2話
「三笠さん、各艦に戦闘準備の伝達を」
「承知した」
日本海軍南太平洋解放艦隊はチューク基地を出撃して一週間。ついにレイン・クロイン艦隊の補足に成功していた。
笹栗はイライラするように頭をかき混ぜる。
「レイン・クロイン艦隊の規模はこちらより上だと……!」
総旗艦・あまてらすより各提督に伝えられたのは発見し、日本艦隊に向かっているレイン・クロイン艦隊の規模が日本艦隊より上だという報告であった。
「落ち着け提督。敵の規模が想定より上だろうがやることは変わらないだろう」
「……ですね。今は勝つことだけを考えましょう」
三笠の言葉に笹栗は気分を落ち着けるように呟き、軍帽をかぶりなおす。
「信濃さんと千歳さんには空戦装備で搭載艦載機の半分の発艦準備を。吉川提督や九鬼提督がいるから大丈夫だとは思いますが、必要になったら出撃させます」
「わかった」
笹栗の言葉にすぐに通信を繋げて信濃と千歳に指示を出す三笠。
笹栗は指揮卓に胡坐をかいて座りながら考える。
(もうすでに三方位殲滅戦という構想は崩れた。こうなるとオーストラリア艦隊とアメリカ艦隊と合流したいが距離の関係でそれも不可能)
「最悪すぎてぶっ倒れそうだ……」
浜風は首筋がぴりつくのを感じ取る。
駆逐艦・浜風は開戦から大和特攻までを戦い抜いた歴戦の駆逐艦だ。そのために艦嬢になっても戦場の勘は強く働く。
(レイン・クロインの大艦隊と当方大艦隊との接敵まで残り僅か……それを感じとっての……?)
「いや、違う」
浜風の経験が開戦の感覚とは違うことを明敏に告げる。
「だったら何の戦いの時の感覚だ……」
そして駆逐艦の時の記憶を浜風は思い出す。
真珠湾攻撃・否
セイロン沖海戦・否
ガダルカナル一連の戦い・否
クラ湾夜戦・否
第一次べララベラ海戦・否
マリアナ沖海戦・否
「レイテ沖の対空戦闘と坊ノ岬……!」
浜風はそう叫ぶと艦橋の窓ガラスを割って空に眼をこらす。
勘違いならばそれでいい。浜風としても自分の考えすぎだと思いたかった。
だが、現実はさらなる苦難を人類につきつける。
雲間から見えた存在に浜風はオープン回線で日本海軍全艦隊に向かって叫ぶ。
「敵機直上!」
そして空からの襲撃を日本海軍を襲う。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます