漂白

第1話 青

ぼくと彼女の秘密の約束、

毎週水曜日、下校のチャイムと同時に

ある場所へ急いで向かう。


汗と生徒達の声を抜けて、靴紐が解けても

誰かに話しかけられても息を切らしながら

彼女との約束だから、


「おそかったんね、16時34分や」

頭痛か蝉か、声がノイズまみれに聞こえる

「野球部に歯止めをくらってたんだ」

ぼくは顎から垂れた汗を腕で拭った。


「今日で半年だ、そろそろやね」

「だね、あの時はまだ雪が積もってたし」


半年前、彼女がぼくと出会った頃、

彼女の肌は白く、細く、

雪の中に吸い込まれそうだった


遠くから来たらしく顔も相まって方言が

とても可愛らしい。

すぐにクラスの人気者となった。


ぼくはと言うと陰気な方だったし教室の影で

気色の悪い本を呼んで休み時間も寝たフリを

しているような奴だった。


陰気な僕に可愛い人気者がわざわざ接触した

群がるクラスメイトを跳ね除けて、


「何の本見とるね?」

「人が死んどるんね、殺す方法がのっとる」

「ひゃ〜血が沢山出るんね〜」



ぼくの気色の悪い本の内容が

透き通った彼女の声で読み上げられていく。

「刃物は裏を向けてさしたあと、一回転、」

「これはなんで一回転すると?」


「な、内蔵の中に空気が入るんだ」

「そしたら、死ぬと?」

「刺されたら基本死んじゃうんじゃ…」


そうか!!とケタケタ笑った後彼女はぼくに

耳打ちをした。

「放課後、ウサギ小屋のとこ、きて。」


誰も使ってない、ウサギなんてもう

飼ってないウサギ小屋で、雪の積もる中、

可愛い転校生から僕は 告白をされた。


「あたしの事殺してくれんと?」


ただの可愛い子じゃなくて痛い子か、

そう思いぼくはどもりながら断ろうとした


「みて」

ぼくの常に下がっていた顔が少し上がった

彼女は自分の服をたくし上げ、ぼくに見せた

「これと、ここ、あとここ」


ぼくの目に写ったのは彼女の白い肌でも

ピンクがかったなにかでも無く

濁った青色の全身に広がった痣だった。


「はなしきいてくれるっちゃろ?」

彼女は服をたくしあげたまま笑っていた

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