第3話 始まりの根
九重君の傍に2体のモノノケが現れた。一体は体が小さく、片方しか無い耳がとてもフサフサとしている。もう一体は美しいフサフサとしたツヤがある体毛と八本の尾を持つキツネだった。
「体が1番小さいのがココネ、こっちのキツネがキュウビだよ。」
2体の瞳がキラキラと私を見つめてくる。
「初めましてココネちゃん、キュウビちゃん。甘宮りんごです。」
『凄い・・・自分達のことが見えてる・・・。』
『まぁ。ほんとにアタクシ達が見えているのね。』
どうやら九重君の元にいる3体のモノノケは、九重君が心から信頼している人でないと見れないらしい。
神社の縁側に座りながら、九重君がモノノケについて説明してくれた。
・モノノケは普通の人には見えず、神に近い存在であり、大切に扱われていること。
・モノノケは全国各地にいるが、ほとんどはこの村から生まれていること。
・不完全なモノノケは災いを呼ぶ物として扱われてしまうこと。
九重君が仲良く遊ぶ3体を少し寂しげに見つめながら教えてくれた。
「僕のそばにいるこの3体は3つ目の説明に当てはまるんだ。リンネは鈴の紐の部分がちぎれていて、ココネは片耳が欠けていて、キュウビはしっぽが1本欠けている。3体とも元々はお父さんの所にいたんだけど、疫病神だとか言って本堂から追い出されて隣にある大きな蔵の中でひっそり暮らしてたんだって。そこに僕か転がり込んだんだ。」
そう語る九重君の目はどこか遠いところを見ているように思えた。
『おーいひびや!そろそろりんごちゃん帰さないと行けないんじゃないかー?』
リンネが遠くから呼びかける。周りを見てみるともう日が暮れそうだ。
「長居させてごめんね。一方的に話しちゃったし・・・。」
「気にしないで!むしろモノノケのこと知れて嬉しかったよ。色々教えてくれてありがとう。キュウビちゃん達も今日はありがとうね。」
『えぇ。私達もここまで友好的な人に出会えたのは久しぶりだからとても楽しかったわ。』
『そうだね。自分もすごく楽しかった。』
『俺も俺も!よかったらまた遊びに来てよ!』
「え、また遊びに来ていいの?」
「もちろん!いつでも待ってるよ。」
その日から私は九重君と3体の笑顔が頭から離れなくなった。
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