第3話 ボグレット火山
「さーはじめの目的地に着いたわよ!
ここは、ボグレット火山。この世界の大地が形成されてから、まだ一度も休むことなくマグマを吐き続けていると言われている聖なる火山よ。300年前に大魔王を討伐した、かの勇者様もここで聖剣を鍛え上げたと言われているわ。
ほら見て!あそこ!山頂から来たマグマが海に向かって流れているわ。高温のマグマと海水が交わる瞬間を録るわよ。
レム!レックリを出してちょうだい。早速録音を始めるわ。
この音もらった!私が
♪~ボグレット火山の溶岩流~♪
俺は感じることはできないが、この辺りは溶岩の熱で相当な高温だろう。
すぐそこの景色でさえも空間がゆがんで見えていやがる。
ユッコはこんなところをよく平気な顔で乗り込んでいけるな。
つらそうな顔をせず、むしろ楽しんでいやがる。
無茶しなきゃいいけど、、、
赤黒く光って粘度が高く、高温の液体がメリメリとゆっくりな速度で海に向かって流れている。地面にあるホコリやチリをバチバチと音を立てながら焼ききって進んでいる。わずかに生えた植物も一瞬で炭となり、溶岩に食われてその一部となっているようだ。
波が無く穏やかな海水までマグマが来た!
ジュウジュウとすごい音を上げて流れ込みやがった。
音だけじゃない。真っ白い水蒸気が大量に発生して辺り一面を一瞬で白に染め上げている。
あれだけ穏やかだった海も、マグマの熱で熱湯となり沸騰し始めてブクブクと音を出し始めた。
この星の息吹を感じる。力強く迫力のある音だけど、なんだか、ずっと聞いていたい落ち着く音だ。
ユッコはこうなることを見えていたのか?
♪~ボグレット火山の溶岩流~♪
「よし!いい癒音が録れたわ。
これから、できれば火口のマグマ池のところまで行きたいんだけどなぁ。
足の裏が熱くってこれ以上前に進めないわ。
おやっ?!こっちに通れそうな所があるわ。もっと奥へ行ってみましょ。
なんとか火口までこれたけど、やっぱりすごい熱波ね。
長くはいられないわ。早いところ録音して帰りましょ。
きゃー!!
足元の岩場が崩れ始めたわ。
滑った!まずい!このまま火口に落ちちゃう?!
あっ!レム!腕を伸ばして助けてくれたのね。ありがとう。
もう少しで、マグマに飲み込まれるところだったわ。
早く引き上げてちょうだい!
待って!!
これって、、、
神の使いと言われている伝説のモンスター、
しかも殻にヒビが入り始めている!
レム。このまま私の体を支えて、レックリを出して私に渡してちょうだい!
すっごいものが録れるかもしれないわ。
この音もらった!私が
♪~
1000度以上はあろうか、キャラメルが溶けたかのような高い粘度の液体がグツグツと煮えたぎる溶岩池の淵。下からゆっくりと上がってくる気泡がマグマの表面ではじける。
そのすぐそばに置かれた大きな卵。マグマと同じように鮮烈な赤色で、やや発光しているようだ。ものすごい熱波を浴びながら、米俵ほどの大きさの卵にヒビが入っている。
卵の内側からコツコツと
それと同時に卵の殻がパキパキと割れてきた。
卵の上半分の殻が取れたぞ!
ユッコのヤツ、殻の欠片をポケットに入れやがった。まぁ、あれだけ綺麗な物なら仕方ないか。
卵殻を破って外界に出てきたヒナは2匹?
いや違う!体は一つだが、頭が2つある。
ピヨピヨとクワクワの間くらいだろうか。なんとも癒される鳴き声だ。
しかもそれが2匹同時に同じタイミング鳴いている。
このままずっと聞いていられるぞ。
ん?このうなりのような音は何だ?
もしかして噴火するんじゃないのか?
いや!違う!このヒナの親だ!
早く逃げないと大変なことになるぞ!!
♪~
「よっしゃー!レア中のレア癒音を録れちゃった。それにあのヒナ、メチャントかわいかったぁ~。
って、満足している場合じゃなさそうね。早いとこ逃げないとママを怒らせちゃうわ。
でもまずいわね。逃げ道が新しい溶岩流で無くなってる。私は飛べないし、こんな高温マグマの上も歩けないしな~。これはまいったな~。ね~レムちゃん。
おっおっ?何?レム!
私を肩に乗せて行ってくれるのね。
そんなつもりじゃなかったのに、悪いわね~。
よーし!逃げろー!!
それー!行けー!!
きゃははは。
らくちん♪らくちん♪
いやー助かったわレム。
お礼を言うわ。
あら?ちょっとだけ足、痩せた?
気のせいよね?
まぁいいじゃない、超レアな瞬間に立ち会えたし、いい癒音も録れたし、おみやげももらえたし。最高の一日だったわね。
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