第5話 俺、魔法を覚える

森を抜けて、しばらく歩いた後、何もない開けた平原に連れてこられた。

ここで魔法の習練をするらしいが。


「そうじゃな……まずは見ておれよ。」


そう言った次の瞬間…アイナの右の手のひらから…火の玉が出現した。


「すげぇ……。何も無いところから火が」


「こんなものまだまだ序の口じゃ。やろうと思えば2、3歳の子供でも使える初級の炎魔法じゃよ。因みにこの魔法は、『ファイアボール』……という名前じゃ。まんまじゃの。」

 

そう言うと、アイナはスッと右手の火の玉を消した。


初級とだけあって、やっぱり簡単に習得出来るのだろうか?

 

「そう難しく考えんでもええからな。色々と理屈はあるが、感覚させ覚えてしまえばすぐ出来るようになる。」


「そうか……。」

 

俺も、アイナの様に火とかを出せる様になれるのか。…ちょっと楽しみだ。


「では、始めるとするかの。」


「よろしくお願いしまっす。」


……みっちりと、アイナに魔法のコツを叩き込まれた。


そして、一時間後。


「……では、やってみるがよいぞ。」


「ふんぬっ。」


右手から先程のアイナの様に火の玉を出現させる。


「おお、できたできた。」


「覚えが早いの、お主。これなら短期間で色々と覚えられそうじゃな。よし、この調子でどんどんいくぞ。次は風属性の魔法じゃ。」


「よし、次もお願いするぜ」


それから俺はアイナの指導のもと、魔法の習練に励んだ。


_______





魔法の習練を続けて3日が経った。


教えられる魔法を次から次へと実践しては、それを習得し続ける毎日を続けた結果…。


「よっと、ファイアボール!ウォーター!サンダー!ウィンド!」


……とりあえず、初級魔法の全てを習得する事が出来た。


「初級魔法とはいえ、三日で全て習得しきってしまうとは、筋がいいのぉ。これは教えがいがあるというものじゃ。」


「……え?まだ何か教えてくれんの?」


「初級魔法だけ教えるなんて我は言っておらんぞ?お主には、中級、上級……そして超級……我の知っている魔法、技術を全てを叩き込んでやるつもりじゃ。」


「……マジで?」


「マジじゃ。これだけの逸材を放っておくのは、もったいないからの。お主、きっと優れた魔法使いになれるぞ。」


「そなの?」


「そうじゃよ。」


初級魔法を教えられてただけのつもりだったのに、いつの間にか飛躍した話になってる。


別に俺、優れた魔法使いになるつもりはないんだけどなぁ……。


「よし、じゃあ次は中級魔法じゃな。早速始めるとするかの。」


「あー…うん…分かった。次もよろしく頼むよ。」


まぁ、せっかく色々な魔法の事を教えてくれてるんだ。

覚えられるだけ覚えてしまおう。


______


アイナに魔法を教えられ始めて一ヶ月が経った。


中級、上級……超級……習得する難易度が桁違いに高く、初級の様にすぐには覚えられなかった…が、


「…サンダーボルトバースト!!」


ズドーンと巨大な雷が乱れる様に目の前に落ちてくる。

音が大きくて、魔法を放った自分でもびっくりしてしまった。


「ふむ。オッケーじゃ。ちゃんと形になってるの。」


「よっしゃ!!」


「これで我が教えられる魔法を全て習得しきったな。お疲れさんじゃの。」


「うっす!」


1ヶ月かかったけど、なんとか全ての魔法を習得しきった。


あ~……達成感が凄い。

一つの事をやり遂げるってなんか気持ちいいなぁ。


「それにしても、まさかこの短期間に超級魔法まで覚えきってしまうとはな。あまりの成長の早さに、少し驚いてしまうぞ。……まぁ、魔力の練度がまだまだ足りんがな。」


「……練度?」


「お主、今、なーんも考えずに魔法を放っとるじゃろ?」


「あ、あぁ。そうだけども…。」


「……そのままでも魔法は使えるがの、魔力を精密にコントロール出来るようになった方が、より威力の高い魔法を使える様になるぞ。」


「魔力をコントロール…?」


「そうじゃ。お主には、それが足りんのじゃ。……まぁ、まだ"魔操術”の事なぞ教えとらんからの。出来なくて当然じゃが。」


「魔操術?なんだそれ?」


「名前の通りじゃよ。体内の魔力の流れをコントロールし、魔法の威力を上げるすべじゃ。ついでに、己の身体能力も高める事が出来るぞ。」


「なんか凄そうだ。それのやり方、教えてくれよ。」


「最初からそのつもりじゃ。……ただ、習得難易度はバカみたいに高いからの。超級魔法を扱えるくらいの実力がなくては使えん都合上、習得者も少ない。じゃが、その苦労に見合うだけの効果は得られるぞ。こんな風にな。」


そう言うとアイナは、右手から小さい火の玉を出現させた。

そして、その火の玉はどんどんと大きくなり、巨大な火球へと姿を変えた。


「うおっ!?それってファイアーボールだよな!そんなにでっかく出来るもんなのか!!」


「ああ。魔力を練れば中級、上級にも劣らない威力の魔法を少ない魔力消費で放てるようになる。これを初級ではなく、超級の魔法で使った日にはもっと凄いことになるな。」


「……お~。」


「あと、身体能力の向上についてじゃが……まぁ、これは見るより自分で体験した方が効果を実感しやすいじゃろうな。」


「そ、そうか……。」


「では、お主に基礎から叩き込んでやるとするかの。これを習得するのに、お主はどれだけかかるかの。……楽しみじゃ。」


「…よろしく頼む。」


______




アイナから魔操術のコツを叩き込まれ続け、約二ヶ月が経った。


体内の魔力の流れを感じて操作する。

言い表すだけなら、簡単そうに聞こえるかもしれない。だが、これがメッチャクチャ難しい。


コツを掴むまでが大変で、少しでも魔力の流れを乱すと、すぐに効果が切れてしまう。


「まぁ…なんだかんだ言いながら……一応、出来る様にはなったけどな。10分維持するのが限界だけども…。」


アイナの言う通り、魔力を練って魔法を放出すれば、何倍もの威力で出せるようになった。


身体能力もバカみたいに上がる。


体全身に魔力を巡らせれば……足の速さは今までの何十倍。

跳躍すれば空まで届きそうな程の大ジャンプが出来る。

少し力を入れて木を殴ればそのまま殴り倒せてしまう。


魔力を一ヵ所に集めれば、その部位だけだが、これ以上の効果を発揮する。


……本当に凄い術を教えてもらった。


「もう我からお主に教える事は何もない。よく2ヶ月という短い期間でここまで成長したもんじゃ。お主の成長には脱帽するばかりじゃのぉ。」


「……ありがとな。ホント、お前にゃ感謝してもしきれないよ。」


「よいよい。我が好きでやった事なんじゃからな。」


そう言うアイナだが、何処か嬉しそうな表情をしている。


「そうじゃ。最後に一つだけお主に一つアドバイスが残っておった。魔力のコントロールは出来ておるが、より精密にするのなら常にその状態を維持し続けると良いぞ。そうすれば、自然とコツが分かって上達するからの。我は、そうしているぞ。」


「つ、常に……かぁ。」


魔力の流れを一定に維持するだけでも疲れるのにそれを常に……。


いや、でも強くなれるのなら一考の余地はある。

どんな事が起こっても、ある程度は一人で対処できる様にしたい。


いつでも誰かが助けてくれるとは限らない。

自分の身は自分で守れないと。


「さて。では、帰るとするかの。」


「おう。」


……アイナと一緒に喋りながら、帰路を辿った。



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