第9話 金色のオキザリス

 ああ、やっと着いた。工房の寮に.........

 この本、めちゃ重い!なんなの、これ!?

 ここに着くまでの約100メートルほどの距離だけでもう、腕がもげそう.........

 えっと、今はさっきエプソンとぶつかってしまった私の部屋の前です。

 さっき買った荷物もあるので、いったん部屋にて休憩を。


 そういや、ほんとにさっきまで気づいてなかったんだけど、この寮の隣にはしっかりと教会があったのね。始めて知りましたけど.........。

 それにしても、なんでこんなところにあるんだろう?

しかもバッチリ工房の敷地内なんですよね。

 まぁ、工房の二代目ですしね。

そういや、まだ言ってなかったっけ。この工房は元々は彼等の父親のもので、エプソンが成人した記念(この国では18歳になると大人、成人したと認められるらしい)として贈られたものらしい。プレゼントの規模が...。

ということで、何かしか知っているでしょう。


 そんなこんなで、扉を背にして左側に進んでいく。

このままだと外に出ちゃうんだけどなぁ。

 コートとか持ってくるの忘れてたなぁ。とボッケーと考えてながら進むとこの建物と、となりの教会であると思しき建物へ掛かっている渡り廊下に出ました。

 そのまま、その通路を通って教会へ.........


 どうもこの通路、私の部屋がある寮の三階と教会の二階部分をつないでいるみたいだ。

 教会で二階といえばとてつもない大きさのパイプオルガンが鎮座ましましているっていう雰囲気だと思っているんですがねぇ。

 こっちの教会って私たちのものとは結構違うらしい。

 パイプオルガンも、十字架やなんかの女神像なんかが全くなくて。代わり?としてなんか滅茶苦茶に白い箱が多くいてある!なんなんよこれ?ああ、ちなみに、一階は私達のと少し近くて椅子だらけ、だけど、さっきも書いたけど像とかが、なんもない。


 そういや、皆の予想だとここにエプソンはいるはずなんだけどなぁ。どこにおるんやろ?

 と思っていたら、一階の一番奥入り口からは少し曲がっていて直視できない場所にある祭殿?らしき異空間にいた。

 そこには他の白い箱よりも大きいものが置いてあった。彼はその箱の前で祈っていた。

 箱のふたには何か書いてあるんだけど遠くからだとわからない。

 何だろう?

 近づこうとした、その時。


 ゴーンゴーン…


 近くに在るチャペルの鐘がなった。ただそれだけ。

なのにどうしてか、途端に体が竦み動けなくなる。

なぜか知らないけれども冷や汗まで出てくる。

そして金縛りにでもあっているかの如くまったく動けなくなる。

鳴りやむと治るけど、どっと疲れる。


 うわぁぁぁぁぁぁぁ。びっくりしたぁ。

 ここの鐘の音まだ慣れてないんだよね。

それに、嫌な思い出もついてくるからあまり聞きたくなかったんだけどな。

 そういえば、エプソンは?どこ行ったんだろう?

 さっきまでいた場所には居なくなっていた。

 多分私が鐘の影響で動けなくなっている間に部屋にでも帰ったのであろう。

本あげたいだけだったのになぁ。まぁいいや。

 そうだ、箱になんて書いてあるんだろう?それだけ見てから帰ろう。


 箱の上、蓋らしいところには、

【セターレ・アルメニアは此処に眠る】と書いてあった。

 ?誰だろう?分からない。

 でも、この箱を見ていたエプソンの顔は今にも泣きだきそうだった。いつもは見せないそんな顔だった。つまり、彼にとってこの箱の中にいる人は大変思い入れのある人なんだと思う。

 何となく、触れてはいけないそんな気がした。

 そのまま帰ろう。方向転換をしたとき、何かに躓きかけ驚く。

 そこにはいつもエプソンが持っていた銀色のペンダントが落ちていた。

 表には金色で花の絵が描かれていた。


 それをもって外に出る。目がかすむそうな眩しい青空の下、が輝いていた。

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