる時のご飯は絶品だね。」
「そうだな~。」
メルマと一緒に、うまい飯にありつく。
とんでもなく豪華で、おかわりもし放題。
これが毎日食えるなんて、良い意味で値段と釣り合っていない。
「……にしても、お前、結構食うんだな。」
「え?」
茶碗一杯分のご飯を俺が食べ終わる頃に、メルマは、丼から盛り上がる程によそったご飯を軽く食べ終えている。
今は二杯目。
それに加えて、他の物も大量に詰め込んでいる。
「よく食うなぁ。男でもそんなに食わんだろ。」
「そうかなぁ…。キヨトが少食なだけじゃない?」
…と呟きながら料理を次々と口の中に運ぶメルマ。
「…いや、お前がただ食いしん坊なだけだな。」
「…わふぁし、ほんなんにふいふぃんぼーふぁ、ふぁいもん。」
「あん?なんだって?…食いもん飲み込んでから喋ってくれ。」
「……ゴクッ………私、そんなに食いしん坊じゃないもん。」
「そーですか。」
「そうだよ~。」
よく食べるメルマを尻目に、俺はゆっくりと飯を頂く事にした。
…それにしても、彼女はなんで魔操術が扱えるのだろうか。
習得が尋常じゃないくらい難しいので、覚えている者自体が少ない…とアイナは言っていた。
どうやって覚えたのか気になったので、質問してみる事にした。
「なぁ、メルマ?」
「ん?…なに?」
「お前ってさ、さっき魔操術使ってたじゃんか…。あれ、何処で覚えたんだ?」
「え?……ああ、それは…王立魔法学校で教えてもらったの。私、一応あそこを首席で卒業してるんだ。だから魔法に関しては、結構できるつもりだよ。」
「……お、王立魔法学校…。」
「うん。」
確か、この国自体が運営している、エリート達が集う凄い学校だったかな。
そんな話をアイナから聞いた覚えがある。
「へー…そんな所を首席で…。スゲーじゃん。」
「えへへ、ありがとう。……でも、キヨトだって魔操術使ってたよね。あれって、どうやって覚えたの?」
「ああ、それなら、アイナっていう、九尾の狐の人に教えてもらったよ。」
「へ?九尾の…?……まさか、それって…アイナ・リヴァリスココンさんの事だったりする…?」
「おう、そうだぞ。…っていうかお前、アイナの事知ってるんだな。」
「そりゃ知ってるよ。だって、ギルドに所属している人の中で一番強くて、最強の魔法使いなんて言われてるんだもん。…知らない方が珍しい位だよ。」
「は?……なんだそれ?…初耳なんだけど。」
「…し、知らないの?」
「ああ、一緒に暮らしてたけどそんな話、本人から聞いたことなかった。」
「……え?…一緒に暮らしてた…?どういう事?」
「あ~と、実は、路頭に迷ってる所を拾われてな。魔法とか、茶の事とか…とにかく色々な事教えてもらってよ、感謝しきれねぇぐらい世話になった。」
「そ、それホント…なの…?」
「ああ、嘘じゃねーよ。本当の事さ。」
「そ、そうなの……。」
ただ者ではないと思ってたけどて……、まさかそんなに大層な肩書きを持っているとは…。
「…キヨトって、…凄い人のお弟子さんだったんだね…。」
「弟子?…ん~、まぁ、見方によっちゃそうなるのか?……でも、そうか…弟子か…。」
最強の魔法使いの弟子。
字面だけで見たら、格好良さそうだし何より強そう…。
「へへ…なんか、良いな…。」
…そんな事を考えながら、食事を再開するのだった。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
食事を終えた後は、汗を流す為に自室に戻って風呂に入った。
そして、今はソファーに座って休んでいた。
「ふぅ~。疲れた~。」
「…そうだね~。」
「…ところでさ、何でいるの?」
…さっき別れた筈のメルマは、何故か俺の部屋に来ていた。
「もうちょっと、お話しがしたかったからかな。」
「そうか。」
「ダメだった?」
「いや、全然構わねぇよ。」
「そっか。迷惑じゃないなら、良かったよ。」
…どうでもいいような話で、盛り上がった。
…そして、しばらくそうしていると…何かを思い出したように、メルマは話を切り出してきた。
「そういえばさ、道案内してもらった時に居た、あの幽霊の子って…どうしたの?」
「ん?…今、なんつった?」
「えと、幽霊の子はどうしたのって言ったよ。」
「…お前、あん時……見えてたのか?」
「うん。見えてたよ。白いフリルのワンピースを着てる白髪ロングの子でしょ?」
「……。」
容姿までちゃんと当たっている。
本当に見えていた様だ。
まさか、こんな間近にアイツが見える奴が居たとは…。
「…で…その幽霊の子は、どうしたの?今は、一緒に居ないの?」
「ああ、あいつなら…アイナと一緒に居るぞ。元々、彼女と一緒に暮らしてる奴だからな。」
「ヘぇ~…ってことは、アイナさんも幽霊が見えるんだね。最強とか言われてる人でも、同じ部分があるって思うとなんだか、親近感が沸くなぁ…。」
「…アイナが最強ねぇ。普段の生活の姿を見てると、そんな肩書き背負ってる様には思えないなぁ…。」
「例えば?」
「いっつもソファーに座りながら、茶を嗜んで本を読んでる。そして、気が付いたら横になって、寝てる時もある。…そのソファーから落ちる時もあった。そこから起き上がろうとして、ティーカップの置いてある机に頭ぶつけたりもしてた。」
「な、なんだか、私が思ってるよりも、おっちょこちょいな人…なのかな。」
「アハハ、まぁそうだなぁ。」
…これ以外にも、歩いてたら何も無い所でこけるだとか、物に足の指をぶつけて痛がってるだとか…。
生活している姿は、そこら辺の一般人と何ら変わらない。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
「くしゅっ!」
「おや、こんな時期にくしゃみなんて…風邪でも引きましたか?」
「いや…鼻がムズムズしただけじゃ。体に異常はない。」
「…でしたら、誰かが貴女の噂話でも、してるんじゃないですかね?」
「そうかもしれんの。…もしや、キヨトの奴がしてたり…って、そんな訳ないか。」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
…アイナ関連の話題で盛り上がった。
その後は、メルマも自分の部屋に戻っていった。
今日1日で色々とあったが…まぁ、なんとかギルドでやっていけそうだ。
これからも、頑張ろう。
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