第2話 赤


自販機にあったか〜いが並ぶ中、

僕は迷っていた。

ココアか、コーヒーか、いやお茶か?

「あまいのがすきやし、これ」

「じゃあぼくもおなじやつ…」

缶ココア独特のザラザラとした砂糖が

舌に張り付く。


「そんで本題っちゃけど〜」

ベンチに2人座り、彼女は服をなおした。


ぼくは買ったココアを勢いよく飲んで、、

「な、なんでぼくなの、ぼくに…ゲホッ」

勢いよく飲んで、むせた。


「別に、誰でもよかったんやけど〜、

そうね、これ、これね〜〜みつけたんね」


ぼくの腕を掴み彼女は袖をめくった

「なんで……わかったの」

「ちらっと見えたっちゃね〜ごめんね」

ぼくには自傷癖があった。 無数の傷跡に

彼女は指をゆっくり添わせた。


「もちはもちや!じゃろ!!」

なるほど、死にたそうな奴ならきっと、

理解もしてくれる、殺してもくれる、かも。

頼む動悸としてはまあ、わからなくもない


「ごめんだけど、別にぼく、そんな死にたいとかはあんまりなくてさ…」


物凄く分かりやすく落胆した彼女の顔に

ぼくは少しだけ同情した。

でも

実はこの話を聞いて自分の中で完全にナシ、

ではなかったのだ。


飲み終わった缶を捨て、ぼくは立ち上がった

「明日、またもう1回話そう、帰らなきゃ」

明らかに瞳のキラキラした彼女。

「ほんに!??ごめんねひきとめて!!」


帰っていく彼女の足取りは軽く、

ぼくの足取りは重かった。


彼女が何故死にたいのか、わからなかったが

ぼくの腕の傷は死にたくて有るものじゃない

ただの現実逃避だ


家路に着き、鍵を開けると薄暗い部屋から

生ぬるい風と甘ったるい香りがした

「おかえり〜ゆうちゃん」

多分、多分ぼくの母親の声だ。


ぼくの母親にあたる女の爪は赤くて、薄く

夕日に反射して光っていた。

「遅かったね、待ってたのに」


それがぼくのボタンを外す時、女の爪が

ぼくの首筋にすこし、ひっかかった。





  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る