第四話 白い雨と黒い蛇

④-1

 地中深くに潜み、目覚めを待つものが在る。

 途方もなく長い年月を掛けて身体の内に力を蓄えその時を待っている。道理などない。ただそれは雨を、風を、雷を呼び、あらゆる生命の連なりを等しく呑み込むだろう。行き過ぎた恵みは災いとなって、人々の営みを無慈悲に破壊するだろう。残酷で公正な水界の主――その圧倒的な暴力の前では、人間の命は泡沫のように儚い。

 原生林を淙々と流れる清水を見つめる少女がいる。小柄でほっそりとした、可憐な少女だ。絹糸のような長い黒髪が朝靄を透かして降り注ぐ光を受け、淡く煌めいていた。その艶めいた黒髪が肩からはらりと落ち、俯いた彼女の頬にかかった。病的なまでに白い肌を冷たく輝かせ、少女は笑った。

「――今度はいったいどんな反応が見られるかしら? 楽しみだわ」

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