fileⅠ 赤い悪魔《レッドフード》②
目の前の光景が何を表しているのか、正直言って訳が解らなかった。
貴族のようなゴスロリに紅色のツインテール。そして目に薔薇の施された眼帯を着けた美少女が俺を庇う形で女の目の前に立ち塞がり、女は美少女に向けて憎らしげに睨んでいた。
これはいったいどういうことだ?
『……魔術師……!!』
「まあ、嬉しいわ。貴女のような末端にも満たない使い魔風情にも名前を覚えてもらえるなんて。」
『…………っ!!?』
「逃がすと思って?.....
少女がこの場を逃げ去ろうとするが、足元に展開された魔法陣から勢いよく飛び出した荊に縛られる。
(なんだこれ……荊?)
「それで、そこのガラクタはおいといて、ご無事?そこのお嬢さん?」
(え!?お嬢さんなんて赤い悪魔以外にいたのか……?周り見回しても人影なんて見なかったのに……)
再び周囲を見回して見ても、やっぱり女の子の姿らしき人影なんてどこにも無い。
美少女のほうを見てみると美少女は不思議そうに俺を見て呼びかける。
「どうしたのお嬢さん?せっかくの綺麗な顔が台無しよ?」
(………もしかして……)
「………なんか勘違いしてるみたいだけど俺男ね。」
「……まあ。」
(わー……いかにも予想外な顔してらぁ……)
「……ま、よく間違えられるから別にいいけどね。」
俺は昔からよく女の子と間違えられるのだ。子供の頃から初対面の男子に気合の入った告白をされたり、そのことで揶揄われたり、姉ちゃん達にも着せ替え人形にされたりと、もういろいろあったので慣れている。
……正直慣れたく無かったけど。
どうやら美少女も俺を女の子と間違えていたらしい。美少女はその誤解に気づくとおもわずため息を吐く。
「そう、ややこしい顔してるのね。」
「初対面でひどくないか!?」
「詳しい話は後、今は逃げましょう。…貴方だってあの猛獣に食べられたくはないでしょう?」
「え?」
女の子の方を見てみると女の子の顔つきは、もはや人間とは呼べず噂通りの邪悪な悪魔のような形相だった。
『ええほんと、そんなに無視されると....ますます呪いたくなっちゃうじゃない!!』
(なんだこいつ……!人間っぽい女の子から蜘蛛っぽい長足の人形と悪魔が合わさったみたいなバケモノに変わりやがった……!?)
「やっぱり本性表して来やがったわね。そんなに高ぶっちゃって、まるで理性を失った獣のよう……それならせめて見た目だけは美しく飾ってあげる。
『Gaaaaaaaa!!?いきなり爆発とか野蛮ね!!』
「ふふ、手段を選ばないと言って欲しいですわね。
魔法陣が悪魔の体の上に浮かび上がると魔法陣が、悪魔を巻き込んで大きな爆発を起こす。
「逃げるわよぼうや、しっかり捕まって!!」
「わっ……ちょっ、ちょっと………!?」
『Aaaaaaaa!!!!?逃がさないわ!逃がさないわよ!!その子は私の獲物だもの!それは[ウワサの呪い]に決定づけられた宿命!たとえ薔薇の魔術師の介入も赦さない!!』
悪魔が爆炎によって怯んでいる間に美少女は俺の手を掴んでこの場から離脱していく。
(噂の呪い?それに薔薇の魔術師ってなんなんだ?……何から何まで訳がわからん!?)
「噂の中のエゴから現出し、ウワサに釣られた人間を噂通りに殺し尽くすまで止まらない。それが貴女方[怪異]のやりかた。ホント、いかにも『黒薔薇』の考える美学の欠片もない作戦ね!!」
『Aaaaaaaうるさいうるさい!!黙れええ!早く私に殺させなさいよ!!人を噂通りに殺して...私は噂以上になるの……!!!』
「………こりゃあダメね。一回頭を冷やしてもらいましょうか。」
「はあ!?さっきは逃げるって……」
「逆に聞くけど、この状況で逃げられると思う?だとしたらとんだ低能ね。」
「なんだとこのヤロウ!?.....じゃあどうするんだ?」
「決まってるじゃない。……あのお人形をジャンクにするのよ。」
「はぁ!?」
驚いて思わず少女に向けて聞き直すが、少女は自慢げな表情を崩さない。
赤い悪魔が地を這う巨大な腕を美少女に向けて伸ばすが、魔法陣の障壁によって阻まれる。
「
そして障壁によって腕を弾くと美少女はジャンプし、そして空中に浮べた紅い魔法陣を踏むと、さらに空高くジャンプする。
「貫け!!
『Aaaaaa!!!鬱陶しい槍ねっ……!』
「いい槍でしょう?でもサプライズはそれだけじゃないわ。」
(何本もの真っ赤な光の槍が、赤い悪魔の槍を貫いた....!!)
赤い悪魔の周りに浮かんだ複数のエネルギーが巨大な槍状の細長い形態に変わると、赤い悪魔に向かって勢いよく集中的に突き刺さる。
だが、彼女による攻撃はそれだけでは終わらない。
「さあ、燃え尽きなさい.......
槍に貫かれて動けなくなった赤い悪魔に向けて、足元から勢いよく炎が燃え上がる。
『Aaaaaa!!!.....a……Aa……!』
黒焦げになった赤い悪魔が地面に倒れ伏すと、少年は俺に向けて、改めて振り返る。
「さて、邪魔者もいなくなったことだし、自己紹介でもしましょうか。私の名前はヴィヴィアス・スカーレット・ローゼス。俗に言う魔術師という者です。貴方は.....」
「有栖……
「有栖ね。……ここじゃなんだし場所を移しましょう。」
……ヴィヴィアスは俺を抱えると、足元に巨大な魔法陣を浮かべ、大きな光を放つ。あまりの眩さに思わず目を瞑ってしまう。
だが、再び目を開けると、目の前の光景は道路から、まるでファンタジー映画に出てくるような幻想的な情景を持ち合わせながら、豪華絢爛、きらびやかな部屋へと移り変わる。
俺を下ろすとヴィヴィアスは妖しい笑みを浮かべてこう言った。
「さあようこそ、
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます