薔薇の貴族と悪魔憑き
綾里仙里
第1話fileⅠ.赤い悪魔《レッドフード》①
「ねえねえ知ってる?赤い悪魔の噂!」
「知ってる知ってる!赤い頭巾の赤い悪魔!!」「夕暮れ時12丁目の交差点で信号を待ってると時々話しかけてくる美しいひと、だけどその美貌に見惚れると大変!」
「問いかけてくる質問に応えられないと呪い殺されちゃうんだよねぇ……こわいなぁ…。有栖もそう思わない?」
「……交差点にでる怪物とか、いったい何年前の都市伝説だよ…。ありふれすぎて反応に困るっての。」
ありふれた都市伝説に俺は思わず机に肘をついて思わずため息が出る。
「まあまあそんな事言わないで~....いつの時代も都市伝説は人の心を揺るがし娯楽になるモノなのだよ♪わかってるかなワトソンくん♪」
「誰がワトソンだよ。お前の助手になった覚えねーわ。」
「それにしてもさー、ホントにいるのかな?赤い悪魔。」
「さすがにいないっしょー。どうせどこかの誰かの作った作り話だよ。」
「でもさぁ?SNSを見ても同じような都市伝説が世界の各地でながれてんだよ?....しかも世界中で同じように夕暮れ時、この街の12丁目の交差点で出るって噂。」
俺達と話していた少女の一人、千葉ほなみはスマホを持ってSNSの画面を見せてくる。
その画面は確かに赤い悪魔について記載されている記事や呟きが散見された。
「あんだこりゃ?どれも赤い悪魔のつぶやきばっかじゃねーか。これホントに世界中の閲覧してる?地域に絞ってないか?」
「ほんとだってばー!……ともかくさ、さすがにただの作り話がここまで世界中に拡散されてるのってなんか可笑しくない?しかも噂が流れ始めた日も半年前から一斉に世界中に広まっていったんだって....!!」
「つっても赤い悪魔の問いかけに応えられない場合の殺害方法は刺殺でも、銃殺でもなく呪い殺される、なんだろ?さすがに呪い殺されてたら変死体の一つや二つ残って大パニックだっての。」
「確かにそうだけどさぁ……。」
「そうそう、だから赤い悪魔なんていねーワケ。じゃあ俺先帰るわー♪」
「あっ、ちょっと有栖!!.....逃げたし。」
俺は足早に教室から出ていく。
だってそんな噂話には付き合ってられないし......それに怖いし。
俺が教室から立ち去った後、ほなみともう一人の女子である
「まあ仕方ないんじゃない?有栖ってば昔からそういう怖い話苦手だし。さっきも足ガタガタ震えてたし声も震えてたよ?」
「ホンっっトアイツ昔から意地っ張りなとこあるよねー.....ねえそういえばアイツの家って例の交差点の近くじゃなかったっけ?」
「.....そういえば確かに、ハァ……ホントに出ないといいけど、赤い悪魔」
交差点で信号を待っていると、ふと柚とほなみが話していた『赤い悪魔』についての話を思い出す。
(夕暮れ時12丁目の交差点で信号を待ってると時々話しかけてくる美しいひと、だけどその美貌に見惚れると大変!)
(問いかけてくる質問に応えられないと呪い殺されちゃうんだよねぇ.....)
おもわず回りを見回してみるが、怪しい影なんて微塵も存在しなかった。
おもわず我に帰って安堵する。
「…いやいやいやいや、赤い悪魔なんているはずないのになに気にしてんだ?オレ…。」
だが前を向き直すと目の前の光景に驚愕する。
「......は?」
『───貴方は赤はお好き?』
一瞬だった。
俺が目を離していた一瞬の間に赤いフードを被った少女がオレの目の前に佇み、俺の頬に手を触れていた。
気配にすら気づくことができなかった俺は少女の存在に顔を青ざめることしかできなかった。
(な、なんなんだよこの人....さっきまで姿形はまるで無かったのに突然出てきた……それに赤いフードに問いかけって……もしかして…………コイツが『赤い悪魔』?)
『ねえ、赤はお好き?』
女は表情を変えずに変わらない質問を問いかけてくる。
都市伝説通りだと応えないと殺される....いくらなんでもこんな理不尽なことで死にたくない。
俺は素直に質問に答えることにした。
「.....赤?好きだよ俺は。俺は燃えるような赤、美しい赤、そしてカッコいい赤は大好きだ。」
冷や汗垂れてるのとか声めっちゃ震えてるのバレてないのいいなぁ.....とぼんやり現実逃避しながら言ったその答えに、推定赤い悪魔の少女は満足げに答える。
『……そう、なら。』
『死んでくださる?』
(なんで!?ちゃんと質問も答えたのにっ!!?)
思わず驚愕する。だってそれもそうだろう、都市伝説だと殺されるのは質問に答えなかった人間だ。
質問に答えた相手は殺されるとは言われていない。そこまで思ったことでとある事実に思い至る…。
(そうだ……!たしかに問いかけに答えなかったヤツは死ぬって伝えられてるけど、問いかけに答えたヤツが生き残ったとは伝えられていないんだ…!なんだよソレ!)
あまりの理不尽に思わずキレる。この説が当たってたとしたらそんなの、コイツに出会った時点でほぼ死ぬみたいなモノじゃないか。
俺の頭の中は未知への恐怖でもうパニック寸前だ。
『───さあ、あなたの赤を見せて?』
目の前の悪魔は微笑みながらフードを外す、すると禍々しく目立つ黒い角、異形を思わせる金色の瞳、そして燃えるように煌めく真っ赤な髪、確かに、彼女の姿は人間では無いようだった。
悪魔は俺に向けて手を伸ばす。その手は俺の命を刈り取るモノだと、容赦なく感じることになった俺は思わず目を閉じる。
(くそっ…もっと、生きて……あの人に恩返ししたかったのに…!!)
悔恨はまだまだ残る。もう逃げ切れないと悟った俺はその歯がゆい思いに思わず歯を食い縛るが怪物の赤黒い腕が、いつまでも俺に届かなかった。
『Aaaaaaaaa!!!?』
「そこまでよ。
怪訝に思った俺の耳元に聞こえてきたのは今さっき俺を殺そうとした女の悲鳴と、高貴さと妖しさを併せ持つ少女の声だった。
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