第2話 魂とは
霊感が特別強い、というわけではない。しかし何故か心霊体験は多いほうだと思う。そういうのを霊感が強いというんだ、と言ってくれる人もいるが、私から言わせてもらえば、あちらから私に寄って来るのだと言いたい。どうも私は、霊を引き寄せやすい体質なのではないかと思う。
どれも濃く重いものばかり。中には第三者や事件関連の霊体験もあるので、このような場では話せないが、私の家族のことなら問題ないだろうと完結済だった「恐怖体験」を連載中にしてみた。
これを読んでくれる読者は魂というものを考えだ事があるでしょうか。
数ある体験から私が魂というものを言葉にするなら、それは「生前の行い。その人の生き方。故人の本質」です。
生きてる時、どんなに取り繕ってもいても、この世を去って魂だけになったら、生きていた時の上っ面の仮面など無意味。全て剥がされてしまう。その人の本当の姿があらわになる。
また、この世を去る直後、後悔や無念、悔いなどがあると、その呪縛みたいなものに縛られて去ることも出来なくなる。
その例として上げるのが、私の父の事だ。
私の父は若くして病死してる。とても頑張り屋で我慢強い人だった。その我慢強さから体調が悪くても病院にも行かず、そのまま放置。結果、治療できなくなり余命宣告を受けた。
私が学生の頃から父は自分は長くないから、家のことを頼むと、事あるごとに言っていた。当時の私は、そんなこと言われても迷惑。それに、そんな人ほど長生きすると思っていた。しかし言った通り、それから数年後、父は若くして他界した。
まさか、あの父が。
亡くなったのは明け方だった。危篤の電話を受け病院へ、私が到着してすぐ父は息を引き取った。まるで私を待っていたかのようだった。母と父は霊柩車で。私は車で来ていたので別々に帰ることになったのだが。
ちょうど病院が混み出してくる時間で、入り口近くに停めていた私の車は入ってくる車で、なかなか出る事が出来なかった。
その時だ。
コンコン・・・と2回、車の窓を叩かれた。もちろん、そこには誰もいない。まるで、早くしろとせきたてるような叩き方だった。
父だ。そう感じた。なかなか後を追ってこない私に、しびれを切らしたのだと。
家に着くと親族の手で通夜の準備が整えられていた。
通夜。
地方で通夜はやり方は違うと思うが、こちらでは故人の血のつながりがあるもの同士、同じ部屋で寝る。ということだった(今も、そうかは分からない)
親戚と布団を隣り合わせにして寝る。今の時代、それを変に思うかは個人の自由だが、当時の私は、さほどおかしなものとは考えてなかった。
線香を一晩中たかなければいけない。その役目として、父方の叔父が選ばれた。私は、その叔父と他の親族と一緒に床についたのだが。
夢を見ていた。
辺りは真っ白で、目の前に亡くなったはずの父がいるのだ。不思議と怖くはなかった。父は亡くなっても、やはり気になってたらしく、私に家のことを頼むと言ってきた。
故人の頼みだ。普通なら分かったと応えるだろう。しかし、当時の私は、それでも嫌だと言ったのだ。
正確には言葉にしたわけではない。父も言葉を声に出してるわけではなかった。
考えてること、想いが相手に気持ちとして伝わってると言った方がが正しい。
その直後、何故、私が嫌がるか、その理由が目の前に映像として現れた。その映像を父と見ていたのだが(ここは個人情報なので省略したい)ひと通り見たあと、父は寂しげに、それでも納得したかのように、そうかと頷いた。
納得してくれた父を見て「じゃあね」とその場を立った後、私は目が覚めた。
夢。しかし通夜の晩の夢だ。もしかしたら本当に父と話したのかも。
そんなことを考えながら朝食を食べていると、一晩中、線香を見ていた叔父が声を掛けてきた。
「夜中に〜(父の名前)の前で、何してたんだ?」
何してた? その問いに私も戸惑った。叔父の話だと、私は夜中に突然起き上がって、ふらふらと父の棺の前に行き正座したらしい。暫く無言のまま父の遺影を見ていたらしいが、そのうち戻ってきて布団に入り眠ったとのこと。
もちろん、そんな記憶は私にはない。ただ夢の中で父と話をしただけだ。
亡くなった父が私を呼んだ。そう叔父と一緒に結論付けた。
先にも話した通り、生きてる間に後悔や悔いなどがあると、なかなか前に進めない。父がいい例だと思った。そして我慢の人でもあり頑張り屋でもあるが、末っ子で自分の意見を通したいところもあった父は、亡くなって数年経った今でも、ちょくちょく私の夢の中に現れる。
そういう性格は亡くなっても引き継がれるんだろう。
これを読んだ読者様。
今、死んだとして、貴方は後悔、悔いなどありますか?
一度きりの人生です。精一杯生きたと、そんな人生を過ごせることを願います。
恐怖体験 紅音こと乃(こうねことの) @amatubu
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