同級生の相談事(その2)

仕事で疲れていたので、そんな幻想を見たのだろうと玲子は思った。

自室のベッドに入って思い返してみたが、幻想というにはあまりにリアル過ぎる。


次の日の火曜日も終電で帰った玲子は、地下鉄が地上の高架に出て急カーブでスピードを落とした時に、殺人があったマンションの部屋を、目を凝らして見た。

眼下の部屋は、花柄のカーテンが下りていて室内は暗かった。


翌日の昼休みに玲子は会社の近くの警察署に出かけて、殺人を目撃したと話した。

相談係は話をよく聞いてくれ、

「調べてみます」

といった。

翌週、警察から電話があった。

「その地下鉄の高架近くのマンションを訪ねたが、特に怪しいことはなかった」

と相談係は慇懃に、しかし、きっぱりと言った。


それ以上のことは調べようがないので、そのままにしていたが、どうにも気になってしかたがない。

・・・これを調べてほしい、というのが玲子の相談事だった。

「どうして僕に?」

「・・・・・」

言いにくそうにしていたが、

「・・・東条くんは、推理小説マニアだといっていたのを思い出して」

玲子はそういってから、バツの悪そうな顔をした。


「新聞もネットニュースも結構丹念に読んでいるけど、最近あの辺で殺人事件があったというニュースはなかったね」

重い口を開いてたずねると、

「私も新聞をよく読むけど、たしかにそのニュースはなかった」

「でも、見たのは間違いない?」

「ええ、この目でしっかりと。・・・夢とか幻ではなく」


それで、ふたりはそのマンションを訪ねることにした。

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