第7話 海沿いの占い館

 俺とユッコは次の目的地を目指して海沿いの道を潮風にあたりながら歩いていると、一人の老婆が話しかけてきた。


「むむ!おぬし、この世の者ではないな!どうじゃ?」


 何だ急に?なんだか危ない婆さんだなぁ。

 俺はユッコの前に出て、彼女に危害が及ばぬよう盾となった。


「だーれが危ない婆さんじゃ!失敬な!」

 えっ?俺の思っていることがわかるの?

「そうじゃ。私ゃ、占い師じゃ。おぬしの思っていることくらいは分かる。口がなくても会話はできるぞ」

 な、なら俺がこのファンタジー世界の住人でないことも見えてるのか?それじゃあもしかしたら、元の世界への戻り方も知っているのかもしれないってこと?実はカクカクしかじかでして・・・

「ほぅ。どうりで不思議な相が出ておったわけじゃ」


「ちょっと!何あなたたち二人で盛り上がっているのよ!私にも分かるように説明してちょうだいよ!」

「おぬしがユッコか。よかろう。おぬしと旅をしてきたこのゴーレムはのぉ、カクカクしかじかだそうじゃ」


「え”ー!!レム!どうして黙ってたの?!もっと早く言いなさいよ!って口きけないんだったわね。で、私のパパがおみやげで持ってきたレックリの音が、レムのいた世界だとすると、私もそこに行けたら、パパに会えるかもしれないのね。どうやったら行けるの?占い師のお姉さん」


「ほぅ。ユッコとやらは口の利き方を分かっているようじゃのぉ。知りたいのなら教えてやろう。知ったところで、行くには茨の道が待ち構えているんじゃがのぉ。

 まずはじめに、異世界へ行くためにはポータルを開く必要がある。そのポータルを開くためのカギを作製するには、超激レアアイテムが二つも必要なんじゃ。


 一つ目は、ボグレット火山に潜む聖獣・煉獄双頭翼竜ボグレット・ドラゴンの卵殻。

 そして二つ目は、カッチコッチャ瀑布で100年に一度しか姿を見せない七色発光長眠浮遊魚ギョギョギョギョーンの鱗。


 これらを集めるにはのぉ・・・ブラックマーケットでもめったに見ないし、出品されたとしても小国を買えるほどの金貨が必要だと言われておる。諦めて別の方法を・・・」


「持ってる!それ両方とも持ってるよ!ほら!」


「へ?は?ふ?ま、間違いない!このマグマのような鮮烈な赤色の卵殻と、七色に光る鱗!古い文献通りじゃ。私も見るのは初めてでのぉ。なんて美しい輝き。これを私に預けてみないか?私が作製してみせよう。時空超越異世界鍵ポータルキーを!」


「他に方法も無さそうだし、お姉さんにお願いするわ」

「ようし、年甲斐にもなく私もワクワクしてきたわ。少し外で待っておれ。出来たら呼んでやるからのぉ」


 俺とユッコは海沿いの小さな小屋の前で、それが出来上がるのを待つこととした。


「ねぇレム。私、波の音も好きなの。なんだか人の呼吸に似ているでしょ?だからね、聞いているとパパを思い出してすごく安心するの。レムの世界に行って、もし会えたらって思うとすごく楽しみだわ。

 それから、向こうの世界に行ってレムが話せるようになったら、あなたの本当の名前を教えてね」


 俺は頷きながらユッコの方を見ると、眠たいのかウトウトしていた。

 しばらくするとそのまま安心した顔で、俺の体に持たれかけて眠った。


 車に乗って渋滞にはまってしまった時、前に連なる車のハザードが微妙にズレて点滅している。だが、時間が経つとたまに、全ての車の点滅が一致する時がある。その光景は見ていて気持ちがいい。


 波が寄せた時と引いた時の音は少し違う。ユッコの言うように、人が呼吸をしているようにも聞こえる。

 ユッコの寝息と海の波音が、時々重なる。


 うん、気持ちいい。


 俺はユッコを起こさぬよう、ゆっくりと背嚢はいのうからレックリを取り出すと、その癒音をいただいた。


その音、俺が録った。


♪~波音とユッコの寝息~♪




おわり 



====

ユッコ・セレクション

♪~父のみやげ~♪

♪~ボグレット火山の溶岩流~♪

♪~煉獄双頭翼竜ボグレット・ドラゴンのヒナ~♪

♪~名もなきキャンプ地の焚火~♪

♪~名もなきキャンプ地の朝未あさまだき~♪

♪~スチーム機械都市の巨大ボイラーかい~♪

♪~メガスチームエンジン 八万気筒の悪魔デビル・タービン・エイト~♪

♪~カッチコッチャ瀑布の裏洞窟 最深部~♪

♪~氷瀑粉砕爆裂激流アイスバコーン~♪


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

ゴーレムに転生した俺。癒音ハンターの歩荷となりてファンタジー世界を闊歩する 団田図 @dandenzu

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ