3話
「くっそ! やられた!」
爆撃の衝撃で指揮卓から転げ落ちた笹栗は悔し気に言いながら立ち上がる。
「三笠! 艦と旗下艦隊の状況報告を!」
「我に損害はない! だが他の艦には通信が混乱していて確認できん!」
三笠の言葉に苛立たし気に足踏みをする笹栗。だが即座に次の行動に移る。
「三笠、俺は最上艦橋に上がる!」
その言葉に三笠は仰天する。
実は笹栗が艦橋として利用している部分は戦闘時の指揮に使われる艦橋ではない。三笠が戦った日露戦争の時には現在いる艦橋の上にある屋外の最上艦橋で戦闘指揮が行われた。
しかし、戦い方が変わり、航空戦闘が主体となった今、屋外での戦闘指揮は危険が高かった。
「待て提督! 危険だ!」
だから三笠は止めた。ここで指揮官である笹栗が死ねば笹栗艦隊全体が混乱を強くする。その混乱は通信が繋がらない今、さらに日本海軍を広げることになるだろう。
だが、振り向いた笹栗の表情を見て三笠は息をのむ。
笹栗は怒りで瞳の色が緋色に変わっていた。
「何が危険か! 現状、即座に旗下の艦隊だけでも纏めなければ全滅するぞ!」
それだけ言うと笹栗は部屋から出ていく。
三笠も慌てて後をおい、扉の横に備え付けられていた階段を昇る。
「なんたる無様……!」
そして最上艦橋では笹栗が怒りに震える声で呟いた。
日本艦隊は酷い有様であった。轟沈をしている特装艦。直撃したのか炎上している艦装。
「提督! 総旗艦が!」
三笠が叫ぶと笹栗はあまてらすのほうを振り向く。
そこにはカタパルトデッキが炎上しているあまてらすがいた。その巨体故に沈没に至ってはいないが、艦橋にも大きな被害が出ている。
笹栗はそれをちらりと見ると三笠に即座に指示を出す。
「信号旗! 『三笠に集結せよ』と!」
「う、うむ!」
慌てた様子で信号旗を操る三笠。
それを見ながら笹栗は日本艦隊の現状を確認する。
戦闘に慣れている提督が多いせいか大きく混乱はしてないが、本部の壊滅によって一致した対空戦闘が行えないでいる。特装艦に至っては戦闘に参加できていない。
(現状において、艦嬢の力の結集は不可欠。だが、それができる本部が今は機能停止状態か……どうする、考えろ! 考えることをやめたら死ぬぞ!)
信号旗を見たのか那智、矢矧、浜風は対空戦闘をしながら集結し、千歳もすぐにやってきた。
だが、信濃はあまてらすの近くを航海していたせいもあり集結することはできなかった。
「提督!」
「千歳を中央にして対空戦闘を! そして信濃を迎えにいく!」
笹栗の言葉に三笠は即座に頷いて信号旗を掲揚する。
そしてその信号旗を見て笹栗は思いついた。
「三笠!」
「なんだ!」
「演説をしてくれ!」
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