第105夜 友人がドラゴンだった百合 「いつでも空を飛べるから」
最近街に現れる破壊のドラゴンが友人かもしれないため、私は彼女を捕まえて檻に入れる。案の定ドラゴンの出没は無くなり、街には平和が戻っていった。
問題なのはここからだった。友人は学校に通えなくなってしまったのだし、襲来が止んだからといってドラゴンの恐怖は消え去らない。探し出して殺すべき、という世論が高まり、政府直下のドラゴン対策チームが再編されて動き出す。
私によって監禁された友人は、案外満足そうだった。なんでも、彼女は無意識のうちにドラゴンに変身していたらしいのだ。今はそれが起こらないから、安心して生きられるという。なるほど、と私は思う。ドラゴンのブレスは民家を焼き払っていた。その力があればこんな古い地下牢なんて簡単に破れそうだけど、そうしない理由があるのだ。
私は友人の檻に家具を入れ、きちんとご飯を与えて過ごす。一緒に居てとせがむので、私のベッドも地下に移した。私たちは檻越しに手を繋いで眠るようになる。
ある日、私は竜警察に捕まって尋問を受ける。政府はもうドラゴンの正体にアタリをつけていて、恫喝まがいの詰問をされた。結局何も吐かないまま解放されたけど、私はずっと泣いていた。泣いたまま、友人の隣で眠りについた。
次の日、友人はドラゴンになっていた。問いかけるような眼で待っていた。大丈夫、と私は言う。あなたが世界を壊してくれる、その選択肢があるだけで十分だよ。
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