最終章 人類興亡史
あとがき
人類がレイン・クロインとの戦争に勝利してからおよそ二百年になる。今、私達がまだ存続しているのは先祖の奮闘等があった甲斐である。
レイン・クロインとの戦いには数多くの英雄を生み出した。
レイン・クロインとの最終決戦において総司令官として世界艦隊を指揮した日本の東郷透大元帥。
アメリカが誇る空母機動艦隊を指揮したマクスウェル・ワシントン元帥。
レイン・クロインに囲まれながらも奮闘したイギリスのチャールズ・テイラー元帥。
最前線であるソ連を支えたアフクセンチー・ガガーリン元帥。
誰もが人類史上を誇る英雄達である。本やドラマ、映画の題材にされることなど珍しくないし、おそらくは誰しもが一度は誰かしらの作品を読んだことがあるだろう。
本書で扱った笹栗栄中将(戦死後二階級特進。最終階級は大佐)は地味な印象を受ける人物かもしれない。
だが、笹栗は長く東郷艦隊の一翼を担い、常に東郷の勝利に貢献していた。その功績はレイン・クロインとの戦いにおいて世界でも有数のものになる。
だが、笹栗は同時代、同国で活躍した吉川元春大将や志摩奏中将に比べると評価が落ちる。
では何故笹栗の評価は落ちてしまうのか?
それは東郷が笹栗を重用したせいがあるだろう。
独立した働きが残っている吉川や志摩に比べ、笹栗は常に東郷の部下として働き続けた。
そのために本来ならば笹栗の功績であるはずのものも東郷の功績として誤って伝わってしまうことが多い。
数少ない笹栗の功績として語られているのは『人類総反撃の狼煙』として知られる南太平洋解放作戦において、奇襲を受けて混乱した日本艦隊を笹栗艦隊の奮戦で壊走が避けられ、その後の奮闘によって勝利したものもある。
口さがない研究者などはこれも東郷の指揮のおかげとしている者もいるが、レイン・クロインとの戦争記である『小西日記』において『笹栗の機転によって日本艦隊は態勢を立て直す時間が与えられた』と確かに記載されているのだ。
そのほかにも言わゆる『東郷談話』において東郷本人が『笹栗は人類の守護者と呼ばれる働きをした』と言われている。読者の中には笹栗の名前を知らずともこの『人類の守護者』という言葉は聞いたことがあるのではないだろうか。
戦争終結から二百年、地球連合政府は世界各国の戦時中の日記や文書を編纂し、『レイン・クロイン戦争録』を刊行しようとしている。
その編纂作業において『忘れられていた英雄』も数多く発見されることだろう。
作者としても艦嬢との共存を目指し、人類の存続を勝ち取った笹栗の評価が高まればこの本を書いた甲斐があったものである。
最後になるが作者の調査に協力してくれた小西行重氏や対馬の方々には深く感謝の念をしめすものである。
二二一六年 初夏の候 壬生 誠
アース・ガード・フロント~笹栗艦隊出撃セヨ!~ 惟宗正史 @koremunetadashi
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